原点に立ち返ったようなバンドサウンドでのセルフカバー&新曲のニューアルバム。そんな新作に触れつつ、彼女のヴォーカリストとしてのスタンスにも触れた。
取材:石田博嗣

愚問ですが、田村さんにとって歌とは何ですか? バンドの活動休止、レーベルの移籍を繰り返しながらも、コンスタントに作品を出し続けているので、どんな想いで歌われているのかなと思って…。

言われてみれば、辞めてもいいよね(笑)。辞めようと思ったことは何度もあったんだけど、ほんとに辞めたいと思ったことが1回だけあるんですよ。バンドが壊れた時に、“自分が壊した”という気持ちがすごくあったんですね。で、ちょっと逃げたくなってアメリカに行ったんですよ。そしたら湾岸戦争が始まって、MTVがジョン・レノンの曲一色になったんです。これってすごいことだと思って、“音楽ってそれでいいんだ”と思ったんですね。音楽って身近なものだし、メッセージ性があるものだし、すごく強いものだって。だから、自分が辞めるとか辞めないって決めるんじゃなくて、辞めないといけない時期は来るんじゃないかって。それで今も歌っているっていうのはあるかも。

スタイルもずっとロックヴォーカリストですよね。

ロックは一番自由な音楽だと解釈して、最初のPEARLを始めたんですよ。ロックを徹底的にやって、どこまでもボーダレスに広がっていこうと思ってたんだけど、徹底的にやっている間に壊れちゃったんだけどね(笑)。でも、そこで核ができたと思ったんで、自分でやればいいんだって。だから、立ち返る場所ではありますね。家があるから旅ができるっていう。

では、シンプルなバンドサウンドによる今回のアルバムは家の中で作ったような仕上がりですね。

そうですね。レコード会社さんから“お家に帰りませんか?”みたいな話が来たんで(笑)

最初からセルフカバー集を出そうと?

“お家に帰りなさい”って話だったんでね。プロデューサーの明石昌夫さんもライヴでベースを弾いてもらったりしてたから、“録るなら、こう録りたい”っていうのが明確にあったんですよ。だから、昔の自分と今の自分をどう出していくかって話し合いながら作っていった感じですね。

原曲を知っているだけに成熟した感じがしました。ドラムはタイトだし、ギターはドライヴしているし、サウンドがズシッとしていて、逆にヴォーカルは勢いだけでは歌えないというか。

そう! “どう抜くか?”って感じだった。だから、昔とは全然違いますね。当時は勢いで一気にやるような気持ちでないと歌えない…それこそスポーツのような歌い方をしてたと思う(笑)

新曲の3曲は、“大人のための新しいレーベル”からのリリースということですが、大人たちへのメッセージになってますね。

“田村直美”を経て、ようやく始まりが自分じゃなくてもいいってところに来れたので、そういうテーマのものを歌ってみたというか。サウンド的にもちょっとオシャレさんになってるしね(笑)。でも、これらを入れることで、今の私が歌う昔の曲っていうセルフカバーの意味合いが持てたかなって。これが昔の曲だけの作品だと“何のためにやってるのかな?”って思う。

ロック少年少女だった大人たちにエールを送っているアルバムになってますよ。

だったらうれしいですね。このアルバムを作った甲斐がある。私も私の位置で頑張ってるし。ここに家があるから、また帰ってきてもいいし、出て行ってもいいって思えたというか。そういう意味でも、PEARLっていうバンドを作っておいて良かったなって思いましたね。
田村直美 プロフィール

メンバーの脱退が相次ぎ、結局PEARLというバンド名が彼女のソロ・プロジェクト名になったのは89年のことだった。その後もコンスタントに作品をリリースしていくが、94年の移籍を機にPEARLではなく本名の田村直美で活動を開始することに。彼女が大ブレイクを果たしたのはこの年だった。まずはシングル「永遠の一秒」が某宝石店のコマーシャル・ソングに起用され、大ヒット。続いてアニメの主題歌になった「ゆずれない願い」がロング・セラーで100万枚を超えるセールスを記録。95年には、紅白歌合戦にも出場した。
こうしてソロ・アーティスト田村直美としての名前を世間に知らしめた彼女が次に取り組んだのは、新生PEARLの再始動だった。現在は洋邦のベテラン勢が脇を固めるこのバンドでダイナミックでブルージーなロックを演る傍ら、ソロではパワー感のあるポップスを中心にそのタフで伸びやかな歌声を聴かせてくれる。オフィシャルHP

OKMusic編集部

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