【岡平健治】“あぁ、こんなアルバム
が作れるんだ”
って未来が見えた

ソロ3作目となるオリジナルアルバムは、全国各地をテーマにした岡平健治流の“ニッポンの唄”。それは自らハンドルを握って、ひとり全国各地を回り、弾語りで歌を届け続けた『自走TOUR』から派生したものであり、さまざまな彼の想いが詰まっている。
取材:土内 昇

今作は通常のオリジナルアルバムとは違うのですが、一種の企画盤というよりも、ライフワークのような作品ですよね。そのきっかけは、やはり過去に3回行なった『自走TOUR』?

そうですね。昔から全国各地のご当時ソングっていうか、それぞれの土地を歌った曲がたくさんあったり、3B LAB.☆Sの時にも『日本#5』というアルバムを出していたりと、それをまとめてみようかなっていう気持ちが強くなったんですよ。

曲はどのようにして作っていったのですか? 現地の風景を盛り込んでのドラマが描かれていますよね。

これは…苦しみましたね。平 義隆さんとタッグを組んでやったり、佐賀出身ってことで326にも書き下ろしてもらったりして(『少年ホーム ~ニッポンの唄 佐賀~』)、いろんな人との総合バランスで作ったという感じです。僕はかなり我が強い方なんですけど、それを抑えてやってみたら、こんなにいいものができたという。“あぁ、こんなアルバムが作れるんだ”って未来が見えました。冒頭に言われたようにライフワークだと思うし、これは無限大の企画なんで、年をとっても続けたいです。金閣寺の歌とか作ったりして(笑)

ということは、健治くんが曲のストーリーとかも考えていたのですね。『自走TOUR』の中で、現地の人と話したり、エピソードを聞くとかして作っていると思ってました。

あー…でも、そういうのは自然とファンがくれますね。どこそこにこういうものがあるって教えてくれたり…それこそフォト・アルバムとかくれて、天橋立を逆さから見た写真やいろんな風景の写真があったり。それも影響しているでしょうね。

サウンドも各地を意識して作っているのですか? 僕は関西人なので、「にぎやか劇場 ~ニッポンの唄 大阪~」が印象深く、大阪のがちゃがちゃした感じが伝わってきましたよ。

ありがとうございます。なぜか最後はブルージーに終わっちゃうところも大阪っぽいかなって(笑)。サウンドのベーシックな部分は僕が作っているんですけど、いろんなアレンジャーのアイデアがふんだんに入っているんで、お互い切磋琢磨して作っていったら自然とそうなっちゃったんですよね。

では、歌入れはどうのように? ライヴ感があるっていうか、すごく感情が入ってるように思うのですが。

歌はもっと上手に録ろうと思えば録れたんですけど、気持ちを伝えたかったんで、わざとテイクを長めにして録ったんですよ。美空ひばりさんみたいに最初から最後までスルッとは録れないんで(笑)。だから、細かく直しながらするんじゃなくて…ほんと、勢いを録った感じですね。僕、歌う時はひとりにしてもらって、じっくりと自分で録るんですよ。もうね、アッパーな歌なのに泣いちゃったりして(笑)。そういうナルシスト的なところはありました。滋賀県の歌(『旅立ちの朝 ~ニッポンの唄 滋賀~』)で涙が出てきましたね。なぜか、あんな明るい歌で。

でも、歌詞は切ないですよ。

そうなんですよ。《感じるかいこの風を 冷たいこの風を…》ってところで、僕ひとりが見ている最高の景色をファンやお世話になっている人たちにも感じさせたいと思った瞬間に、ブワッと涙が出てきたんです。いろいろ思い出したんでしょうね。『自走TOUR』をやってて、挫けそうになることが何回もありましたし…“なんで、俺、こんなことしてるんだろう? ここまで頑張る必要があるのかな?”って。だから、いろんな岡平健治が垣間見れましたよ。唯一、ブログを書くことが楽しみで、捌け口になってましたね。長い時は6時間ぐらいかけて書いたし(笑)。伝えたかったんですよ、僕の想いだとか、風景や歴史を。そういうことがあったからこそできた、『ニッポンの唄』なのかなって。なぜか僕には愛しか見えないんですよ。その土地土地の温かい愛。そういう意味ではラッキーだったのかもしれない。いい景色に巡り合って、いい人や面白い人に出会えたりしたんで。

あと、気になるのは「果てのない道~新~ ~ニッポンの唄 札幌~」。19のナンバーをセルフカバーしているという。

もうね、3B LAB.☆Sの初期ぐらいまでの曲って客観的に見れるんですよ。だから、他人の曲をカバーしている感覚ですね。個人的にも好きな曲だし、リメイクしたかったっていうか…この曲は札幌の思い出からできた曲だっていうのを伝えたかったんです。《平野一面広がる白銀世界》って十勝平野のことなんですよ。ツアーで北海道に行って…当時はいろんな葛藤が入り交じっていて、悩みに悩みまくっていたんですよね。すごい速いスピードで周りが進んでいったから、ふたりだけが世の中に置いて行かれたような感じだったし…ある意味、ハングリー精神まる出しの歌ですね。

そういうセルフカバーも収め、内容の濃い作品に仕上がりましたね。

想像以上にいいものができましたね。テーマがあまりにも大きかったから、すごく不安だったんですけど、いろんなミュージシャンや作詞家、たくさんの人の力を借りて出来上がったんで、ほんと感謝の気持ちでいっぱいだし、こうやってまたアルバムが出せることの喜びもありますよ。

そして、このアルバムをリリースした後には、4回目となる『自走TOUR』が控えているのですが。

ツアーでは脱線するととんでもない方向に行って、3B LAB.☆Sメドレーとか19オンリーとかなっちゃうこともあるんで…それはそれで盛り上がっているからいいんですけど、今回は“ニッポンの唄”をしっかりと歌うツアーにしたいと思ってます(笑)

すでに“ツアー=『自走TOUR』”になってません?

もう走ってない高速がないですからね(笑)。『自走TOUR』しか考えられないんですよ。3B LAB.☆Sのツアーであっても、きっと自分で車を運転して行かないと、飛行機や電車とかだと実感が沸かないでしょうね(笑)
岡平健治 プロフィール

オカヒラケンジ:1998年に19としてデビュー。数々のヒット曲を生み、01年には3B LAB.☆を結成。02年の19解散後、3B LAB.☆を本格始動させ、05年に新メンバー加入に伴いバンド名も“3B LAB.☆S”に変更。07年11月21日には、3B LAB.☆Sを継続させながら、アコースティックギター1本でソロプロジェクトを開始することを宣言し、健治自身が車を運転し、弾語りで音楽を届ける自走ツアー『岡平健治ソロ全国47都道府県 弾語り自走TOUR2007→2008』に旅立つ。そして、14年5月より全国47都道府県52公演を回る、7度目となる自走ツアーが予定されている。オフィシャルHP

OKMusic編集部

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