L→R 近藤 太(Ba)、稲増五生(Gu)、伊藤文暁(Vo)、岡田翔太朗(Dr)、新井弘毅(Gu)

L→R 近藤 太(Ba)、稲増五生(Gu)、伊藤文暁(Vo)、岡田翔太朗(Dr)、新井弘毅(Gu)

【serial TV drama】メジャー第1弾は
名実ともに“マストバイ”!

歌は正統派ながら、演奏にはエモやプログレのヒネリを取り入れたひと筋縄ではいかない楽曲でその存在を広めてきたserial TV dramaが、メジャー移籍第一弾ミニアルバム『マストバイ』を完成させた。キーマンである新井弘毅(Gu)に訊く!
取材:高橋美穂

サーカスでいたい
受身のライヴは好きじゃない

“マストバイ”って、パンチありますね (笑)。

メジャー第1弾でユーモアを求めたし、内容的にも損はさせないぞって。あと、これは完全な後付けなんですけど、やっぱCDを買ってねっていうところもありますね。

CDを買わなくなってきている時代背景も関わっていると。メジャーには、ずっと行きたいと思っていたのですか?

もともとは行くものだと思ってましたね。でも、インディーズでやってるうちに徐々に自分たちでもできるっていうか、“俺が何でもやったる”って思うようになって、アンチテーゼがあったんですよね。1stアルバム『シリアルキラー』を出した時にメジャーの話もあったんですけど、“絶対に嫌だ!”って言ってて(笑)。でも、2ndアルバムの『SPACE OPERA』を出した時に“自分はここまではできる”っていうのが見えて、逆に言うと、ここから先は自分ひとりで成長できるものか分からなくてメジャーに飛び込んでみちゃおうかなって(笑)。それが自然だったんですよね、自分のやりたいことをやるためには。わりとみんな重く受け止めるけど、こっち的にはそうでもなくて。

リリースはまだですけど、現時点での居心地はどうですか?

スタジオが良くなったとかあるし(笑)、関わる人も増えて、客観的な意見を聞けるので面白いですけど、根本的には変わらず今まで通りわがまま言ってやってるだけですね。

関わる人が増えるとわがままを貫くのも大変じゃないですか?

でも、契約の段階で“間奏長くても許してね”とか話をしてて(笑)。お互い理解して音楽を作れてるいるので、わがまま言いつつもそれすら楽しんでもらえてる感じはあります。

その状況は、serial TV dramaのような濃いバンドには理想的ですね。

そうですね。そういうことの先にある面白さをお互いが見れてるので。フラストレーションはないし、むしろ悪ノリ具合は増したんじゃないかなと(笑)

大舞台や仕掛けが似合うバンドですから、今後楽しみですね。

契約の段階で、“将来的に火炎放射機を使っていいですか?”って言ってます(笑)。そういう予算や具体的な話もして、エンターテインメントなステージや音楽性に向かうと思う。派手にやったら、無条件に楽しくなるんじゃないかなって。ライヴも視覚的や音楽的にも、よりサーカスに近づけるんじゃないかな。

サーカスは目標なのですか?

サーカスでいたいです。受身であるライヴは好きじゃなくて。言葉を聴いて癒されるとか、逃げ場みたいになってるのがちょっと嫌で、前向きになってほしいし、面白い、楽しいってところから、明日につながるものがその人の中で生まれるといいなと思っていて。そういう意味では、サーカスっていうのが近いかなと。極端に言うと、バラードは嫌いだっていう。でも、バラード自体は僕は好きですし、それをやる瞬間は必ず来ると思うんですけど、それはリスナーが成長しないとできないし、受身で聴かれがちだから嫌なんですよね。癒されるんじゃなく、“その先に自分に返ってくるものがあるんだぞ”って分かってもらえるまではやりたくない。もっと自発的になってほしいですね。

それは世の中を見ていて思うことですか?

