【高橋 優】こういう曲が、書きたか
ったんだと思う

彼の周りがワサワサしている。本作品が佐藤 健とAKB48前田敦子が出演する、注目度抜群の日本テレビ系土曜夜9時ドラマ『Q10』の主題歌に抜擢。書き下ろしとして作品に仕上がるまでの“ほんとのきもち”を訊いた。
取材:石岡未央

ドラマの主題歌ということですけど、そのための書き下ろし作品ということになるのかな?

そうではあるんですけど…。台本を見てから曲作りに入って2カ月間は悩みに悩みまくって、自分の中にもドラマがありました。で、アッパーで歌詞もピリッとするようなものを絞り出して一曲書き上げたんですよね。ただ、その曲が、いい感じだねってなった時に、プロデューサーの箭内(道彦)さんから電話があって“そういう感じが高橋 優の良さだみたいなことを考えに入れて書いたの?”って言われて、確かにそうだったんで“はい”って答えて。そしたら“求められているものに沿ったのができてるし、きっとそれになるだろうね”って、“でも、だからこそ遊ぼうよ。え~そっちで来たかぁ高橋 優っていう変化球的なモノを一個作んないと面白くないよ”って言われて。

ふ~ん、舞台裏には、そういう経緯があったんだ。でも気分的には一度完成してるし、消化してスッキリ挑めたってこと?

絵でも描くようなラクな感覚で、久しぶりに曲作りから完成まで、スゴい楽しかったんですよね。とは言え、台本を読んでなかったら絶対に書けてないし、2カ月間の葛藤と苦悩がなかったらできなかった曲ですね。これからまたこんなことがあるんだろうかってぐらい、スゴく好きな曲になってて、こういう曲が書きたかったんだと思う。

なるほどねぇ。結果として、そこに導いてくれた箭内さんは、やっぱり名プロデューサーってことですよね?

そうですね、ちょっと悔しいですけど(笑)。だって、まさかの大逆転劇ですよ! みんながこっちが良いって。そこには何かあると思うんですよ。本当に今回は、箭内さんの存在を再認識させてもらった作品で、一緒に作ったくらいの気持ちがあります。

ドラマは非現実的な部分あるけど、内容的に意識したことは?

まったく個人的な解釈なんですけど…。ロボットという無機質で人間型なもの、そういう非現実的なものが現実に一個投入されることで、当たり前だと思って見過ごしてることが、改めて浮き彫りになる気がした。いっぱいあるんじゃないかなって。

歌詞は疑問符の連打じゃない? でも、先を見越してるというか、俯瞰で見てるような気がしたんだけど。

“君が好き”ってことに辿り着きたくて歌ってます。“君が好き”って言葉を、あたかも新鮮な新しい言葉のように聴かせたくて。ドキッとしたり、面白く聴こえるように。どこに立って、何を思ってるかという風景にしたかった。あちこちから引っ張ってきて並べたわけじゃなくて、そこに通じる言葉たちを選べた気がしますね。

この曲、かなり変則的で、最初聴いた時に、“あれ? どれがサビだったんだ”って思って(笑)。狙いなのかな?

そう言われるのを一番恐れながら頑張りました(笑)。完全な狙いです。

Aメロ、サビ、大サビってなるのかな。でもメロディーが大きく変化しないから、歌い方のグルーブ一発みたいで、歌のポテンシャルが高くないと成立しない、難しい曲だよね。

そうなんです、めちゃくちゃ難しい。自分で作っといて(笑)

ちょっと気を抜いて歌うと、引っかからないというか。

全然だめですね(笑)。同じ言葉を連呼するんですけど、“~だろう?”も“君が好き”も語尾が一緒で、でもアプローチとしては全部違うように、今できる精一杯で歌いました。もっと歌い込んでいって見つけ出せることが、たくさんある曲だと思ってます。

大地を颯爽と歩いてる、たくましい生命力があるね。スゴく抜けてて何かが見えたのかなって。ほんとに迷ったり問いかけの言葉をただ羅列してるわけじゃなくて、キチンと目的というか着地の光に向かってるって意志を感じたんだけど。

う~ん。それで僕も喜んでんのかもしれないなぁ。

んっ? どういうこと?

この曲ができた時に、すごいうれしい気持ちがまず前に出てて、でも、なんでこんなにうれしいのかとか、価値を見い出してんのかってことが、わからない部分が大きかったんです。でも、今しゃべってて、初めて思いました。ちょっと見えました。そう、それはあります。今まで、“むき出し”って言われ続けてきたのが、むき出しじゃないんです、この曲は。

歌詞だけ見てると疑問符だし、日本語的にそうなんだろうけど、葛藤は聴こえないんだよね。ちゃんと現実が見えてる。

ほんとにそうですね。そこにヒントが隠れてる気がします。この曲は歌う度に変わっていってるんです。で、自分の中でも、なんでこういう曲を書いたんだろう?ってのがあって。『素晴らしき日常』とか、『こどものうた』の時は、狙ってどストレートパンチをバーンって打つみたいなことをやってた気がするんですけど、今回パンチを打ってないんです。だけど、何か自分の中で意図してるんですよね。その意図したモノが出たような気はしてる。そこにスゴい歓びを感じてるんだとしたら、そういうところなのかもしれないです。むき出しで言葉を羅列して、ダダダーンって書いたというよりも、ず~っと自分の中にあった言葉とか、見てきたものとか消化されてきたものが、ドラマの台本を読んだことでより明るみになって、自分の言葉として必要とされて出てきたというか。

前に、作品が一人歩きして、思いと違うように受け取られるかもしれないことは理解してるけど、そこを狙っては書けないと言ってたけど。そのキッカケというか、できたのかなって思ってて。意識もないし、まだ模索はしてるんだろうけど。

そう言えば、主題歌になるってことで、初めて聴いてくれた人がこの曲をどう思うんだろう?ってことばかりに心がいってて、単純に自分自身の流れでこの曲ができてるってことに目を向けてなかった気がする。そう考えると、ちゃんとNEXTに進んでいってるっていう実感が無意識にあったんだと思う。それを理解してもらえない恐怖っていうのも同時にある気はしますけど。なんか、今うれしかったですね。

そうですか、それは良かったです(笑)。

ほんとのきもち
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高橋優 プロフィール

タカハシユウ:1983年12月26日生まれ。札幌の大学への進学と同時に路上で弾き語りを始め、08年に活動の拠点を東京に移し、10年7月21日、シングル「素晴らしき日常」でワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビュー。13年11月には日本武道館での単独公演を成功させた。デビュー5周年迎える15年7月にはベストアルバムをリリースし、同月25日には秋田県の秋田市エリアなかいちにてフリーイベントを開催。高橋 優 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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