取材:ジャガー

伝えられない…でも、やっぱり伝えたい

先日行なわれたShibuya O-WESTでのワンマンライヴも大盛況で終わり、エンドロールとして「合鍵」のPVが上映されましたが、歌詞自体がすごくストーリー性を重視したものだったこともあり、楽曲と映像が上手くリンクされていたように思います。

竹森
そうですね。最初から映像を思い浮かべて楽曲を作ったので、PV監督とも実はそんなに打ち合わせをしてなくて。“この曲から感じるものを作ってください”と投げたら、男女の切ない物語に仕上がりました。

合鍵を返すことでふたりの関係が終わってしまう、寂しさともどかしい気持ちが見事に描かれていますね。

竹森
付き合っていた人に鍵を返してもらわなきゃいけない知人がいたり、実は…僕の実体験でもあって。その時は、僕が鍵を返しに行った側なんですけど、そこにまつわるものがぼんやりと形になりそうだなって思い、“合鍵”をテーマにしました。次にぼんやりとした“合鍵”というテーマを、しっかり理解して掘り下げていくんですけど、それを明確にしていく作業が一番大変でしたね。例えば、“短い髪でよそよそしい”ってフレーズは、ちょっと前までは当たり前のように彼女のことを知って、自分も全てを出せていたのに、これから先は知らないことの方が多くなっていくことへの戸惑いだったり。もしかしたらもう会えないかもしれない、伝えたい気持ちがあっても伝えられないんだよなって…合鍵から広がった物語がたくさんあって。そのまま全部を曲にしてしまうと、30分~40分ぐらいの長編になってしまうから、どこに的を絞るかってことを考えた時に、“伝えたい想いがあるんだけど、伝えられない…でも、やっぱり伝えたい”っていう心の葛藤をメインに持ってこようと決めてから噛み合いましたね。

“合鍵”という言葉だけだったら、幸せを想像することもできますものね。

竹森
それは人それぞれ自由に感じることですからね。鍵自体は別に大したことのない、数グラムのものですけど、その鍵がつないでいた思い出だったりが大切なんですよ。本当にもう会わないって決めたんだったら、ポストに入れとくか、郵送すればいいし。でも、この曲では“返すんだ”って、しっかり別れを決意した女の子の気持ちや、それを突きつけられた時に“駅まで送りたい”って言葉になってしまったズルい男の気持ちだったりをちゃんと書きたかったんです。

バックのサウンドも深みがあって、歌声を押し出していますね。

渡辺
1曲の中で物語があるじゃないですか。それを聴いた時の現実味というか…聴いた人のそれぞれの心情に近づけたいっていうのがサウンド面ではありました。その場の緊張感だったりを伝えるために手段は選ばず、今回はストリングスであり、ピアノを使用したんですよ。より深く感じてもらうには必要な音だったので、PVや曲のアレンジの時は、今までとは違いライヴ感を無視したものになりましたけど、逆に振り切ってできたのが良かったです。作品とライヴの違いを楽しめるだろうし、ライヴだったらマニアックな部分ももっと分かってもらえるんじゃないかなって。
竹森
バンドサウンドにするのか、逆にピアノやストリングスで物語を作っていくのか、いろいろ試してみて、それぞれの楽器の意味や役割をすごく感じました。イントロ部分のピアノは、部屋に残ったふたりの生活臭を出していたり、全面にギターが出てくる楽曲ではないんですけど、コードの響きがふたりの切れそうで切れない糸を演出してるんです。

2曲目「浅い傷」の主人公も、もどかしい気持ちを抱いてますが。

竹森
これは路上でデモを作って、そこからバンドでアレンジを広げていったんですけど、男の情けなさが出てますね。恋愛に対して後ろ向きだから、気持ちを告げられない弱さに気付いて、走り出したいっていう曲です。デモの段階では、走り出せないまま終わってしまう曲だったんですけど、やっぱり途中から走り出したいよねって。“走んないとやりたくない!”ってなってしまい(笑)。
渡辺
音作りでもプロデューサーと話をした際に、“ボレロのマーチングの音が合いそうな気がするね”ってことになって、ドラムのスネアのボレロのリズムを取り入れてみたりね。ギターもこんなにダビングしたことなかったんですけど、丁度いい温度感に仕上がりました。

主人公の胸の奥でつかえている、何かモヤッとしたものも感じました。

渡辺
音楽で何かを伝える時って、そこに強いメッセージや決定的な思いがあると思うんですけど、“なんか違うな”って歌詞みたく、微妙な心理面を歌にするのも面白いなって。
竹森
感情の矛盾なんですよね。本当に好きで会いたいんだったら、何も悩まずに走り出してると思うんですよ。何もかも捨てて走ればいいんだけど、その一歩が踏み出せない…でも、このまま終わらせたくないよなって自分の中で整理していく感じ。
渡辺
傷付きたくないって今時の恋愛感もあるけど、“どうせ俺なんか…”って負の部分も滲み出てるのがカラーボトルらしいなって(笑)。

曲を出す度に、世界観に浸りやすくなっていますね。

渡辺
バンドが今とても潤っていて、いい時期なんです。仙台から上京したのが自分たちには大きくて。普段の生活で得る刺激が大切だと思ってるんですけど、メンバー4人が新たな場所で生活をしているから、発見も楽しみも4倍なんですよ。これからもっと楽曲の幅も広がるだろうし、上京前に抱いてた不安が嘘みたいですね(笑)。
カラーボトル プロフィール

仙台出身の4人組ロック・バンド。メンバーは竹森マサユキ(vo、g)、渡辺アキラ(g)、穐元タイチ(b)、大川“Z”純司(dr)の4人。
ヴォーカルの竹森を中心として、04年にバンド結成。同年、新星堂オーディション『CHANCE!!』04年大会に東北・北海道代表として出場、準グランプリ/ベストボーカリスト賞を獲得。05年には1stミニ・アルバム『感情サミット』をインディーズ・リリース。さらに翌06年には2ndミニ・アルバム『to be or not to be』を発表し、インディーズ・シーンでめきめきと頭角を表していく。
07年、メジャー・デビュー作となる3rdミニ・アルバム『彩色メモリー』を<ドリーミュージック>よりリリース。インディーズ時代の名曲「グッバイ・ボーイ」のライヴ・ヴァージョンを含むこの作品によって、メジャー・シーンにもその存在感をアピールすることになる。
「老若男女幅広く、響く!伝える!届く!『お茶の間ロック』サウンド」が合言葉の彼ら。そのシンプルかつストレートなロック・サウンドは仙台から日本国内へと支持層を拡げている。カラーボトル Website
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OKMusic編集部

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