2009年に「リフレイン ~青春馬鹿野郎~」「東京」とシングルを連発した175Rが、2010年一発目にアルバム『JAPON』を完成させた。原点回帰的な部分と最新の175Rサウンドが融合した、最高傑作と言える作品だ。
取材:フジジュン
シングルに続き、待望のアルバム『JAPON』が完成し、本格的な再始動だなと。
SHOGO
完成した今は“やっと終わった!”というのが正直な感想ですけど、“まだ行ける!”って気持ちもあるのがいつもと違う点で。今までやっていないことに挑戦したいという気持ちが常にあって、今作はそういった部分もすごくバランス良くできたと思うし、良いところを凝縮できたと思う。今回は、僕ら的に4thアルバム『Bremen』から3年振りのアルバムって感覚で、「夢で逢えたなら…」と「スタートライン」は2007年の曲だし、何かひとつコンセプトを付けないと時間軸がおかしくなるからまとまらないなっていうのはありましたね。
アルバムのコンセプトを具体的にいうと?
SHOGO
09年前半に曲ができない時期があったんですけど、「東京」って曲ができてからバーッとあふれるように曲が出てきたから、“「東京」が中心なら、JAPONでしょう!”と。
「東京」もそうですが、今作は原点回帰的な部分に、今やりたいことがしっかり混ざっていて、今までのアルバムの中で一番175Rらしい、人間的な部分が出た作品だと思いました。
KAZYA
いろんなタイプの曲があるんですけど、どれも人間臭いし、4人で作り上げた感がすごくあるので、そういう感想が聞けるのはうれしいですね。
過去作品はどこか背伸びしていたり、無理している部分があったりと、何かが突出していた気がするのですが、今作は本当に現在の175Rの等身大が見える作品でした。
SHOGO
「東京」を生むまでに悩んでた時、“等身大のメッセージ”というのが背中を押してくれた部分があって。自分らしさが出れば、自然と175Rらしさが出るんじゃないかと思えたんです。『JAPON』には、「とわに とわに」とか他のメンバーが演奏してない曲でも175Rらしさが出せていたり。12年目だからこその自信もあったので、“いい曲だからもっとシンプルにしても成立するんじゃないか?”って考え方もできましたね。いい意味で肩の力を抜いて作れたんじゃないかな。
SHOGOくんが今、思っていることや感じていることって、きっと4人も感じていることで。そこでまた気持ちもひとつになって作れた部分もあったんじゃないかなと。
KAZYA
確かにそういうところもあるし、一曲一曲の色や個性がちゃんと掴めて、曲が生きている感じはありますね。
ISAKICK
録り始めてからが結構バタバタだったけど、そこまでのプリプロでしっかり見えていたから、曲ごとにちゃんとスイッチが入れられました。歌詞が乗ってもっと良くなって、手応えもあったんで楽しかったですね。それと、個人というよりは全体を見ながら作業ができました。
YOSHIAKI
それぞれのパートに全員が踏み込んで客観的な意見を出し合ったり、削ぎ落としていく作業も多くて。スピード感や気持ち良さを重視してできたのも良かったですね。あっと言う間ではなかったんですけど、終わってみるとあっと言う間だったかなって。ずっと休んでたから、本調子になった頃に終わっちゃったみたいな(笑)。
調子を取り戻すまでに時間かかりましたね(笑)。ここ最近の楽曲、アルバム制作では、改めて作ることの面白みにも気付けた部分もあったのではないですか?
SHOGO
アルバムは特にそうですね、遊べる部分も多いし。“JAPON”という名の和洋折衷あるスペシャル幕の内というか、“JAPAN”を名乗るのは長渕 剛さんの名盤もあるし、俺らには無理だから“JAPON”くらいがちょうどいいなって。流行りに乗れてないけど、“乗ってないのではない、乗れていないのだ。これでいいのだ”というCMでの赤塚不二夫先生のメッセージにも心打たれて、こういうタイトルにしました。
意外なところから影響受けてましたね(笑)。でも、確かに“これでいいのだ”的な175Rの覚悟も伝わってきますし、近年は日本の文化自体に世界のいいとこ取りみたいな面もありますしね。
SHOGO
日本で生まれて活動しているんだから、いいタイトルだと思うし、自分らなりのロックが出せたと思いますね。もう、恥ずかしさも何もないですから。また来ますよ、僕らの時代が! 夜明けぜよ、日本のロックの夜明けぜよ!!
ダハハ、頼もしい! そういう自信や意識の変化からか、SHOGOくんの歌詞の書き方も変わってきましたよね。今、見えている現実を受け止めた上で、その先にある道筋を描くような。
SHOGO
「anytime」とか、まさにそういうテーマで書きましたね。理想のかたちはあるけど、そのかたちが違っても自分の中には満ちあふれているものがあるってメッセージだったり。
だからこそ、「new world」のサビでは“僕の世界に君の未来を全て託してくれないか”と断言できるのですね。
SHOGO
いつの時代も男らしいね、俺は(笑)。今も満足していないし、苦悩もあるけど、それも含めて充実してると思うんです。あと、今回は裏テーマとして“運命”っていうのがあって。困難な出来事や出会いや別れも、偶然ではなく運命だって気持ちが最近強くあって。“運命論”って意味の「fatalism」って曲もあるんですけど、いろんな歌詞の書き方やメロディーにも影響ありましたね。
かと思えば、「愛情メタボ」や「夢見るロックスター」みたいな遊びの多い曲が同時に生まれているのも面白かったです。
KAZYA
どの曲も肩肘張ってないというか。「夢見るロックスター」とかもいろいろやりながら、いい部分だけを詰め込んだ中の一曲だったんですけど、やってて楽しかったですよね。
ISAKICK
原型からかなり変わってるし、時間もかけましたけどね。8小節に4時間かけたり、アレンジの部分ではどれがいいのか分からなくなるまで煮詰めた曲も多かった。
SHOGO
で、流れを意識した部分で1、2曲目を作ったり、最後に置くことを考えて「anytime」を作ったりして。結果、一気に聴けるアルバムになったのも良かったですよね。
リリース後のライヴハウスツアーも楽しみです!
KAZYA
今回は小さいライヴハウスを中心に回るんですけど、今はそういうライヴを求めてて。
SHOGO
激しい部分も聴かせる部分もあると思うけど、好き放題やろうと思ってるので、楽しみにしててください!
イナゴライダー:1998年、SHOGO(Vo)のわがままにより結成された4人組ロックバンド。北九州を中心にライヴ活動を開始、03年シングル「ハッピーライフ」でメジャーデビューを果たした。結成10周年時には怒濤のリリースとツアーを敢行し、09年には日比谷野外音楽堂にて5時間50曲というライヴを見事成功させる。そして、10年3月より『JAPON』を引っ提げてのライヴハウスツアーが決定!オフィシャルHP