【宮田和弥】このアルバムをお守りと
して
ずっと持って行ける

宮田和弥、10年ぶりのソロ再起動! ジュンスカやジェット機とはひと味違う、生々しくリアルな音と言葉が詰まったアルバム『宮田和弥』は、“死ぬまで歌い続ける”という彼の決意表明だ。
取材:宮本英夫

ソロアルバムは10年振りですね。

今回は僕とプロデューサーの中村タイチくんとドラムの冨田政彦くん、あとはエンジニアの池内さんとマネージャーと5人だけで全部作った感じなので、環境はすごくやりやすかったですね。音もすごく納得する音が録れたし、レコーディングが非常に楽しかった。ただ、レコーディングに至るまではすごく大変だったんだけど…

どんな状況だったんですか。

曲はたくさんできるんだけど、歌詞ができなくて。2008年にジュンスカを再結成して、ワーッと盛り上がって、それはそれですごくいい年だったんだけど、その反動も大きくて、燃え尽き症候群みたいになったところがあって。ジェット機もやりたいことをやりきって解散してたし、僕の中でもう一回リセットして、裸になった今の自分を書かないと前に進めない気がしたんですね。そこで非常に苦しんで、いろいろ悩み、そこから出来上がった歌詞なので、自分を癒すアルバムになったと思います。

10~12年前の最初のソロの時と、メンタルは違うんですか。

全然違う。あの時はジュンスカを解散して、ソロでやればもっと行けるだろうみたいな甘い考えがあって。作品としてはいいものを作ったつもりだけど、セールスははっきり出てしまうわけで、音楽で食べていく厳しさを知ったし、売れるものが良くて売れないものが駄目な作品だとは思ってないけど、現実問題としてそういうことがあったから、そこで打ちのめされた自分があった。でも、あの時に『赤いナイフ』という曲で、“どこにももう逃げられない、誰ももう助けてはくれない”っていう歌詞を書いたんだけど、あの時本当にそう思っていたかな?というと、まだ深いところまで理解して言ってなかった気がする。“誰も助けてくれない”なんてこと言ってるうちは、まだ甘いんですよ。

ああ…そうかもしれないです。

俺はもう駄目だ、とか言えてるうちはまだ全然駄目じゃない。それでソロが一旦終わって、ジェット機を組んで、ジュンスカを再結成して、ジェット機が解散して、ひと通り経験する中で、ミュージシャンとして、男として、家庭の父親として、2009年にはいろんなことを考えたわけですよ。“自分って何なのかな”っていうことを。僕はみんなを盛り上げたりするのが苦手なほうではないけど、それは器用なようでうわべな気もしていて、心の奥深くにある本当のことを作品でちゃんと表現しないといけないという気持ちが大きくて、それが今回のテーマになってますね。自分と向き合って、心の奥の奥にある弱さとか嫌なところとか、もちろん良いところも、それをもう一回見つめ直して搾り出した感じ。たとえば『君を愛したいんだ』とか、今まではこっ恥ずかしいと思って避けてきたんだけど、そういう言葉が出てきたり、負けた自分や弱い自分という言葉も出てきたりしたんですよ。昔は“前向きに頑張ろう、みんなも大丈夫さ”みたいな感じだったけど、今回は違う言葉が書けて、そういう人生のタイミングだったのかなと思いますね。自分と向き合って裸になれたのが今回のアルバムで、だからタイトルも“宮田和弥”で行こうと。

サウンド面については、プロデューサーの中村タイチさんとはどんな話をしたんですか。

僕がB型で彼はA型で、性格は真逆なんだけど(笑)。彼は聴いている音楽もプロデュースしている作品もジャンルの幅が広いし、音楽をよく知っていて、僕にはない発想があるんですよ。決めつけないというか、僕が言ったことも全部やってみようと言ってくれて、その中で選ばせてくれるから、すごく楽しかった。ライヴのギタリストをお願いしたら、やってくれるということで、一緒にステージに立つのも非常に楽しみですね。

グルーブに特徴がありますよね。エイトビートのビートパンクではなく、スウィング感がある。

それはアコギを弾いてるからじゃないかな。ガガガガガッていうエレキ感よりも、アコギでスウィング感を出してるのが大きいと思う。ライヴでは僕もアコギを弾くんだけど、そこらへんは大きいですね。サウンド的には、ビートルズ、パンクロック、80年代のMTVのヒット曲や、僕が通ってきたものがすべて消化されて出てる感じかな。ずっと好きで聴いてきたものを全部混ぜて、その上で2010年の今はこんなふうにやろうという感じ。

ジャケットの絵がすごくいいんですけど、これ、キングコングの西野さんが描いたんですね。

いいでしょ? 西野くんがアルバム全体を聴いたイメージで描いてくれたみたいで。“街の雑踏の中で、和弥さんがギターを置いてぽつんと空を見上げているというイメージで”って言ってました。

9月からはツアーも始まりますね。

アルバムの曲を全部やって、過去のソロの曲も、ジュンスカの曲もジェット機の曲もやろうと思ってます。それは僕のやってきた歴史だから。結局僕が歌うと統一感が出るし、アルバムという強力な柱があるから、何が入ってきても大丈夫だと思うので。

さあ、ここが宮田和弥の再スタートと言っていいですか。

ここから死ぬまで歌い続けていくぞという決意が詰まった作品だと思うので、再スタートという感じではないけど、決意表明ですね。10年、20年経ってもちゃんと伝わる作品だと思うし、音楽シーンに残る一枚になるという自信があるので、この作品を作ることによって非常に自分が癒されたという感じかな。このアルバムをお守りとしてずっと持って行ける、そういう一枚になったと思います。
宮田和弥 プロフィール

80年代後半〜90年代初頭にかけて、日本中に大旋風を巻き起こした元気印のロック・バンド、ジュン・スカイ・ウォーカーズ。「すてきな夜空」「歩いていこう」「レッツ・ゴー・ヒバリヒルズ」といったアツい大合唱型アッパー・ソングにノック・アウトされた輩の多いこと多いこと。我々20代にとって、忘れることのできない存在ではないか。
ヴォーカリストとして活躍した宮田和弥、ジュンスカ解散から1年以上のときを経て、98年にアルバム『smash』でソロ・デビューを飾る。軽快なロック・サウンドのなか、ポジティヴ・マインドあふれる持ち前のカズヤ節が炸裂。その健在ぶりに多くのファンは胸をなでおろしたようだ。以降、ソロ・アーティストとして、プロデューサーとして、活躍の場を多方面に広げている。オフィシャルHP
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