【Metis】
取材:石田博嗣
自分の世界が自分の力で切り開けた
熱くて、躍動感のあるアルバムに仕上がりましたね。
シングルはしっとり系の曲が多かった…そういった楽曲も得意なんですけど、今回のアルバムはみんなが夏に楽しめるものにしたいと思っていたので、アッパーチューンが揃いましたね。『母賛歌』からファンになった人が多いので、バラードのイメージが強いかもしれないけど、昔から私はアッパーチューンかすごく得意だし、夏にみんなとフェスやライヴで盛り上がるのがMetisの特徴でもあるので、“こんなこともできるんだ!”って思ってもらえたらうれしいですね。あと、今回はいろんなジャンルに挑戦したいと思ってて、自分が良いと思うサウンドにもチャレンジしました。
確かに。「Mr.Big」のようなソウルフルな曲もあれば、エレクトロやドラムンベース、スカにも挑戦されていて、ベーシックにレゲエはあるけど、それだけではないという感じでした。
今まで表現方法が分からなかっただけで、実はドラムンベースやエレクトロって昔から好きで聴いていたんですよ。だから、以前からいろんなジャンルの音楽を自分の楽曲を通して伝えたいと思っていたのが、やっと今回できた気がします。
いろいろなジャンルに挑戦されてますが、マニアックなものにはならずに、ポップスとして昇華されてますよね。
私はすごくコアで、アンダーグラウンドなものが大好きなんですね。自分の楽曲もそういうふうにしたいと思うんですけど、今のファンの人たちはどう思うんだろうって。“みんなにどれだけ元気を与えられるか? どれだけメッセージを届けられるか?”が第一優先だし、みんなが喜んでくれる、その“喜び”が私の生きる糧なので、ちょっと変わってるけど(笑)、キャッチーであるとか、ポップというのは常に意識してますね。
でも、ドラムンベースはひと昔前に流行したものだけに、それを今取り入れることに対して抵抗はなかったのですか?
ブームを終わらせているのは日本だけなんですよ。UKだとドラムンベースがどんどん進化し続けているんですね。だから、それを聴いてもらえば、価値観も変わるんじゃないかなって。すごくキャッチーでポップなものもあるし、ラガなDJが乗ったものもあるから、そういうものが日本のみんなの耳に届けられるように、私たちが頑張らないといけないと思ってます。
また、本作には“新たな世界への前進”というテーマもあったそうですね。
私の母は闘病生活を送っていて、ずっとふたりで暮らしてきたんですけど、去年亡くなって…自分では言いたくないんですけど、まだ母が亡くなってから間がないので、今年の初め頃とか、絶望感をずっと感じていたんですよ。でも、全国のみんなが支えてくれたし、今ここで気合いを入れないと先には絶対に進めないと思ったんですね。だから、このアルバムを通して、自分とみんなの背中が押せたらいいなって思ってました。
“前進”というテーマがありつつも、やはり“感謝”や“人のつながり”が描かれているのも印象的でした。
そうですね。今までのアルバムの中で一番、みんなに対する感謝のメッセージや私の想いが詰め込まれているので、温かくて、勇気の出るアルバムになったと思います。もちろん、私自身も“あ…、ダメだ…”と思った時に、このアルバムを聴いたら自分を取り戻せそうなものに仕上りましたね。それだけ力を込めて制作に取り組めたし、自分の世界が自分の力で切り開けたので、このアルバムが作れたことに感謝してます。
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