L→R スズキヒサシ(Ba)、松木智恵子(Vo&Gu)、鈴木雅人(Dr)、岡田慎二郎(Gu)

L→R スズキヒサシ(Ba)、松木智恵子(Vo&Gu)、鈴木雅人(Dr)、岡田慎二郎(Gu)

【ピロカルピン】音楽活動に対してど
れだけ強い思いを持てるか

唯一無二の音楽性が話題のピロカルピン。ファンタジックなストーリーの中に強い意志を刻み込んだ「存在証明」、シリアスなテーマを寓話的なイメージで描いた「終焉間際のシンポジウム」。2枚のシングルが誕生した背景を松木智恵子(Vo&Gu)と岡田慎二郎(Gu)が語ってくれた。
取材:道明利友

「存在証明」に対して“決意表明のような曲”っていう表現を松木さんはブログでしていましたね。

松木
そうですね。この曲はもともとイメージしたものがあって…人の寿命って、みんなひとりひとりバラバラで生まれて、バラバラに死んでいくっていう、儚い、そんなに長くはない期間だと私は思っていて。そういう短い期間の中で、ひとりひとりが一生懸命に自問自答しながら生きている姿を“蛍”に例えて表現したのがこの曲なんです。儚い命の中で、どれだけ自分を出しきって生きられるかを自問自答しながら生きているっていう、生き様みたいなものを表現したくて。だから、始まりはもう本当に、私の個人的な“決意表明”ですね。
岡田
そういうところから始まった曲が、バンドとしても“勝負曲”って言えるような作品になったと思います。こうしたいのになかなか思うようにいかないっていうことも今まで繰り返してきたんですけど、ようやくこの作品で思い通りにやれたっていう実感があったんで。これからの活動に対して、“もっとやれる!”みたいな気持ちが持てる作品になったなっていう気持ちはメンバーみんなあると思うし、そういうところから“決意表明”っていう言葉も出てきたのかなっていう気がします。

短い生涯の中で輝く蛍の光みたいに、人生はある意味短いっていう。だからこそ、人は全力で生きなきゃいけないと。いち個人としても、バンドとしても、それは確かに決意表明的な思いですね。

松木
だと思います。これからの活動に対して自分はどれだけ強い思いを持って続けていけるのかとか、そういうことで私自身が自問自答していた中でできた曲でもあり…。これは「終焉間際のシンポジウム」にもつながるんですけど、この曲は今の音楽業界をちょっと風刺した部分もあって。お金をとにかく莫大にかけて売っていくみたいな、そういう世界に対するアンチテーゼみたいな気持ちもあったし。そういうやり方を今までやってきた業界全体が、不況だとか、CDが売れないとか、いろいろなことが言われている中で、自分はどんなスタンスでやっていけばいいのかを悩んだりもしたし。でも、自分が良いと信じる音楽を作って発表していくっていうことは、そういう周りの状況とは関係なく続けていけることなんだっていう強い思いも込めています。

“勝負曲”って言えるような作品になった話も岡田さんはしてくれましたけど、サウンド面でも今回は手応えがすごくありますか?

岡田
そうですね。「存在証明」は今までピロカルピンがやってきたサウンドの集大成のような曲だし、「終焉間際のシンポジウム」はそこからまた新しいものが開けた曲かなと思います。ピロカルピンの特徴的な要素として、まずはメロディーラインがあると思うんですけど、それに呼応するように自由に動くギターのバランスとか、ベースもドラムもどの楽器もちゃんと主張しながらもメロディーラインとバランスが取れていて、どちらの曲も上手い具合にマッチしたっていうのはあるんじゃないかと思います。

そうですね。どの曲も松木さんのヴォーカルが本当にきれいっていうのがまずあり、そのメロディーを包む演奏はかなり自由度が高いっていうのもピロカルピンの特徴だと思います。

岡田
そうですね。あと「終焉間際のシンポジウム」のほうはヨーロッパ的なイメージもちょっと入ってるかな。そういう空気というか。僕は実際には行ったことないんですけど(笑)、そんなイメージでサウンドを作ったところもありますね。

岡田さんなりの想像のヨーロッパにはどういう風景なり、空気感なりが広がっていたんでしょうか?

松木
私は行ったことがあるんですけど(笑)、空がすごい独特じゃないですか。天気や空気感もカラッとはしていなくて、ジメッとした感じですよね。

そうみたいですね。アメリカみたいなカラッとした感じじゃなくて。そのヨーロッパの音楽というか…いわゆるUKロックが好きな人たちなんじゃないかなっていうのは音を聴いても感じます。

岡田
ああ、そうですね。USかUKかで言えば、完全に…
松木
UKですね。私はマニックス(マニック・ストリート・プリーチャーズ)がずっと大好きで。
岡田
そうだね。スウェードとか、いわゆるブリットポップの時代からUKの音楽はずっと好きですね。UKの音楽はハーモニー重視で、その響きもアンニュイで、切ない響きが混ざっていたりするのがすごく好きなんですよね。だから、自分の音作りでも、エンジニアさんから“この音入れるの!?”って言われるような細かい音を入れてみたりするんですよ(笑)。その音単体で聴くと微妙なんですけど、ハーモニーとして混ざった時に上手く成り立つっていうか。

しかも、その響きはさっきのヨーロッパのイメージじゃないですけど、100パーセント快晴じゃなくて、どこか陰を感じるというか。それに対して“光”っていうフレーズが多くの歌詞で見られるのも印象的で。

松木
そうですね。“光”は多用する癖がありますね。それは多分、もともとのきっかけが、ある意味“闇”から来ているというか。社会に出て、荒波にもまれて、なんかもう自分のアイデンティティが保てなくなった時に、“光”を求めて音楽をやり始めたみたいなところが私の根底にはあるので。ただ、リアルに自分の感情を表現しようっていうよりは、そういうものを根底に置いて、できるだけフィルターを通してストーリーを描くようなイメージでやろうとはしてるんです。だから、“個”を出そうっていう感覚はあんまりないんですけど、そういう中に“光”を求めている感覚が曲にも出ているのかなっていう気はします。

そんな“決意表明”な作品のリリース後にはワンマンライヴも控えていますが、どんな内容になりそうですか?

松木
12月のワンマンは、大変なんですよ(笑)。プラネタリウムでやるんです。池袋のサンシャインシティの中にある『満天』というプラネタリウムなんですけど、すごく幻想的な雰囲気になると思います。
岡田
何しろ初めてなので、演奏形態から映像をどうするかっていうことまでいろいろ考えないといけないんですけど…チケットに「終焉間際のシンポジウム」のCDが付いています。楽しみにしててください(笑)。
ピロカルピン プロフィール

ピロカルピン:2012年5月にアルバム『蜃気楼』でメジャーデビューを果たす。日常を浄化する美しく力強い言葉と、普遍的な曲の中にキラリと光る音の輝きが、リスナーの耳を捉えて放さない。昨年は渋谷CLUB QUATTRO、赤坂BLITZでのワンマンライヴを成功させ、今年も全国ツアーが決定している。 オフィシャルHP
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