【椎名慶治】変わり続ける椎名慶治の
歌で結ぶ縁と未来

歌がつなぐ縁。愛でつながる縁。椎名慶治とリスナーとをつなぎ、縁を結ぶミニアルバムが完成した。彼が出会ってきた音楽への情熱が生む7つの楽曲は、どれも熱い想いにあふれる。椎名とリスナーを結ぶ今作について話を訊く。
取材:えびさわなち

いきなりですが、新作であるミニアルバムのタイトル“I & key EN”の意味をうかがいたいです。これ、造語ですよね?

実は漢字のアルバムタイトルにしたかったんです。四字熟語とかで。SURFACEから考えてみても、ソロになってからも、ずっと横文字のタイトルだったんですよね。俺自身はよく“日本語の歌詞の使い方が巧みだ”とか“歌詞が面白い”と言われていて、日本語の言葉使いを評価されているのに。だから、今回は漢字で考えていたんです。例えば“躍動”とか、“絆”とか。そういう意味のある言葉を使いたくて考えている最中に、知人が“こういう出会いも全て合縁奇縁だよね”ってさらっと言ったことがあって。その言葉はいいなって思ったので、辞書で調べたら、この四字熟語は珍しく3種類の書き方があるんですね。“合縁奇縁”に“愛縁機縁”、それに“相縁機縁”。タイトルにしても答えが3つある。それで、漢字にしたらこの四字熟語になるけど、表記を横文字っていうのにしたんです。だからね、僕の中では“I & key EN”は英語ではないんです。感覚としては。

四字熟語だ。

そう! あくまで。僕自身の活動は“I”で始まって、SURFACE時代にファンクラブのライヴで“EN”をタイトルに使ってきた。それで僕と、鍵(key)になる人とがつながって、それが縁(EN)になるっていうイメージが見えたので、このタイトルにしたんです。…まぁ、長く話してきましたが、結局は英語です(笑)

確かに(笑)。でも、その言葉は“らしいな”という印象があります。そんな今作の制作はどんなふうに向き合ってきたのでしょう?

毎回、こうしよう、ああしようって意識して作るわけではないので、その時その時の自分の気持ちが詰まっていると思うんです。歌詞を書こうと向き合えば、感情が乗ってきちゃうので、それが答えとして楽曲には出ていると思います。改めて感じるのは、いい状態だったんだろうなっていうことですね。

パーソナルなものを描くというより、外へと意識が向いているイメージがありますよね。それこそが“いい状態”。

そうですね。楽しかったんです、本当に。ミュージシャンとしては一歩一歩、いい状況になっている感覚はあるんですが、悪い意味のものもあって。

悪い意味?

“俺っぽいな”っていうカラーができてきたこと。SURFACEの頃にもあったんです。それを1回リセットしたはずなのに、また椎名慶治になって、俺はこれだっていうかたちが見えてきちゃったところがあるんですね。それは嬉しいことでもあるんだけど…例えば、ラジオで曲が流れた時に、曲タイトルのコールもないのに“イントロを聴いただけで椎名さんって感じました”ってファンの声をもらった時にも思ったんです。俺と言ってないのに、俺と分かってしまう。俺のカラーが滲み出てるんだなって思ったんですね。またこれで変わらなきゃいけないなって感じて。嬉しい半面、そこに留まりたくないって思っちゃう。変わらなきゃって思う部分もあれば、残していいところは残して、色濃くしたい部分は色濃くしたい。同じような曲は作りたくないんですよね。ひとりのアーティストとして。そのバランスは難しいし、次の作品への課題になっていくと思いましたね。

その葛藤をしながら完成した今作。確かに新しい椎名慶治像も出てますよね。特に『仮面ライダーフォーゼ』のエンディング曲の「Giant Step」や、東方神起の曲なども手掛けるAKIRA氏の編曲の「byte×bite」などで。

今回はやりたいものだけを詰め込んだんですね。意識したのはグルーブやノリで。今の自分が好きで聴いているような音楽と俺のコラボというか、今の椎名慶治なんですよね。その中で出てきたのが『byte×bite』だった。マイケル・ジャクソンとか、K-POP的なソウルある曲なんですけど、実はこういう曲が好きなんですよね。俺自身は俺らしいんだけど、ファンの人は知らない一面だと思うし、この曲を入れられたのは嬉しいですね。『Giant Step』に関しても、Astronautsで一緒のMayちゃんが彼女のバージョンを歌っているんだから、俺も歌いたいと思って、椎名慶治バージョンを作っていただいたんですけど。原曲とは違う、男っぽい感じに仕上がって、新しい自分の歌に出会った感覚は強いですね。でも、新しいのは一部分だけ。全部を壊したいわけじゃない。ただ一部分変わったものを入れて、それを軸にまた次へつなげていく。点と点をつないで椎名慶治という線を作っていきたいと思っています。

逆にアルバムの中盤にある「お節介焼きの天使と悪魔と僕」は、椎名慶治節を感じさせますよね。普遍の“椎名慶治”というか。

最初からキャッチーでシングルっぽいっていうのをテーマに作った曲で、俺がシングルにするならこういう曲をっていうのは念頭にありましたね。でも、“いい曲を作りたい”って思って作ってるんです、どの曲も。いい意味で下世話で歌謡曲っぽいのは大切だと思っているんですよね。

椎名くんの思う“いい曲”ってどんな曲?

古臭くならないもの。普遍的であること。どんな時代でもその時の流行りの音ではなく、何年経っても伝わる、届くように作る。流行り廃りではない言葉、流行り廃りではない音。そこだと思いますね。

そんな『I&key EN』を引っ提げてのツアーも決定しましたが、どんなライヴにしようと考えてますか?

しっとりと聴かせるライヴにはならないですね。勢いのあるアルバムだし、盛り上がって、夏らしいライヴになるといいなと思っていますね。バンドともお客さんとも一緒に楽しみたいです。
I & key EN
    • I & key EN
    • BSCL-0006
    • 1890円
椎名慶治 プロフィール

シイナヨシハル:1998年、SURFACEのヴォーカリストとしてシングル「それじゃあバイバイ」でメジャーデビュー。10年6月にSURFACEが解散するが、同年11月にミニアルバム『I』でソロデビュー。ソロ活動と平行して結成したAstronauts(May’n&椎名慶治)では『仮面ライダー フォーゼ』のエンディングテーマを歌い、さらにタッキー&翼への作詞提供など、活動の幅は多岐にわたる。現在、高橋まこと(ex:BOØWY)率いるJET SET BOYSのヴォーカルとしても活動中。2018年5月27日にアーティスト活動20周年を迎える。椎名慶治 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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