【川畑アキラ】時間をかけて熟成され
た想い

息子から父親へ。普段は面と向かって感謝の気持ちを言うこともないが、本当は互いに相手を思いやれる大切な存在。そんな親子の関係性を川畑アキラ自身の経験から歌った「親父殿よ~ウヤウムイノウタ~」は、聴く者の心に寄り添う愛に満ちた1曲だ。
取材:ジャガー

「親父殿よ~ウヤウムイノウタ~」は、2007年に発売された『オヤジパパトーサン』というコンピレーションアルバムに収録されていましたよね。

コンピレーションアルバムのほうはバンド的なアプローチが強いんですけど、今作は自分も沖縄で暮らすようになって、ルーツである景色や三線などと接することで、よりアコースティックになってテンポも落ち着いたものになりましたね。歌詞も若干変え、よりパワーアップしたかたちになっています。日本全体がそうだと思うんですけど、特に自分が生まれた与論島という場所は家族を大切にする気持ちが強いところなので、家族に対する想いをバンド時代から歌ってはいたんですよ。ただ、父親をテーマにすることが明確になったのは、『オヤジパパトーサン』に参加するって決まってからで。自分の父親だけでなく、父親と同じ世代の頑張っている方々のことを考えましたね。

曲を作られた当時と現在とで、父親に対する心境の変化はありましたか?

いや、想いとしては何も変わってないですね。作った当時もあっと言う間に完成したんですけど、書くというよりも書かせてくれた…やっぱり父親の存在があって、この曲はあるので。父親、そして家族に対する想いが書かせてくれた曲。バンド時代を含めてたくさん曲を書いてきたわけですけど、そういうふうに巡り合わせで書ける曲はなかなかないですね。毎月来る波ではないので、すごく自分としても手応えがありますし。完成した時は男泣きしました。

三線の入れどころも曲を引き締めてくれますよね。

アコースティックギターをつま弾きながらの曲作りが基本にあったので、そこまで沖縄を意識している感じの楽曲ではないと思います。そこはさりげなく…といっても、思いっきり出てますね(笑)。それが三線という楽器の個性の強いところで、使いどころが難しいと言えば難しいんですけど、そこは上手くブレンドして。やっぱり真ん中に歌があって、楽器が周りで支えるっていう自分の声を活かすということにブレがなかったので、自然な流れでサウンド、アレンジと肉付けされていきました。

生まれ育った環境は違いますが、川畑さんの描く情景がすごく懐かしく感じられました。父親に対する素直な気持ち、付かず離れずのいい距離感も丁寧に表現されているなと。

歌い方も含め、そこはちゃんと。聴いてて胸を打たれる、熱くなるようなものを常に思ってはいるので。父親もそうでしょうけど、やっぱり照れくさい感情を相手に伝えるまでに、お互いの間合いを取るだろうし。そこも自分が持っている自然な気持ちがかたちになりましたね。それこそインストも入ってますので、聴いてる人が自由に歌詞を作っていただいて(笑)、それぞれのお父さんに歌ってもらうのも面白いんじゃないかなって。

では、この曲を歌うにあたって一番大事にしたのはどういう部分ですか?

始めは“親父殿よ、みなさんに”っていうのを書きたかったんですけど、やっぱり身近な存在である自分自身の父親のことを歌うのが、結局みんなに広がっていくのかなって。頑張っているのに、なかなか光の当たらないこともあるでしょうけど、誰が偉いとか関係ない。“勝ったか負けたか どうでもいいこと”って歌ってるんですけど、勝ち組、負け組というような価値観はあるかもしれないけど、音楽はやっぱり頑張ってきたことに対して包み込むような存在であってほしいし、少なくとも自分はそういう想いで歌っていきたい。うちの親父はあまり器用な人間ではないので、そこの不器用さも含めて認めてあげたいなって。“まだまだお前にそんなことを言われたくない”と言われるかもしれませんけど。

川畑さんにとっての父親はどういう存在なのでしょうか?

“野球好きの頑固者”って歌詞にもあるんですけど、父親はリトルリーグの監督で、自分はそのチームのいち選手という立場だったので、威厳がありましたね。でも、親父も自分も歳を重ねてきて、やさしい一面も見えてきたりとか。一緒にお酒を飲む機会があって、若い頃はどうだったとか話を聞いて…って、ほぼ歌詞のままなんですけど(笑)。こうやって自分も社会に出て音楽をやってますけど、いろんな荒波に揉まれることもあるので、その度に親父たちの世代、人生の先輩方が苦労してきて作ったものに実感が沸きますよね。そうすると、いつも頑固な親父の性格も愛おしく思えてきたり。それも歳を重ねるごとになんですけど。基本的にいつも自分を応援してくれた親父に対して、20代では感謝していることを素直に出すことができてなかったんで、時間をかけて熟成された想いなのかなって今は思いますね。

今作を聴いてのお父さんの反応は?

照れてますね(笑)。良かったとは言ってくれますし、“俺はここまで立派な人間ではないから、この歌の主人公になれるように頑張るよ”と。

素敵なお父さんじゃないですか!

いや、結構いい加減なところもあるんで(笑)。好き勝手生きてきた父親です。でも、子供のことはいつも気にかけてくれているやさしい父親でもあり。

父と息子の関係がしっかり築けているということは、家族との絆も深いはずですよね。

そうですね。ただ、父と娘になると複雑な部分が出てくるのかなって。実際に弟と妹がいるんですけど、妹がどういうふうに聴くのかってことが内心気になります。

この曲を聴いて、私はものすごく反省しています。いち娘として、父親に心ない行動を多々とってしまったなと。これからは父親を仲間はずれにしません!

そういうやさしい気持ちになれるんだったら、この歌は大成功ですよ。
川畑アキラ プロフィール

カワバタアキラ:ザ・コブラツイスターズのフロントマンとして、1999年にメジャーデビューを果たし、数々の代表曲を残すも08年にバンドは解散。以降、拠点を沖縄に移し、ソロ活動をスタートさせる。バンド時代からその野太い声と説得力のあるライヴパフォーマンスが定評だ。オフィシャルHP

OKMusic編集部

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