【SPANK PAGE】
取材:石田博嗣
SPANK PAGEにとってフックになる曲
梅雨の季節にぴったりの曲ですね。ギターが重なり合って、湿り気のある音空間を作っているし。
結成当時って僕らは6人編成で、僕も合わせてギターが3本あって、サウンドの厚みっていうか、音の壁みたいなものを売りにしていた…っていうか、自然と周りからそう言われていたんですね。そう言われるきっかけになったのが、この曲の前身的な曲なんですよ。4人になってからもライヴでよくやっていたんですけど、今回レコーディングするということでアレンジをし直して、歌詞も書き直したんで、より曲を作るきっかけになった気持ちやエピソードと結び付けた感じになりました。昔はもう少し抽象的で、サウンドを重視してたんだけど、4人編成になってからは歌に対する比重が変わってきたんで。
歌詞を書き直したのは歌を生かすためですか? 抽象的だったものを明確にしたというか。
イメージを絞った感じですね。雨を通じて、自分は何を言いたかったのかって。だから、具体的になりました。曲の基になったエピソードっていうのは、14歳か15歳ぐらいの学生の頃に…今思うと大したことではないんですけど、当時の自分にとっては重大なことだった、進路であったり、恋愛であったり、勉強のことだったり、そういう憂鬱なことが、雨に打たれてすーっと浄化されたことがあったんですね。まあ、単純に傘を忘れたってことなんですけど(笑)。この曲は、その時の経験を引っ張って曲にした感じなんですよ。
だから、雨をモチーフにしているけど、サウンドは陰鬱な感じではなくて、スケール感というか、広がりがあるのですね。
そうですね。バーって降った後にさっと晴れるみたいな、そこまで突き抜けてもいいんじゃないかっていう感覚で、サウンドの構成とかも考えました。
水彩画のように同系色の色が重なり合って、雨を描いている印象があったのですが、そんな色合いを出す感じでサウンドを構築していったのですか?
絵を描くことに近いかもしれないですね。塗っていくっていう。色合いはメンバー全員の中で統一されていました。最初は濃い青色なんだけど、歌になると水色になって…最初からバーンって青色が一本あるっていうのが昔だったんですけど、今は4人っていうことで音の数に限りはあるんですけど、最初は青色で、それが水色になって、次第に緑になって、また青になるっていう。だから、何回も何回も音を重ねて、やっと色を見出したって感じじゃなくて、そういうものが最初から見えてました。ライヴでやり慣れているっていうことも大きいんでしょうね。
仲手川くんのヴォーカルに関しても、気持ち良さそうに歌ってるように感じたのですが。
もともとは歌いにくくて、苦手な曲だったんですよ。好き嫌いは別としてね。ライヴでも憂鬱になっちゃうぐらい難しい曲だったんですけど、歌詞に具体性が出てからは歌い易くなって…もちろん、難しい歌なんですけど、それよりも気持ち良さのほうが勝ってきてますね。だから、レコーディングでも気持ち良く歌えたのかもしれない。
では、どんなものに仕上がった実感がありますか?
SPANK PAGEの代表的なサウンド、歌、音色っていうのが全一致であるので、かなりフックになる曲ですね。それが早い段階で出せるってことは大きな意味があるなって。あと、納得のいく音で録れたってのもうれしいですね。