うん、時代を見ていて思うことで、“泣き歌”とか言いますけど、泣いてんじゃねぇよって(笑)。シンガーがやるのはいいし、泣き歌が悪いとも思わないんですけど、それは音楽が素敵でもバンドでやることなのかなって。バンドでありながら、シンガーみたいな活動をする人が増えてるじゃないですか。肯定も否定もしないけど、自分の立場ではやりたくない。そういう今の音楽シーンを見て、自分たちにもリスナーにも誠実でいたいから、受身で聴かれるようなものはやりたくないんですよね。

時代の動きはserial TV dramaの音楽を生み出す上で大切ですか?

時代に対するフラストレーションや良い部分から、“こういう曲やりたい”という欲は生まれてきますよね。ダンスミュージックが流行れば、俺らの観点で皮肉ったり、ユーモアでいじってみたくなったり。でも、ロックってそもそもそういうものだと思うんです。それを素直にやってるのが許せないだけで。ただ乗っかってくんじゃなく、皮肉を持って乗らないとロックがおかしくなる気がする。他と違うってところからロックを追求してたはずなのに、今のロックバンドと言ってる人たちが果たしてそれをやってるかっていうと違う気がするんですよ。

フォーマットだけロックバンドということ?

そうそうそうそう。ギターとベースとドラムとヴォーカルというかたちだけを指してロックバンドって言っちゃうとリスナーもそう思ってしまって、分からない人がロッククラシックとかを誤解するのが許せないんですよ。それを思う以上は、ちゃんと自分で体現して知らせていきたいですね。

ならば、メジャーで広く活動するのはぴったりですね。

昔からマニアックなものをポップに聴かせて勘違いさせたいっていうのがあったので、俺らの音楽を聴いて、今までプログレって難しいと思ってたけど、聴きやすいじゃんって入口になるような部分を持たせたいんですよね。

それは本作『マストバイ』にも表れていますね。

あ、ありがとうございます。

『SPACE OPERA』で突き詰めたからこそ、こういう作品が出来上がったっていうのもありますよね。

多分、『シリアルキラー』でメジャーに行くと、歌モノに思われてしまうんじゃないかっていうのがあって、そうなるとバンドの面白さが伝わらないし、それがテーマじゃないので。でも、『SPACE OPERA』を作って、こういう難しいことを自己満で入れたんじゃなくて、楽しくするために入れたんだよって証明できた実感が沸いたので、これは今メジャーに行っても変にコントロールされないんじゃないかってところもありました。

あの壮大で難解なところもある『SPACE OPERA』が、ライヴで若いキッズにも伝わっていた様子は画期的に見えました。

今までは“?”だったものが、こうやって楽しむってことを分かってもらえてる感覚が自分たちにもあって。俺のギターソロにしても、最初は“ん?”って感じだったのが、終わった後に“ウォー!”ってなったり、無条件に楽しんでるというか、音楽ってそういうもんって伝えられてきたっていうのは実感しました。細かいことの善し悪しではなく、何が入ってようが入ってなかろうが、そこに楽しいもんがあったら反応するし、それが勘違いだと思ってるんです。本当はそこにすごいものが入ってても、聴くたびに慣れていっちゃう、そういうのがもっと起こったら、もっと俺が好きな音楽も楽しんでもらえるんじゃないかな。

メジャーで長い間奏を弾くこと
自体から勇気を見出して(笑)

では、メジャー第一弾ということで、どういう作品を作るかはじっくり考えましたか?

そうですね。今までは一枚にドカーンと詰め込んだ感じでしたけど、それってインディーズだからできることというか。そもそも音楽を求めてる人が聴くシーンじゃないですか。だけど、これからは音楽を追求してなくても知るきっかけがあるシーンに行くと思ったので、そうなった時に、詰め込んで“これどうだ!”って出すのは、小学生に大学入試の本を渡すようなものかなって。そこは俺が本当にやりたいテーマを考えると良くないし、ちゃんと一般リスナーを成長させないと、最終的なゴールには行かないなって思ったんで、階段を作ることを意識しました。ちょっとずつ騙し騙しハードルを上げて、気付いたら音楽評論家になってるみたいな(笑)。その入口を作りたかった感じです。

感情的というよりは、計画的?

