取材:石田博嗣

“曲の世界を伝える”ということができ

「白い月」は7月22日の皆既日食の日にリリースされるわけですが、それを想定して作った曲なのですか?

この日に出すってことは考えてなかったんですけど、7月22日って奄美にとって大切な日なので、その日に出す曲ってなると“月”をテーマにしたものがいいなってのは思ってました。月と太陽が重なって起きる現象の日に、奄美から上京してきて、今年デビューした私が月の曲を出せるっていう意味では、すごく運命を感じますね。私は“奄美の島唄はこういうものです”って広めたくて歌を始めたので。

スケール感のある曲ですが、最初に聴いた時の印象は?

夢を追いかけてきた結果、離れてしまった人がいて、夜にふと月を眺めた時に、そんな離れてしまった人も同じ月を見ているかなって、なぜか涙がこぼれたっていう内容の歌詞なんですけど、すっと自分の中に入ってきたんですよ。私も東京に来てから月をよく見るようになったし…ちょうどこの歌詞をもらった時というのが、ホームシックになりかけていた時だったんです。家族や友達とか、私も離れてしまった人がいっぱいいるんで。だから、すごく自分と重なっているなって。

となると、いつもは歌詞の主人公になりきって歌ってましたけど、この曲では素の自分で歌えたのでは? 歌の感じが今までとは違ってましたよ。

デビューシングルや2ndシングルはメッセージ性が強かったんですけど、この曲は月を見て泣いている様子しか描かれてないんですね。でも、この歌詞の主人公のように、月を見たことによって言葉にならない想いが込み上げてきて涙が出るっていう、その“言葉にならない想い”っていうのは誰にでもあると思うんです。私も東京に来たばかりの時は、毎日が楽しかったんですけど、夏休みに母親が出て来て、その母親が鹿児島に帰ってしまった時に、何とも言えない想いがうわ~と込み上げてきたんです。そういう“言葉にならない想い”を歌と声で表現することにチャレンジしました。

そのせいか、最初は物語の語り部のような感じだった歌が、後半からすごく感情的になっていきますよね。

間奏から後半にかけて感情が出てくるんですけど、“言葉にならない想い”をどう表現しようかと思った時に、自分の故郷の言葉で表現したいと思って、“かなさぬなだやとむやならぬ”っていうコーラスを入れたんです。奄美では愛おしい人のことを“かな(加那)”って言って、恋人だけじゃなくて、家族や友人とか自分が大切に思う人に対しても使うんですね。“なだ”は“涙”なので、“愛おしい人のことを想って流す涙は止めることができない”っていうのを奄美の言葉で表現したんです。

奄美の言葉だったんですね。何度聴き直しても何を言ってるか分からなかったんですよ(笑)。

ですよね(笑)。自分の故郷の言葉が入った後に想いがあふれ出る、っていう表現をしたかったんです。メロディーも私がレコーディングの時にフェイクで重ねて作ったんですよ。

そういう意味では、本作は曲ごとに歌い分けられているし、3曲目の「潮風と木枯らし」はグイン(奄美地方の独特な歌唱法)を使ってなかったりするし、チャレンジも多かったのでは?

今回は特にそうですね。3曲とも同じような内容のことを歌っているんですけど、それぞれにシチュエーションがあるし、聴いた感じでも全然違うように歌えたので、“曲の世界を伝える”ということができたと思います。
城南海 プロフィール

キズキミナミ:平成元年、鹿児島県奄美大島生まれ。奄美民謡“シマ唄”をルーツに持ち、2009年1月にシングル「アイツムギ」でデビュー。2014年7月にテレビ東京『THE カラオケ★バトル』へ初出演以来毎回高得点を叩き出し、番組初の10冠を達成。城南海 オフィシャルサイト

OKMusic編集部

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