L→R ササキジュン(Gu)、きみコ(Vo&Gu)、shinn(Dr)、アベノブユキ(Ba)

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【nano.RIPE】きみコの今とリスナー
の今をひとつにつなぐアルバム

2011年9月にメジャーデビューした4人組バンド、nano.RIPEが1stフルアルバム『星の夜の脈の音の』をリリース。詩的な歌詞世界とまっすぐな歌声、ハードなバンド演奏が絶妙なトライアングルを描く、心の奥の熱いものを引っ張り出してくれる作品に仕上がった。そんな本作をきみコ(Vo&Gu)に訊く!
取材:榑林史章

nano.RIPEはデビューから、シングル5枚のうち4作でアニメ『花咲くいろは』の主題歌を手がけていますが、人気アニメなだけに反響が大きかったのでは?

アニメでぼくらを知って、ライヴに足を運んでくれるお客さんがすごく増えました。今までは男女半々だったのが、圧倒的に男子が増えましたね。『花咲くいろは』のTシャツを着ている子とかもいて、アニメを観た子がそのままライヴに来てくれていると実感しました。アニメの内容もあたし自身すごく共感の持てるものだったので、素直に書いたものがアニメと自然にリンクしました。だから、初めて担当させていただいたアニメが『花咲くいろは』だったことは、すごく良かったと思います。

そして、待望の1stフルアルバムをリリース。きみコさんは、ブログで“自分のこれまでの音楽人生が全部詰め込まれた”と書いていましたね。

はい。人生初のフルアルバムで、インディーズの曲もあり、新曲もあり…あたしが全作詞をしているという部分で、あたしが今まで感じてきた、きみコとしての人生と、今あたしが言えることを全部詰め込むことができたかなと。

「ハイリープ」や「ノクチルカ」「世界点」といったインディーズの頃の曲は、録り直していますね。

今もライヴの中心でやっている代表曲です。ライヴでやるたびに歌も演奏も書いた時の気持ちとは変化していているので、その変化も聴いてほしいと思ったので。

アレンジはほぼそのままだけど、そこに込める気持ちや想い、ニュアンスが成長しているのですね。

一番変わったのは歌かな。今までCDもライヴのように表現したくて、歌だけでどれだけ心を入れられるかと、ずっと悩んでいました。それが新曲の『セラトナ』を録った時、もっと奥のほうまで心を入れて録れた気がしたんです。だから、それ以降に録った曲はすごく満足していますね。

新曲はどのようなイメージで?

この1年間にシングルを出しながら作り続けてきたものから選んでいきました。nano.RIPEらしさ、これがnano.RIPEだ!と言える作品にしたかったので、変化球は入れず、自分たちの王道の曲であることやシングルとの兼ね合いも考えて収録しています。

nano.RIPEの王道とは?

言うのは難しいのですが...あたしの歌詞は、答えを出しているものがなくて。答えはこうだよ、頑張れ、大丈夫だよとか、そういうことはこの先もずっと歌うつもりはないんですけど。悩んでいるまっただ中の気持ち…今悩んでいるんだけど、今はこう思う、でもそれも本当のことか分からないけど…という今を切り取るのがnano.RIPEのテーマと思っていて。かと言って希望のない歌は書きたくないので、ほんの少しでも、遠くに光が見えるような。そういう歌を集めたいと思って、こういうアルバムになりました。

大人になる時の何かを失うことの寂しさや葛藤、そして希望。そういうものが、すごく感じられますね。

それは、あたし自身が成長していないのか、自分でもずっと悩んでいることなので(笑)。十代の子とか、こうなりたいけどなるためにはどうしたら良いか、まずこの学校に進学して、それから何をして…と考えますよね。それと同じ感覚で、ぼくらもちょっとずつ進んできたバンドなんです。

歌詞の言葉遊びがすごく面白い。タイトルは“星の夜の脈の音の”なんとかの~と続きそう。

タイトルは、この中途半端な感じが良いと思ったし、星とか夜は、歌詞に出てくる主要な言葉なんです。みんなもそうだと思うけど、考えたり悩んだりすることって夜が多いと思うんです。あたし自身、夜に詞を書くことが多いので、夜の歌が多いし。脈は、『フラッシュキーパー』の中に《脈拍はいくつだ》という歌詞があって。脈って、脈打つとか、生きているという感じがして、すごく好きな言葉なんです。

同名の曲も収録していますが、これは他の曲とはまったく違って、歌ではなく語りになっていますね。

もともとインストの曲だったのですが、語りを入れたらどうだ?とメンバーから提案があって。それで、アルバムのちょうど真ん中にあるし、心臓となるような曲にしたいと思って言葉を書きました。タイトルの脈も、その心臓とかかっているところですね。

「セラトナ」「ノクチルカ」などは、どういう意味?

蠍座の一等星アンタレスをローマ字で書いて、うしろから読んだら“セラトナ”(笑)。小説『銀河鉄道の夜』に蠍座の話が出てくるのですが、全ての答えは死ぬ時にやっと分かるものなのかなという話で。あたしの歌詞に答えがないのも、そういうことなのかなと。そんなことを歌っています。『ノクチルカ』は夜光虫のこと。昼は家で地味に歌詞を書いて、夜になると華やかなスポットを浴びてライヴをやって…自分が歌う意味について歌っています。

物語や小説がきっかけになることは多いのですか?

多いです。ゲームの『ドラクエ』が大好きで、インディーズの頃は、それきっかけで生まれた曲がいくつもあって。『光る花』はルラムーン草のことだし、『空飛ぶクツ』は、そのままアイテムの名前だし(笑)

アルバムを聴いて、明日はちょっとだけ強くなれそうな気がしました。大げさなものではなく、ちょっとした勇気というか。リスナーには、どんなものを感じてほしい?

あたしが歌いたいことを歌っただけのアルバムです。でもそれを聴いて、私だけじゃなかったんだ、僕だけじゃなかったんだと、共感してもらえたら嬉しい。あたし自身もその言葉で、あたしだけじゃなかったんだ!と思えるし。悩んでる時とかって、こうしなよと言われるよりも、あたしも同じことで悩んでいるんだと言われたほうが安心するし、力になると思うんです。nano.RIPEの歌が、みんなにとってのそういう存在になってくれたら、本当に嬉しいです!
星の夜の脈の音の
    • 星の夜の脈の音の
    • 通常盤
    • LACA-15150
    • 3000円
nano.RIPE プロフィール

ナノライプ:前身バンドを経て2004年にnano.RIPEとなり、地元である千葉・東京を中心に本格的な活動を開始。08年、インディーズレーベルよりミニアルバム『空飛ぶクツ』を発売。草野マサムネ(スピッツ)など多くのアーティストから推薦コメントが寄せられ、話題となる。10年、Lantisよりメジャーデビュー。その後、メンバーチェンジを経て、現在はきみコとササキジュンのふたりで活動を続けている。nano.RIPE オフィシャルHP

OKMusic編集部

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