でも、自分でもバランスがあって、こういうものを予め作るって思って作るものもあるんですけど、メインとなるものがそれだと衝動を殺してしまうことになるので、そうなるとこれまたロックの面白さがなくなってしまう。そこは絶妙なバランスで乗りきろうと。

確かに、前作まではキッズや玄人が面白がれる要素が多かったんですけど、今回は音楽に興味がない人も面白がれる要素がたくさん盛り込まれているなと。例えば「コピペ」とか。

“分かりやすく大胆に”みたいなキャッチーさで。フレーズも難易度が高いものも、一聴して分かるようなものをやりたかったんですよね。それで音楽的欲求を刺激できたら最高だし。

serial TV dramaの武器は伊藤文暁(Vo)くんの声でもあると思うんですけど、メジャーということで、メロディーを生かした方向性は考えました?

はい。メロディーは、まず耳に入って2コーラス目にはもう歌えるんじゃないかなとか。あとは、みんな参加できるような部分を用意したり。でも、一番はライヴが楽しいっていう。俺らが満足できて、それを観たお客さんが満足できることを考えましたね。

前はライヴ感を生かすというよりは、レコーディングで構築していくタイプのバンドのように見えていたんですけれど。

インディーズ時代の良い部分でも悪い部分でもあるんですけど、作り過ぎちゃう。それは、作品としてクオリティーが上がる反面、衝動に欠けるっていうのが自分の中であって。だから、今回は無防備なところを見せたかった。かつ、それをちゃんと構築できたらバンドの良さが伝わるんじゃないかなって。

衝動は歌詞にも出てますね。1曲目の「オオカミ」の“食い破れよ 筋書きも能書きも”とか。

そうですね。一貫して、うちらのバンドのスタンスもそうだし、詞もそうなんですけど、立ち止まって悩んだりして、怯えてるんじゃなく、一歩前に出たほうがいいとはずっと思ってるんで、そういうことが歌詞にも出てる作品にはなってますね。

そういう草食系じゃない思想にも時代感が出てますよね。

この時代にこういうことをやるスタンス自体からも、勇気や希望を見出してほしいですね。メジャーでこの間奏をやることが勇気なんだよって(笑)。そういうところで、俺も私もやってみようって思ってくれたりするとうれしいというか。

提示したい気持ちもありつつ、新井くんやメンバー自身がこういうことが好きっていうところもありますよね。

あぁ、普通だとダメなんですよね(苦笑)。やる意味を見い出せないんですよ。自分の中で満足できないものを世に出すってことになるので、それは誰も得しないし、その曲が例え良くても失礼な話だって思うとどうしてもやっちゃいますね。

そうなると、その中にあるキャッチーさがメジャーっていうフィールドにおいては、より試されますよね。

きっとそうですよね。今までと同様にやってっていけるような気はしつつ、一般リスナーを成長させないとなって。メジャーだからこそ、メディアや大きな企業の力を借りて、本気で音楽面白れぇって思える機会や場を増やしていきたいです。

そんな新井くん自身が、音楽を面白いと思ったきっかけって?

最初はX JAPANでしたね。やりたい放題じゃないですか。

生き様がエンターテインメントですもんね。

そうそう。ロックって結局、そういうことじゃないですか。ストーリーや生きかたを見た時に、音楽に説得力が出たり、面白いって思えたりするので、そういうバンドになりたいですね。
serial TV drama プロフィール

シリアルティーヴィードラマ:2004年結成。メンバー交代を経て、現メンバーとなる。天才的で変態的なギターフレーズ&テクニックを奏でるツインギター陣、日本人離れしたグルーブを生み出すリズム隊、切なさと力強さが同居したヴォーカルから成る同バンドは、東京を中心に活動し、10年にミニアルバム『マストバイ』でメジャー進出を果たした。オフィシャルHP
【Twitter公式アカウント】
serial TV drama twitter
公式サイト(アーティスト)
公式サイト(アーティスト)

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着