L→R 永田貴樹(Ba)、中田裕二(Vo&Gu)、小寺良太(Dr)

L→R 永田貴樹(Ba)、中田裕二(Vo&Gu)、小寺良太(Dr)

【椿屋四重奏】これはこれで新しいか
たちの
ポップスなのかなって

アルバム『孤独のカンパネラを鳴らせ』を引っ提げたツアーの真っ只中にある椿屋四重奏から、待望のニューシングルが届いた。ドラマ『モリのアサガオ』のエンディングテーマとして書き下ろされた珠玉のバラード「マテリアル」について訊く!
取材:石田博嗣

「マテリアル」はドラマ『モリのアサガオ』のエンディングテーマですが、やはりドラマを意識して作った曲になるのですか?

原作が漫画なんですけど、全七巻を一気に読んで作りました。話が結構重たくて暗い内容で、しかも社会派だから、ドラマを観た後に流れた時に、少しでも救いが見えるものがいいのかなっていうのはありましたね。

大胆にストリングスを導入した、スケール感のある曲ですよね。

バラードを書いてほしいっていうオーダーがあったんですよ。シンプルにすると寂しい感じがするし、エンディングなんでエンディングらしくっていうのを意識してましたね(笑)。テーマがでかいからスケール感のある曲じゃないと負けちゃうし。あと、色付ける感じ…ストーリーがモノクロっぽいんで、そこにいかに色を添えるかっていう。命の輝きっていうか。

歌詞も原作にインスパイアされたものになるのですか?

そうですね。主人公がふたりいて、刑務官と死刑囚の心のやりとりを中心に描かれているんで、歌でもそのやりとりを意識してみようかなと思って…だから、後半に“次に会う時は聞いてくれよ”っていう言葉が入ってるんですけど、そういうところは原作を意識して書きましたね。

タイトルの“マテリアル”は何を指してるのですか?

俺も日頃よく考えてるんですけど、人が生きるっていうのは、飯食って、消化して、動いてっていう動物的なところだけじゃなくて、感情とか経験とか…だから、素材って全てのことを言っているんですよ。自分が置かれている状況や場所であったり、周りの人たちだったり、目の前に見えている景色だったり。いろんな素材があって、それを集めたり、捨てる…例えば、自分のためにならないようなものは捨てていくし、逆に“あっ、そういう考え方もあるんだ”ってハッとさせられることがあると、そういうマテリアルは自分の中に取り込んでいくんで、そういうものを集めていくことが生きていくことなのかなって。死刑囚は死というマテリアルを突き付けられたことで改心したり…改心しない人もいるんですけどね。だから、人それぞれなんですよ。それがないと変われない人もいるし。いかにより良いマテリアルを自分に取り込んでいくかが、生きるっていうことなのかなって思いますね。

次にカップリング「ロスト・チルドレン」なのですが、都会の歪みを歌っているというか、シニカルに現在を切り取ってますよね。

そうですね。世の中に対して、ちょっと文句を言ってみたというか。こんな時代なのに最近のロックミュージシャンはなかなかメッセージを発さないので…でも、俺、椿屋はポップスだって言っちゃったしな(笑)。ロックってそういう音楽だと思うんですよ。椿屋を結成した時はそういう感じだったんで、そこが変わっていないっていうことですね。で、サウンドはファンクっぽくしてみました。

ファンクっすか! 椿屋流のサイケかなと思ったんですけど。

いろいろ混ざってますからね(笑)。ギターソロはジェフ・ベックっぽかったりするし。

そういう意味では、アルバム『孤独のカンパネラを鳴らせ』を作って自由度が高まったという感じですね。“椿屋四重奏らしさ”に縛られなくなったというか。

そうですね。あのアルバムを作ったことで自分の中の幅が広がった…っていうか、開けちゃった感じがあるんですね。なので、そのへんをどんどん出していこうかなっていうことのひとつですね。前よりもさらにメリハリが付いてきた気がするんで、もう曖昧なものは作らないっていうか。ポップなら超ポップにいきたいし、ロックならロックに振り切りたいですし。

2曲とも現在展開中のツアーで披露されてますが、手応えはいかがですか?

すごくいいですね。『孤独のカンパネラを鳴らせ』以降の曲というのは、歌ってても以前の曲と違うんですよ。自分が歌っているっていう感じがすごくする。前までは借り物っていうか、曲ごとにキャラクターを演じていたところがあって、自分が書いた言葉なんですけど、誰かに言わせているような感覚があったんですね。だから、自分自身が納得しながら言っている。言葉に何か宿ってきたというか、自分にも向かってくるんですよ。前はお客さんに投げ付ける感じだったのに、自分にも言葉が飛んでくるんで、すっごい切なくなったりするんですよね。

では、ライヴ自体が今までと違う感触があると?

