取材:道明利友
自分たちの考えていることをそのまま音
楽に落とし込めた
久々のアルバムということで、本人的には本作『The Sound of Music』にはどんな印象がありますか?
今回の曲は、爆音だったり、ギターのリフもわりとヘビーだったり、歌ってる内容も濃かったりするものが多くて…曲調としてヘビーや濃いっていう単純な話ではなく、今まで“自分たちは第三者からどう見られたいか?”とかで使っていた余分なエネルギーを全部取っ払って、自分たちの考えていることをそのまま音楽に落とし込めたんですね。要は、不純物を取り除いたら、出てくるものがすごくストレートになったので、見せかけではない中身がちゃんと濃くなったと言いますか。
なるほど。不純物が取り除かれたことで、FoZZtoneが持っているものを高純度で封じ込められたと。
そうですね。でも、自分たちが特に好きだった60~70年代ぐらいのロックンロールって、すべからくみんな濃かった気がするんですよ。ウザいぐらい(笑)。それこそ、俺はビートルズが大好きなんですけど、あの人たちはメンバー間の不和までも曲にしちゃったりするじゃないですか。“勘弁してくれよ、そんな内輪情報まで知りたくねぇよ”みたいな(笑)。逆に、これだけ自分たちをさらけ出してるんだから、この人たちの曲には嘘がないんだなと思うんです。商業的に、稼ぐための耳触りが良い曲を作るんじゃなくて、音楽に本気で向き合わなくてはいけないみたいな使命感を持っていたからこそ、エゴ満載な濃いものになったんじゃないかなと。端から見るとエゴに見えても、自分の考えていることをストレートに表現しなければいけないんだっていうことを、なんか今回は改めて意識させられたましたね。
古き良きロックが好きなんだろうなっていうのは、音からすごく伝わりました。竹尾くんのギターのブルージーさとかは特に(笑)。そのルーツを独自のやり方で消化して、あくまで現代の音楽に仕上げているのが面白いですよね。
ありがとうございます。流行に乗らないと危うい感じが、今って時代的にあるような気が個人的にはしていて。例えば、ちょっと前にダンスビートが流行り出した時に、みんな一斉に取り入れたりしたじゃないですか。FoZZtoneも結局やってはみたんですけど、そこに“己”はなかったというか、自分たちの最大の個性はなかったって気はしていて。ダンスビート、テクノビート、メタルっぽいものだったり、他にも流行りはいろいろあると思うんですけど、そういう流れと関係ないところに常に主軸はあるような気がします。そういうことプラス、俺らが好きなクラシックロックにあったような、“このリズム、合ってねぇけどなんか気持ちいいかも”っていうようなところが、実は今の俺らも得意だったり。音楽って、ただ上手ければいいのか、速ければいいのか、激しければいいのかとか、そういうことで考えていくと、俺らは違うんじゃないかなって。それよりもっと根本的な部分に、焦点を絞ってやってる気がするんですよ。仮に演奏が下手でも、魂がこもってるからカッコ良いって感じられるような、根本的な “骨”の部分が大事なんですよ。
バンドサウンドっていう“骨”の部分をいかに研ぎ澄ませるか、みたいなところに焦点を絞ってね。
そうですね。いかに音自体が、フレーズ自体がカッコ良いか、歌の内容をしっかり伝えようとしているか…そういう根本的なところなんだろうなと思うので、ウチらは。だから、分かりやすい、とっつきやすいフレーズには必然的にならないんですけど(笑)
それは、同バンドの大きな武器のひとつだと思いますよ。細かいところだと、ラストナンバーの「シンガロン」は歌詞の中にある通り、“sing along”ってタイトルにはしない、ちょっとしたヒネくれがFoZZtoneらしいなと(笑)。
世の中のルールでいくと、“sing along”って英語表記が一番伝わりやすいんでしょうけど、英語圏の人は、きっと“シンガロング”とは発音しないだろうなと思ったんですよね。発音的には“シンガロン!”だろ、って。俺の中には、その方がスッと入ってくるんです(笑)。でも、そういうようなことって多いんじゃないですか? 今の若い子たちは特に、俺らよりもいっぱい。世の中のルールと、自分の中でしっくりくるものとの間ですごく揺れ動いてて、世間とのつじつまを合わせることにみんな苦しんでいるというか。その苦しさは、人生ってものの中では大なり小なりずっと続いていって、だんだん空気の読める大人になっていくと思うんですけど(笑)。その中でも、“自分はこうなんだ!”っていうルールを探そうとするのはとても素晴らしいことなんだよ、みたいなことを言えたらいいですね。
そのメッセージは、“自分たちの考えていることをそのまま落とし込む”っていうさっきの話につながりますね。
確かに。それは、俺たちなりの嘘のないリアルかなとは思うので。まぁでも、本当に今まで紆余曲折を経てきたFoZZtoneなので、そういうものを探すのは、はっきり言って超しんどいよっていうことだけは忘れずに言っておきたいですね。ただ、今はそういう前向きなメッセージを、自分よりも年下の人へ向けてもちゃんと伝えなきゃいけないんじゃないかなとも思ってます。
01年、ジェフ・ベックやジミー・ペイジ、スラッシュなどのギターヒーローに憧れた竹尾典明(g&cho)がバンドを結成後、ビートルズやサイモン&ガーファンクルに幼少の頃より親しんだ渡會将士(vo&g)が加入。02年、オールディーズやUKロックなど幅広く聴き漁った越川慎介(dr)の加入により浸透性の高いポップ・バンドへと変貌していき、バンド名をFoZZtoneと命名。03年、邦楽ロックをルーツとし、レッド・ホット・チリペッパーズ、ベン・フォールズ・ファイヴなどを好む菅野信昭(b&cho)が加入し、さらにメロディック且つ力強いサウンドを得て現在のメンバーが集結。
インディーズ時代に発売した3枚のミニ・アルバム『bort4』(04年11月)、『sundaydriver』(05年10月)、『VERTIGO』(06年7月)がいずれも好セールスを記録し、07年5月に、<東芝EMI>(現:EMI MUSIC JAPAN)よりミニ・アルバム『景色の都市』でメジャー・デビュー。年末には『COUNTDOWN JAPAN07/08』に出演し、08年1月に1stフル・アルバム『カントリークラブ』をリリース。同年7月には間髪入れず2ndミニ・アルバム『ワインドアップ』を発売。夏の野外ロック・フェスで最大の動員を誇る『ROCK IN JAPAN FES.2008』に出演し、ファンを着実に増やしていく。
そして09年7月、プロデューサーに亀田誠治を迎えた楽曲と“バンドのルーツとアイデンティティを掘り下げた”というセルフ・プロデュース曲で構成された2ndフル・アルバム『The Sound of Music』を発表。パワフルなリズム、ワイルドでありながらどこか叙情的な影を感じさせるヴォーカル、そしてエキセントリックで色彩感豊かなギターは、互いに複雑に絡まりあい、一筋縄ではいかない彼らならではのサウンドを創り上げている。FoZZtone Official Website
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