アメリカの高校に通う17歳。10月にリリースしたシングル「CRAZY FOR YOU」で人気急上昇! 大ブレイク寸前の彼女に、初のアルバムについて訊いた。
取材:山崎二郎
日本で歌手になったら
日本に行く機会も増えるし
音楽体験の始まりを教えてください。
ラジオやディズニーチャンネルの曲とかを3歳から歌い始めて、11歳の時にオーディエンスの前でも歌ってみようかなと思って、お母さんと一緒にバスケチームのオーディションを受けて。ピアノやテニスやダンスとか、いろいろと小さい時からやっていたんですが、歌が一番好きになったんです。
オーディションで受かって、バスケのスタジアムで歌ってみていかがでしたか?
その時はオーディションと違って、まったく緊張しなくてすごく気持ち良かったです。暗いライティングの中、ひとりでステージに立っている感じが気持ち良くて、歌手になりたいと思いました。
本番に強い?
どれくらいすごいことか分からなくて、普通にゲームの前に歌ったという感じで。ただ、マライヤ・キャリーをはじめ、ビッグアーティストが歌っているのを聴いてきたので、“こうやって歌うのがカッコ良いな”とか思い描きながら歌いました。アカペラでも自分の歌にしないとだから。
自分なりに歌わなきゃダメだという感覚が11歳のその時点であったというのは…。
今は弟が11歳でヤンチャなんですけど、その弟がステージで歌えるとは思えないから、振り返れば、私もどうやってできたのかなって(笑)。それからシンガーになりたいと思って、レコード会社とか、いろいろ検索して調べていきました。で、応募したら連絡が来て。連絡が来るとは思わなかったんですよ(笑)。それが今から6年前です。
それまで、日本でデビューすると想像していましたか?
11歳の頃は、“歌えるならどこでもいい”と思っていました。小さい頃は、アメリカと日本を行ったり来たりしていて、小学校からは、夏休みの2カ月だけ、滋賀県の小中学校に通っていたんですね。そしたら、もっと日本に行きたいと思いました。だから、日本で歌手になったら、もっと行く機会も増えるし、お母さんの地元の滋賀県の家族にももっと会えるし、ハーフだから、もっと日本を知ることも自分には必要だなと思っていたので、うれしかったですね。
普段は、どんなアーティストの曲を聴いているのですか?
いろんなジャンルやスタイルの音楽を聴いていて、例えばアメリカで普通に流れているヒップホップやR&B、ポップスだと、ケイティ・ペリーやレディー・ガガとか。自分の年齢的には、アヴリル・ラヴィーンも。他にもコールドプレイのようなオルタナティヴなロックも、父親の影響で聴いています。日本人のアーティストだと、宇多田ヒカルさんやYUIさんとか、小さい頃からよく聴いていましたね。
アメリカの友達には、日本の音楽をどのように説明されているのですか?
仲の良い友達はみんな楽器が弾ける子たちで、音楽が大好きなので、私が日本語で歌っても、言葉じゃなく音楽自体を聴いてくれるので、あまり説明をする必要はないですね。多分、アメリカならではのカッコ良いと思う音楽やスタイルは、日本人からすると分かりにくいところがあるかもしれないし、逆に日本人アーティストをアメリカ人が聴いたら、“え?”と思うような部分はそれぞれあると思いますけど。
カントリーミュージックなどは、なかなか日本人には分からないところですね。
私もカントリーミュージックはそんなに触れる機会がないかも(笑)。カントリーはやっぱり歌詞が大切で、アメリカの最初のカルチャーというか、日本で言う演歌みたいな感じだから。歴史も古いと思いますし。
デビューが決まって、レコーディングは日本で行なったのですか?
はい。たまに、アリゾナやLAでやる時もありましたけど。
学業との両立は大変なのでは?
時間のバランスが難しいですかね。1時間の使い方でもとても大切だから、“歌の練習に使うか? 勉強に使うか?”をいつも考えています。友達とも遊びたいですし(笑)。アメリカはクリスマスやホリデイに家族といるのがメインだから、日本でその時期レコーディングすることにはちょっと抵抗がありますしね。
大学はどうしますか?
いろんなオプションを考えています。ひとつは、日本のインターナショナルな大学。それだと音楽の活動ももっとやりやすくなりますし。もうひとつのオプションは、アメリカのインターナショナル・エクスチェンジ・プログラムで、1年か2年、日本の大学に行って、そこで単位が取れるようにするとか。今やっている活動のためにもなるので、インターナショナル・エンターテインメント・ビジネスの学科を考えています。
ライヴについてはいかがですか?
日本でライヴができる機会があまりないから、やる時は頑張って練習して、パワフルなパフォーマンスをやりたいです。
でも、いきなり『SUMMER SONIC』で何万人を前にパフォーマンスされましたよね。
回数をあまりやっていないのにも関わらず、ビッグなステージを経験していますね。今度はインティメイトな小箱でもぜひ。
はい。インティメイトなのが私も好きです。オーディエンスと一緒に音楽が楽しめるから。大きいところの雰囲気も楽しいですけど。
日本人でもアメリカ人でも
共感する気持ちは似ていると思う
ご自分で楽器の演奏は?
