L→R 田中秀幸(Ba)、成山 剛(Vo&Gu)、津波秀樹(Dr)、山内憲介(Gu)

L→R 田中秀幸(Ba)、成山 剛(Vo&Gu)、津波秀樹(Dr)、山内憲介(Gu)

【sleepy.ab】隠れてるけど見つけて

って気持ちがすごくある

北海道の至宝、sleepy.abが2ndシングル「かくれんぼ」を完成させた。初夏にリリースした「君と背景」で見せた疾走感とは違う、元来の彼ららしい冬に籠る感じが表れた楽曲だ。それでいて進化も反映されている。成山 剛(Vo&Gu)に訊いた。
取材:高橋美穂

「君と背景」とは、まったく違った感触のシングルですね。

『君と背景』を作ったのは4月くらいだったんで、季節的なイメージもあったと思うんですけど、初シングルってことで、“sleepy.abと日本の音楽シーン”というところにすごく向き合ったんです。それで新しい自分たちを見つけられたことは、自分たちにとって大きかったなって。それで今回はsleepy.abの体温っていうか、リズム感っていうか、自然なかたちを見てほしかったっていう。言葉に関しては『君と背景』と比べると生々しさっていうか、人と人との距離感を意識しましたね。過去の自分に言ってるような感覚もあるなって、あとで気付いて。狙って書いたわけではないんですけど、もしかしてあの時こう言ってくれてたら、すごくうれしかったなって言葉だったり、ほんとは言えなかったんだよねって言葉だったり。

あとで気付いたってことは、出発点は違ったのですか?

“本当は誰にも言えなかったんだね”ってところは最初からあって。“ひとりひとりが孤独を支えている”っていうキーワードの中で、これは人に言ってあげてるつもりで書いてたんですよね。けど、過去の自分にも当てはまってたんだなっていうか。あの頃って学校だったり、家族だったり、仕事なのか分かんないですけど、一本の道しか見えてなくて、普通にちょっと横に行ったり、戻ったりすることが悪いことのように感じてたし、器用じゃないっていうか、真っ直ぐ歩くしかないと思ってたんですよね。

また、“冷めたぬくもり”とか“白い道をどこまでも 振り向かず歩いていく”とか、冬を思わせる言葉もありますね。

温度感を出したいっていうのはありましたね。ただ、冬の寒さというよりは、冬の温かさみたいなことは考えてたかもしれないです。北海道って、部屋がすごく温かいんですよ。寒いから暖炉があるっていう。

サウンドで言うと、穏やかなんだけど、sleepy.abらしい浮遊感だけではないダイナミズムがあるなって思って。

アコースティックのツアーやフェスとかもありつつ、その中で掴んだものは入ってるのかなって思いますね。夏フェスの空間って囲いがないんで、遠くに届くっていう意識があって。全員に届けるだけじゃなくて、遠くに届けることに関して、sleepy.abはポテンシャルがある気がして、それは関係してるかもしれないですね。そういう意識がサウンドに対して強くなっている気がしていて、それが強く表れている感じがしています。

“かくれんぼ”っていうタイトルもユニークですよね。

“見つかるように隠れていた”ってありますけど、そこが強くて、そこからイメージするダークなものをちょっと出したかった。俺たち自体が、隠れてるけど見つけてよって気持ちがすごくあるんですよね(笑)。知ってほしいんだけど自分で出れないし、探してほしいっていう。昔は特にありましたけどね。

確かにそういう印象でした(笑)。今でもその気持ちはあります?

本質的にはそうですね。

では、2曲目の「夢織り唄」に関しては?

この曲も近さみたいな、体温がすごくある曲ですね。“君と僕は似ているね”ってところから全部始まって。

温度感がある2曲が出来上がったっていうのは、そういう楽曲を作りたい欲求があったのですか?

前のシングルの『君と背景』と『街』は、動詞の描写で自分たちを動かしてもらえるような感覚の曲だったんで、その後はどうしても小さい世界を作りたくなるっていうか。開いたら閉じるっていうバランスをすごく考えてますね。

開きっぱなしや走りっ放しではなく?

そうですね。10年やってきましたけど、習性なんだなって。どこにいるか分かんなくなるのが怖いんでしょうね、きっと。走り続けると、どこだったっけ?ってなっちゃうから。バランスとレンジっていうのは考えますね。

感情で突っ走るんじゃなく、冷静に考えてるんですね。

多分、感情的にもなるんですけど、なった分、反動があるんですよね。パーティのあとの自宅みたいな感じがする。それがなくなって、バランスを失うのも怖いのかな。はしゃげないっていうか、振り切れない。ほんとははしゃぎたいんだけど(笑)

(笑)。そして3曲目には、札幌道新ホールで行なわれたライヴから「雪中歌」をリミックス・ヴァージョンで収録していますね。

今回はライヴテイクの上に、山内がプラスαでギターを入れてるんです。シングル全体的にも冬っぽいイメージがあったんで、その中での『雪中歌』っていう。曲自体は雪がしんしんと降る感じもあるんですけど、ライヴだと吹雪みたいな攻撃的な部分もあったんで、そういうのを聴いてほしいなと思ったんです。

さらに、11月からのワンマンツアーには“新譜録音経過報告行脚”っていうタイトルが付いていますけど、このシングルのあとのリリースも期待できるっていうことですよね。

そうですね。冬の間中にアルバムを出すので。今は制作も佳境の感じです。

今年は随分、精力的に活動しましたね。

そうですね。sleepy.acも入れると、三回全国ツアーを回りましたし。でも、ライヴに関してはハードってことはないですね。北海道に帰って来た時の感動が大きいんですよ。“やっぱここなんだな”って思うんですよね。初めの頃に長いツアーに行って帰って来た時よりも、今のほうがそういう感動が強くなってる感じが不思議だなって。そういうのって薄れるのかなって思ってたんですけど。それを感じながら進めていることはすごく幸せだなって思いますね。
sleepy.ab プロフィール

札幌の大地が育んだ独自の世界観を持つバンドsleepy.ab(スリーピー)。メンバーは成山剛(vo&g)、山内憲介(g)、田中秀幸(b)、津波秀樹(dr)の4人。接尾語の“ab”が示す通り、“absolute”=抽象的で曖昧な世界がトラックやリリックに浮遊している。成山らが紡ぐ美しく繊細なメロディ、山内の変幻自在の空間プレイ、田中と津波の確かな素養に裏付けされた強靭なボトム、この唯一無二のサウンド・スケープが4人の“absolute”な音世界を既に確立している。

札幌でマイペースに活動しながら、『RISING SUN ROCK FESTIVAL』をはじめとする数々のフェスにも出演を重ね、彼らの音楽に魅了されたアーティストも少なくない。そんな中、09年11月に<ポニーキャニオン>よりアルバム『paratroop』で遂にメジャー・デビューを果たす。聴いた人の心を掴んで離さないスリーピーワールドは、まるで眠りにつく時のように気持ちがリセットされる感覚に陥るはず。彼らの作品を聴いていると透き通った空気の季節が待ち遠しくなる——そんな音楽を奏でている彼らは他のバンドとは一線を画している。オフィシャルHP
公式サイト(アーティスト)

OKMusic編集部

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