AIにとって通算9作目のオリジナルアルバムが完成。レーベル移籍第一弾アルバムとなる本作は、AIのキャリアにおける第2章の幕開けを印象付ける、パワーに満ちあふれた意欲作だ。27公演に及ぶ全国ツアーへの意気込みも語ってくれた。
取材:金澤隆志
“ひとりで立ち上がる強さ”が潔いサウ
ンドに結び付いた
“A.I.”が付いていないアルバムタイトルはデビュー以来、今作が初めてなんですよね。
前アルバムが『THE LAST A.I.』ってことで、“A.I.”を付けるのはあれで最後にすると決めていたんです。ちょうどデビュー10周年で区切りとしても良かったしね。移籍もしたし、30歳になったし、ちょうどキリがいいんで。“A.I.”の縛りがなかったのでスパッとタイトルを決められて良かった(笑)
“INDEPENDENT”は“独立、自立”という意味で、楽曲全般にこの言葉に通じる力強さや潔さを感じました。
もともとは『INDEPENDENT WOMAN』という曲があって、その言葉の響きに魅かれて。でも、“WOMAN”だと男の子は買いにくいしな~と(笑)。シンプルだけど力強さを持った、スッキリしたタイトルにしたかったので“INDEPENDENT”かなと。今回のアルバムは曲調的にかなりバラエティーに富んでいるので、タイトルはシンプルにしたくて。“ひとりがいい”ではなくて、“ひとりでも大丈夫”。人に頼ってばかりではなく、自分で立ち上がれる強さを持っていたいという思いが詰まっています。
本作はレーベル移籍第一弾アルバムでもありますが、キャリアにおいて極めて大きな出来事だったのではないですか?
何かがイヤだったということではまったくなくて、単純に“もっと上へ行きたい”って思ったから。だったら、私ともっと上へ行ってくれる人たちと一緒に組まなければそうならない。これまでのまま続けていってもそれはそれで最高だけど、自分が本当に行きたい場所に到達するには、さらに上を目指さなければならなかった。その思いを理解してくれる方たちと出会って、移籍したという感じですね。自分は本当にラッキーだと思うんですよ。自分が本当にやりたいことをできるアーティストというのは少ないけど、私はそれができている。それは前のレーベルでも同じなんですけど。
でも、全てがすんなりと進んでいくわけではないですよね。
そうですね。自分がなぜその曲をやりたいかを説得しなければならなかったり…それがものすごく時間がかかるんですよ。時には社長に直訴して(笑)。だから、今作でも移籍をしたことでまたイチから説得しなきゃいけないのかと思ってたんだけど、すぐに私の意志を汲んでくれて、“それいいね”の連発でね。曲を選ぶ際にも会社の都合とか、大人の事情を一切意識する必要がなくて、純粋に私が好きなものだけを選ぶことができたんです。まったく妥協する必要がなかった。みんな仕事としてじゃなくて、個人的な思いで動いているんだなという印象。このアルバムの作風は、そうした環境によるところがすごく大きいですね。
良い意味でバランスを意識していないように感じたのは、AIさんのテイストがありのままに出ているからかもしれないですね。
“ジャンルに関わらず良い曲が好き”というのが今回はモロに出ていますね。いろんなトラックを直接聴きに行って、“これカッコ良い!”“この音ヤバくない?”みたいなノリで集めた曲だから。これまでは“良い曲だけどライヴで再現できないからやめておこう”みたいなこともあったけど、そういうのは全然意識しなかったし。
歌詞もストレートな表現が多いですよね。
これまでは“人からどう見られるんだろう?”ということをすごく意識していて。“綺麗事言ってるな”とか思われるのがイヤだから、わざと遠回しな表現で書いたり。人の意見で考えがグラグラ揺れるタイプなんです(笑)。でも、今回は言いたいことをそのまんま書いた。“良いことはいいじゃない!”って。歳のせいかもしれないけど(笑)。人に何か言われたとしても“自分は良いことを言ったつもりだし、本当にそう思ってるからいいや”と言えるようになれたのかな。素直にポッと出てきた言葉もたくさんあるし、無理矢理感がない。その分、音や声に関しては結構チャレンジしたものがたくさんありましたよ。
エレクトロ色の濃い「DANCE TOGETHER」を1曲目に持ってきたあたりは、ちょっとした冒険かなと。