去年とは全然違いますね。やっぱりメンバーが変わったことも大きいと思うし、今までとスタンス自体が違う気がします。“ああ、こういう感じのライヴを、俺たちはやりたかったのかな”って思いますね。やっとそういうものが見えてきた気がします。『孤独のカンパネラを鳴らせ』を作ったことで自信が持てたんでしょうね、自分が作るオリジナルというものに。“これは俺にしかできない”っていう自信が掴めたというか。

その自信を持って作れたのが今回のシングルだと。だから、振り切れたものが作れたんでしょうね。

そうですね。実際にドラマのエンディングで流れているのを聴いたんですけど、どうしても椿屋なんですよね。演歌っぽいというか(笑)。それがすごくうれしかったんですよ。『マテリアル』は良質なポップスとして美しく作り上げたつもりだったんですけど、このアクの強さは何なんだって(笑)。まぁ、俺の声に原因があるのかもしれないですけど。これはこれで新しいかたちのポップスなのかなって。だから、“こういうポップスを作っていくんだろうな、俺は。…変なバンドだな”って思ってます(笑)
椿屋四重奏 プロフィール

00年に仙台で結成された唯一無二のロック・バンド。現在のメンバーは中田裕二(vo&g)、永田貴樹(b)、小寺良太(dr)の3人。“和”を意識した楽曲、ライヴを“演舞”と呼ぶなど、艶ロックと称される強烈な個性で日本のロック・シーンに新たな風を吹き込んでいる。主に作詞・作曲を担当している中田は、安全地帯やTHE YELLOW MONKEY、CHAGE&ASKAなどに多大な影響を受けている。
02年に、幾度のメンバー・チェンジを経て、中田、永田、小寺の3人編成となり、03年8月に<DAIZAWA RECORDS>より1stミニ・アルバム『椿屋四重奏』でデビュー。アルバム全体にみなぎる初期衝動と鋭角的なサウンド、そして艶やかに非日常を歌う世界観が巷で話題を集め、その名を一躍全国に轟かす。

04年4月、1stフル・アルバム『深紅なる肖像』を発売。他の追随を許さぬハードでドラマティックな激情サウンドを確立。各地でワンマン・ライヴを成功させ、インディーズながら『ROCK IN JAPAN FES』はじめ全国の夏フェスやイベントに出演。05年6月に1stシングル「紫陽花/螺旋階段」をリリース後、全国各地でパワー・プレイを獲得、テレビ朝日系『ミュージックステーション』などの地上波テレビ出演により大反響を得る。
九段会館でのワンマン・ライヴの際に、サポート・ギタリストとして安高拓郎を新たに迎え入れる。05年9月に第一期・椿屋四重奏を総括した2ndフル・アルバム『薔薇とダイヤモンド』をリリース。その後、06年3月にSHIBUYA-AXで行われた『熱視線IV 〜ENDLESS GAME〜』公演にて、サポート・メンバーとして参加していた安高のメンバー正式加入を発表、晴れて真の「椿屋“四重奏”」となった。4人編成としての新たなスタートを切った椿屋四重奏を世に知らしめるべく放たれた2ndシングル「幻惑」では超攻撃型ロック・ナンバーを披露。同年の大晦日には、バンド史上初となるカウントダウン・ライヴ『ナカノ・サンライズ』を開催。

約3年間のインディーズ活動を経て、07年5月にシングル「LOVER」で<ワーナーミュージック・ジャパン>よりメジャー・デビュー。同年8月には、ダイナミックなバンド・サウンドと文学的に綴られた歌詞によって表現された「恋わずらい」を発表。08年3月には既発シングルを含むメジャー1stアルバム『TOKYO CITY RHAPSODY』をリリース。更に進化した椿屋サウンドとポピュラリティーが見事に結実した傑作が誕生した。このアルバムを引っさげて各地でライヴを開催、企画ワンマン・ライヴ『熱視線』も定期的に行い、シングルの発売が待ち望まれていたが、約1年半年ぶりとなる音源は、09年8月にメジャー2ndアルバム『CARNIVAL』としてリリースされた。

そして、全国31ヶ所32公演『TOUR '09 CARNIVAL』の振替公演が終了直後の10年3月1日、音楽的な方向性の違いにより安高拓郎が脱退。当初のメンバーである3人編成に戻ったものの、安高が所属した4年間を糧として精力的な活動を展開。5月には、東海テレビ・フジテレビ系昼ドラマ『娼婦と淑女』の主題歌に抜擢されたシングル「いばらの道」を発売し、今までのファンに加えて、多くの主婦層のファンも獲得した。同年8月にはメジャー3rdアルバム『孤独のカンパネラを鳴らせ』をリリースし、年末には地元・仙台で約4年ぶりとなるカウントダウン・ライヴ『SENDAI SUNRISE』を開催。作品を発表する度に進化を遂げ、バンド結成10周年を最高の形で締め括った彼らだったが、11年1月11日、永田貴樹(b)の脱退を受け、苦渋の決断とも言える解散を発表した。今後、永田貴樹(b)は音楽活動を辞め新たな道に進むことになり、中田裕二(vo&g)と小寺良太(dr)は、別の形で音楽活動を継続していく。椿屋四重奏Official Website
椿屋四重奏Official Website
椿屋四重奏オフィシャルサイト
公式サイト(レーベル)

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