【加藤ミリヤ】代表曲が物語る7年間
のドキュメンタリー

全ヒット曲が網羅されたベストアルバム『M BEST』。想いをリアルに綴った曲の数々が美しい。同年代の女性の共感を呼ぶだけでなく、幅広い層の胸を打ち得る普遍性も持っている点をぜひ多くの人に発見してほしい。
取材:田中 大

ベスト盤は独特の感慨があるんじゃないですか?

ちゃんとその瞬間を切り取って曲を書いてきたんだなってすごく思いました。その時にしかない感情を意識的に書いてきて良かったです。だから今の自分があるんだなとも思います。

例えば、1stシングルの「夜空」は自分で道を切り拓く決意が力強くこもっていますね。

当時は大人に見られたかったんですよ。両A面だった『Never let go』は14歳の時に書いたんですけど、私の基本的なことはそんなに変わっていないんだなって思いました。声は若いし、テクニック的なところは足りていない。恥ずかしいけど、そんなことも含めて自分でも楽しめました。

「ディア ロンリーガール」も、まさにその頃の気持ちを切り取った曲じゃないですか?

ほんとそうです。私のターニングポイントの曲でしたね。3枚目のシングルなんですけど、当時、私は女子高生で“女子高生”って固まったイメージがあるから、大人とか社会の偏見をすごく感じていました。そういう気持ちを吐き出すつもりで書いたら、同世代の女の子たちが“分かる!”と。そこから“私は同世代の子たちに向けて、今の自分として曲を書いていくべきなんだな”と明確に見えたんです。デビューした時から作詞には譲れないものがあったんですけど、この曲を書いたことで作詞活動が確固たるものになりました。“私にしか絶対に書けないものがある”っていうことを、すごく自分自身で思いましたね。

このベストアルバムは、ミリヤさんのいろいろな時期のリアルな感情が集まっているということですね。ミリヤさんの7年間のドキュメンタリーとも言えそうです。

7年間のドキュメンタリーですか。それ、すごい良い言葉。ぜひ書いてください(笑)

ありがとうございます(笑)。あと、サンプリングの斬新さもミリヤさんのキャリアの注目ポイントですね。

私はもともとヒップホップやR&Bが好きだから、サンプリングって手法は当たり前な感覚としてあるんです。でも、日本の曲をサンプリングするってあんまりないなって気付いて。だから、『夜空』で自分が好きなクラシックとしてBUDDHA BRANDの『人間発電所』をサンプリングしたんです。それが良いものになったから、いろいろ作ってみたいと思うようになったんですよ。サンプリングは賛否両論あるし、特に日本だとまだちゃんと受け入れられていないのも分かる。でも、私はデビューからずっとやってきたから、そこに対する小さいプライドがあるんです。“自分が誰よりもサンプリングを理解して、カッコ良くできる”っていう意地みたいなものもあります。

あと、19thシングル「勇者たち」がすごく大きな力を持った曲だと改めて思ったんですよ。

ベストアルバムの最後に収録する曲を考えた時に、迷わず『勇者たち』だと思いました。個人的にも思い入れがすごく強くて。曲を作っていた時に、ある意味神憑って出てきたメロディーと歌詞だったんですよ。こういう感覚になったことってあんまりないから、自分にとっても大事な曲です。またこういう気持ちで曲が書けたら良いなと思いますし、今伝えたいメッセージもこもっています。時が経てば経つほど強い曲になっていますね。

これはファンにとっても、今後ますます大事な曲になっていくんじゃないでしょうか。

不思議な感覚になる曲です。歌うと泣いちゃいそうになるから、自分でも気を付けないと大変な曲なんですけど。

「RAINBOW」と「Me」は新曲ですね。

『Me』がすごく気に入っているんです。自分で言うのも変ですけど(笑)

(笑)。「Me」は、“誰にも私の真似はできない”という自負とプライドを感じました。

ベストで初めて私の曲を聴く人もいると思うんです。だから、自己紹介をするような曲が欲しいなと。『RAINBOW』はR&B的で、90年代っぽさもあって少し懐かしいサウンド。夏にアガれるものをイメージしました。で、もうひとつの曲は“ドロドロミリヤ”というか(笑)。そういうものを作りたくて。“想いを吐き出してなんぼ”みたいな自分のスタイルを聴いてもらいたかったんです。

「勇者たち」や「Me」がまさにそうですけど、ミリヤさんの音楽って一曲一曲から届いてくる想いがとても強いことに大きな魅力がありますよね。BGMにはしにくいですが(笑)。

