【acari】満たされない思いを音楽で
綺麗に表現する
鮮やかな歌詞を柔らかな音色で紡ぐ5人組acariの2ndアルバム『プリズム』が完成。プロデュースを片寄明人(GREAT3)、ミックスを深沼元昭(Mellowhead/PLAGUES)が務めた飛躍作だ。中心人物の三浦コウジ(Vo&Gu)に訊く。
取材:高橋美穂
バンドが始動したきっかけは、三浦さんですか?
はい。もともと京都にいたんですけど、中学校くらいの時に隣にあったレンタル屋に入り浸ってたんですよ。そこのアルバイトの大学生に、いろいろ渡されたんですね。BOOWYとか、レッド・ツェッペリンとか、ギターを弾く人がコピーするような。その流れで、歌も歌わず、曲も作らずに、バンドでギターを弾いてたんですよ。でも、20歳くらいで、自分が歌うことで自分自身を表現したいなって思ったんです。その時にフィッシュマンズを聴いて、すごくリアルに響いてきて、GREAT3とか日本の音楽を聴くようになって。そこから“これは東京で鳴ってる音楽だ”と、実際に住まないと鳴らせないんじゃないかと思って、何のコネもなしに東京に来ちゃったんですよね。それで、ひとりで弾き語りとかでライヴをやってたら、下北沢のmona recordsの店長さんに、自分やったらバンドのほうがええんちゃうかって言ってもらったんですよ。それで、メンバーを探し始めたっていう。
でも、それまでひとりで完璧に作ってたなら、いろんな人の要素が入ると、もどかしさもあったんじゃないですか?
そうですね。でも、前のアルバムは3人で、今回は5人になって、ぶつかり合いも増えたんですけど、今までは自分が思ってるイメージの中で完結してたところを、5人になってからは一旦自分のイメージを共有してもらって、それに対して各メンバーがイメージしたことを、さらに自分に戻して曲にするようにしてるんです。それで、自分だけのイメージよりはカラフルになりましたね。
実際に東京に来て、作る音楽は変わりました?
風景が同じじゃないから、歌詞のニュアンスとかも違う響きになるとは思いましたね。その場でしか書けないってのもあるし、そういうところには敏感でいたいですね。
さっき、最初は歌ってなかったって聞いてびっくりしたんですけど、インタビューしててもいい声ですよね?
あ、ほんとですか。
曲を作る時に声を活かすことって考えますか?
それはあまり考えないですね。声も全て自分ありきじゃないですか。だから、曲作りで大事にしてるのは、自分とどれだけ近いかっていう。例えば自分はぐっとこないけど、受けるんじゃないかって思って作る時点で、それは不純な行為だと思うんですよね。どれだけ自分に近いところで、歌詞やメロディーにできるかってところに命を賭けてるので。
歌詞の儚さとも柔らかい声質がリンクすると思って。
僕は明るい人間ではないんで(苦笑)、常に満たされないけど、それを如何に音楽で綺麗に表現するかってところで、刹那的な歌詞になってるのかな。ただ、例えば『グッドモーニング』は、曲は明るめですけど、歌詞は暗いんですよ。暗いメロディーにすると、自分に忠実ではあるけど、人に聴いてもらうものとして面白くないし、僕自身も面白くないっていう、そういう考えはあるんですよね。
これからの方向性もクリアになってきましたか?
そうですね。1stはわりと部屋の中で鳴ってるようなイメージだったと思うんですよ。あの頃ってライヴの気持ち良さも見い出せてなかったんで。今は5人になってライヴならではの外に向かう感じというか、気持ち良さも見い出せるようになって、若返ったと思います(笑)
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