今、アコースティックギターの練習をしていて、それをマスターしたいと思っています。あと、ピアノもちょっとだけ弾けるようになれたらいいなと思っています。今回ワンマンライヴをやるんですけど、自分で作詞作曲した曲『Yours Truly』をアコギで弾きながら初めてやるのが楽しみです。この曲は、男の子の親友に“喧嘩しちゃってゴメン。けど、これからも友達でいようね”というメッセージを込めてクリスマスプレゼントとして贈った曲なんです(笑)
ですよね。歌詞にある《Dedicated to》を調べたんですけど、きっと近い人に向けているんだろうな、というリリックだったので。
《Dear John》というフレーズは、戦争の時、大事な人に多かった名前がジョンという名前だったみたいで、ベーシックなスタイルとして手紙を書く時よく使われるんです。私の友達も偶然ジョンなので、こうやって手紙っぽく曲を作ろうかなと思ったんです。全部自分で作ったのはこれが初めての曲です。
ブリッジのところとか素敵で、初めて作ったとは思えないです。
パワフルな曲も多いから、このアコースティックなテイストも今後期待したいですね。
パワフルでミーニングがいっぱいある歌詞だから、シンプルな曲と良いバランス感ですよね。
ポエトリーはよく書いていました?
学校のイングリッシュの授業や、勉強しながらパソコンや携帯にも書いてます。
「IT’S YOU」も作詞に参加していますね。
英語と日本語が混ざっている曲は作家の方と一緒に作りました。英語が詳しくない人が聴いても分かりやすい英語だといいな。
歌詞の中のフレーズで気に入った部分は?
例えば『MUSIC』だと…《みんなで奏でる music never ends》とか。
“こうなったらいいな”というのはありますか?
聴いている人たちの笑顔から“楽しんでいるな”と分かるのがうれしくて。“伝えられている”ということが分かって気持ちがいいです。
《笑顔絶やさずにいれば Believe me 間違いないよ》というフレーズ。笑顔って嘘をつかないし、その人の人間性が出ますよね。だから、Kyleeさんのライヴでみんなが笑顔になっている光景が浮かんで良いフレーズだなと思ったんです。日本もアメリカも関係なく、いろいろな国のオーディエンスが笑顔になりそうな。
10代のいろんな気持ちにフォーカスした歌詞で、住んでいるところは遠くても、日本人でもアメリカ人でも共感する気持ちは似ていると思います。英語でも日本語でも“ひとりじゃないよ”というメッセージを伝えたかったんです。
震災の時にも、メッセージを伝え続けてくれていましたね。
アメリカにいる時だったから、テレビで観ていると現実味がなくて信じられなかった。友達も心配してくれて、少しでも私たちに何かできることはないかなと、学校で考えていました。学校にはボランティアのクラブもあって、そこでも募金のためにいろんなものを売ったり、自分でもTシャツをデザインしてそれを売ったお金をレッド・クロス(日本赤十字社)に募金したりしていました。本当に少しだけど、それでも力になりたいという気持ちで。
ボランティアのクラブがあるとおっしゃいましたが、何かクラブに入っていますか?
今はクラブに時間を使うのは難しいんですけど、ひとつだけ限られた時間を使うならば、誰かを助けることに使うのがいいかなと思って。ボランティアも、友達と一緒にやっていると友達と過ごす時間も生まれるし、誰かを助けることもできてすごく良い経験になると思うから。
好きなファッションは?
周りの友達もシンプルな格好で、Tシャツにジーンズといった、カジュアルな感じなんですけど、日本で仕事を始めてからはファッションが好きになって、今流行っているものを雑誌で観たり買ったりするようになりました。今好きなスタイルはクールな感じ。可愛いのも好きだけど、シンプルでベーシックな洋服が多いです。モノトーンをベースに色を乗せる感じ。でも、夏はやっぱり、明るい色を着るのが好きです。
友達の間で人気のスターはどんな人?
『ハイスクール・ミュージカル』のザック・エフロンがすごい人気(笑)。ミュージシャンなら、スイッチフットとかが人気かな…
アメリカでひとりで暮らすとしたらどこの街がいいですか?
カリフォルニア、LAかな。ビーチがあって、カルチャーも楽しめるし、インターナショナルな感じが面白いから。それに一番大好きな日本食が充実してる!(笑) ウエストコーストのほうが広い感じがして、住みやすくて好き。ニューヨークはちょっと狭い感じがして、そこまで好きじゃないかな。
あと、写真の腕前がなかなかですね。
ありがとうございます。今、ハマっているので、コンパクト一眼のカメラを買って撮りまくっています(笑)。撮った写真をエディティングしたりもします。
短い言葉も添えてあって面白いし、これからもいろんなことにトライしてほしいです!
1994年5月25日生まれ、米アリゾナ州在住の女性シンガー、Kylee。アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、幼い頃から邦楽洋楽共に隔てなく触れてきた少女が、シンガーとして本格的な活動の舞台に選んだのはここ日本。
弱冠11歳でNBA公式戦の国歌斉唱を務め、09年8月には史上最年少である15歳で『SUMMER SONIC』のステージにてパフォーマンスを披露。破格&異例の出来事が続く新世代ロック・ディーヴァの素顔は、学内で一握りの“honor student(学業優秀学生)”に選ばれるほどの優秀な成績を修めている才女でもある。
10年3月に<DefSTAR Records>より、自身も出演する映画『誰かが私にキスをした』の主題歌に抜擢された1stシングル「キミがいるから」でメジャー・デビュー。一度聴いたら忘れられないエモーショナルな歌声を武器に、ティーネイジャーを代表するシンガーを目指す。オフィシャルHP
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