その通りですね。

曲とじっくり向き合って、自分と重ね合わせたり、曲と対話したくなる音楽なんだと思います。

“なんで私の音楽ってサラッと聴けないんだろう?”というのはありますけど(笑)。でも、私は自分の音楽に関しては“消耗したい”っていうのがあって。私自身もそうだし、受け手も自分を投影して消耗する感じのものを求めているところはありますね。

確かに聴き手もエネルギーを使いますね。でも、それだけ心を揺り動かす音楽だということですよ。

流れたくないんです。私も普段はBGMとしてヒーリングミュージックを流して癒されたりするんですけど、自分の音楽はそうではなくていいと思っています。心と心、魂と魂をぶつけ合いたいんです。

ベスト盤がひとつの節目になるかと思うのですが、この先のビジョンとして今抱いていることは何かありますか?

明確なものは全然なくて。でも、このベストアルバムが世の中に出た時に、何かが見えてくるような気がしています。それを期待しています。今後も基本的なことは変わらないと思うんですけど、もっと自分の音楽を探したい。変わらずに力強い曲を作れたら良いと思っています。
加藤ミリヤ プロフィール

1988年6月22日生まれ、愛知県豊田市出身。ハスキーなクリスタルボイスを持ったシンガー・ソングライター加藤ミリヤ。13歳で「ソニーミュージック・オーディション」オーディションに合格し、作詞・作曲を本格的にスタート。03年9月、Reggae Disco Rockersが発売したアルバム『Reggae Magic』の1曲にゲスト・ヴォーカルとして参加、04年5月には童子-Tのシングル「勝利の女神 feat. 加藤ミリヤ」にフィーチャリング参加するなど、デビュー前からクラブシーンを騒がす存在に。

04年9月8日、<Sony Music Records/MASTERSIX FOUNDATION>から1stシングル「Never let go/夜空」でメジャー・デビュー。BUDDHA BRANDの名曲「人間発電所」を大胆サンプリングした「夜空」は話題を呼び、先行アナログ・シングルは即日完売。追加プレスのオーダーも殺到し、現在も入手困難な伝説の一枚となる。メジャー・シーンで活躍を続けつつ、コアなクラブ・シーンからの支持も厚いのが彼女の特徴だ。05年3月に発売した3rdシングル「ディア ロンリーガール」は、現役女子高生だったからこそ生まれたリアルなメッセージが同年代に共感を呼び、スマッシュ・ヒットを記録。9月に発売した4thシングル「ジョウネツ」でUA「情熱」(96年)を大胆にサンプリングして話題を呼ぶと、10月にリリースされた1stアルバム『Rose』が、オリコン週間チャート初登場2位を獲得した。

06年9月に発売した7thシングル「I WILL」では、初の本格派バラードに挑戦し、沢尻エリカ主演の映画『オトシモノ』主題歌に起用される。恒例となったc/wでのサンプリング楽曲には、RIP SLYME「One」をサンプリングした「So gooood」を収録。07年2月には、映画『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』の主題歌に大抜擢された「Eyes on you」をリリース。ポップなメロディに恋する女の子のストレートでポジティヴなメッセージを綴ったディスコ・チューンが話題に。先行アナログも限定発売され、クラブ・シーンで大ヒットとなり、現在もロング・セールスを記録中。3月には、4枚のシングルを含む2ndアルバム『Diamond Princess』をリリースし、初の全国ワンマンツアーも大成功を収める。

07年10月、若旦那(湘南乃風)トータル・プロデュース、MINMIトラック・メイキングによる「LALALA feat. 若旦那(湘南乃風)/FUTURECHECKA feat. SIMON、COMA-CHI&TARO SOUL」をリリース。初のオリコン週間シングルチャートTOP10入りを果たし、5日後には、若旦那と共に二人の母校である明治学院高等学校で凱旋ライヴを開催した。08年2月には、「19歳の今だから歌いたい」とあの名曲をモチーフに「19 Memories」をリリース。19歳のリアルを歌った意欲作となり、11月に発表した自身初のベスト・アルバム『BEST DESTINY』では、オリコン週間ランキングで堂々1位を記録。20歳4ヶ月26日での1位獲得は、シンガー・ソングライターのベスト・アルバムとしては宇多田ヒカルのもっていた21歳3ヶ月を抜く最年少記録を打ち立てた。オフィシャルHP
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OKMusic編集部

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