1曲目ってアルバム全体の印象を強くイメージさせるので、私はその時々に自分が好きなタイプの曲を持ってきたくて。歌い上げるというタイプの曲ではないけど、すごく心地良いサウンド。エレクトロは何年か前から流行りになっていて、トラックをもらうと大抵エレクトロか4つ打ち系のものばかりで、またこういうのかって飽きてたんです。でも、その中でこの曲だけはズバ抜けて気に入って。エレクトロはやりたかったけど、自分が納得して良いと思える曲がなかったので、やっと最高の曲に出会えたなって。ビートは力強いんだけど、柔らかくてシンプルなサウンド。サビも言葉少なめでシンプル。今までだったら、もっと歌を作り込んだほうがいいんじゃないかなという発想になってたと思うんだけど、今回はさっぱりいこうと。
この曲のプロデューサーTEE FLIIさんは、AIさんの昔からのご友人らしいですね。
ダンサー友達で、昔よくリハに遊びに来てくれたような仲間。最近、“俺のトラックを聴いてほしい”と言われて聴いてみたら、これがまた相当良くてね。才能の有無に有名無名は関係ない。逆に厳しい状況の中で作っている音って、それだけ思いがこもっているし、曲自体が強くて。
その一方で、「Letter In The Sky feat. The Jacksons」では、The Jacksonsとのコラボレーションを実現していますね。やはり思い出深い体験だったのでは?
The Jacksonsは、もう歌が上手いとかそういうレベルじゃない。“えっ! 一緒にやれるってどういうこと!?”って感じ(笑)。マイケル・ジャクソンの兄ちゃんたちだし、全世界が知ってるファミリーじゃないですか。きっかけは、マイケルが亡くなった直後にMUSIC ON!TVで彼らにインタビューさせてもらう機会があって、彼らに会いにアメリカに行ったんです。レコーディングは去年の6、7月でしたね。彼らぐらいビッグになるとビジネス面でいろいろ大変で、やっと契約書にサインしてくれたのがレコーディングの前日(笑)。こっち側のスタッフはみんな“やったー!!”ですよ。
彼らほどのビッグアーティストとなると、サインしてくれるまで本当に実現するかどうか分からないですもんね。
トリビュートライヴに関しても紆余曲折があって、本当に実現するか分からなかったので、その気になったらいつでも彼らがレコーディングに入れるように、曲は先に作ってあったんです。最初はマイケルの『Heal the World』みたいな感じ、あるいはThe Jackson 5のようなバンドっぽいのがいいかなとか思って、マイケルと仕事をしたことがあるプロデューサーにアプローチしたんだけど、どうも違うなって。で、King Davidという、ヒップホップやエレクトロをメインでやっている人の曲を聴かせてもらったらすごく良くて。クラシックのバックグラウンドを持っている人で、彼がピアノで演奏しながら私が歌って一緒に作っていってね。彼の小さなスタジオで地べたに座って歌詞を紙切れに歌詞を書くような感じでした。
The Jacksons側からは曲に関する注文などはなかったのですか?
それがすんなり通って、すぐにOKが出たんです。改めて、こんな共演が実現したのって奇跡ですよね、本当に(笑)
「ハピネス」と「One Love」は、これまでAIさんの数々の曲を手がけてきたUTAさんがプロデュースを手がけていますが。
UTAくんは、音楽的に見ているところがすごく近い。一緒に作業をしていても威圧感がなくて楽しいんですよ。楽しみながら曲を作れるっていうのはすごく大事なことで、それは彼の性格によるところが大きいかな。『ハピネス』は、UTAくんの家で彼と一緒に歌を作り上げていきましたね。
「w/u(ウィズ・ユー)」は、AIさんにしては珍しいキーの低さで、新たな魅力が出ていますね。
一番自分のキーに合ってる曲なんですよ。どんなに寝不足でも大丈夫なほど一番無理せずに歌えるキー。このメロディーがまたすごく良くてね。《u make me strong》というフレーズを日本語にしたかったんだけど、そのニュアンスを上手く置き換えられる言葉が見付からなくて。包容する感じというか。“u make”を“夢”にしようかと思ったけど、それもちょっと違うし(笑)。それでそのままにしておいたんです。メロディーと言葉のマッチがあまりにも良すぎたので。