【小南泰葉】初めまして、小南泰葉は
嘘つきです。

メジャー1stミニアルバム『嘘憑キズム』が完成! 生と死を真正面から捉えた彼女の世界観を、錚々たるサウンドプロデューサーとミュージシャンが音楽に昇華した、名刺代わりにしては重すぎる傑作の誕生だ。
取材:高橋美穂

まず、メジャーデビューというのは、小南さんにとって目指していたところではあったのでしょうか?

20歳までは自ら音源を送ったりもしていたんですけど、一旦音楽を辞めて、25歳から再開した時は、一回辞めたことを掘り起こすのは、すごく恥ずかしいことだと思っていたんですね。自分のやってきたことや発言に責任をとれない人が大嫌いだから。だから、どん底から始めるしかなくて、オリジナルなんて作れないから、恐る恐る人の曲をカバーしてYouTubeにアップしたんですけど、レコード会社の人とかが連絡をくれたり、再生回数が上がったりして、そういうことから、もう一回歌わせていただけないでしょうかっていう気持ちになって、またオリジナルを書き始めたんです。それでも、自分が救われたくて曲を書いていて、有名になりたいとかはまったく思っていなかったんです。でも、お手紙をもらうようになって…手紙って血とか涙とか汗とか毛とかが付いているし、その人の命を切り取って書いてくれるものじゃないですか。私なんかに無防備に、自分はこういう人生を歩んできました、こういうことがしんどいです、家の扉を開けることができないです、でも小南さんの音楽を聴いて、今日は散歩に出ることができました…とかって伝えてくれる内容も多くて。それで、自分が家の扉を開けるために始めた音楽だけど、自分と同じような場面で、同じようなカードを切ってきた人はいて、そういう上手く生きられない人たちが、自分に関わろうとしてくれることが、すごく嬉しくて。去年一年間って、『FUJI ROCK』にも出させてもらって、いろんな経験をさせてもらったんですけど、その都度、覚悟が要って、目隠しされたまま暴走している車のボンネットに貼り付けられているような感じだったんです。でも、そういう気持ちをみんなのお手紙が払拭してくれたんです。それで、メジャーデビューを決めた時点で目隠しもとれたんですよね。

メジャー第一弾として、どんな作品にしようと思いましたか?

“嘘憑キズム”ってタイトルなんですけど、私は自分の人生は嘘だらけだと思っていて。それをそのまま出しただけの…“初めまして、小南泰葉は嘘つきです”っていうCDなんですね。

過激なようでいて、1stらしく名刺代わりな内容というか。

そうです。自分はずーっと嘘をつき続けてきたから、それを人に気付いてほしいっていう気持ちがあって。人間って、笑っていないと共存できないですよね。私は平和主義だからとことん笑うし、ステージを降りてからお客さんと話す時も笑顔なんですけど、家に帰ってから号泣するんです。しんどくて。ただ笑うことが自分にとって武器だったんです。中学の時も高校の時も、自分を殺して笑ってさえいれば、物事は円滑に進むから。ただ、去年は悩んじゃったんですよね、素の自分って何だろうって。よく、家に帰ってくると仮面をとれるとか言うじゃないですか。女の人だったら化粧を落とした時とか。でも、私は絶対そうじゃないと思っていて。去年の8月から初めてひとり暮らしをしているんですけど、集団が苦手なくせに、ひとりで寝るのが怖くて。そういう時って、発狂して泣くんですね。でもそれが、寝る時だけに駆り出されている嘘の自分なのか、素の自分なのか、分からなくて。だから、家に帰っても平穏は待っていないんです、私の場合。ただ、ステージの上では不思議な瞬間があって。自分の皮をべろんって剥いで、全神経が剥き出しになったように、空気やライティングもヒリヒリ痛く感じるんです。それは素の自分とは言えないけれど、すごく自分を好きになれる瞬間なんですよね。感覚にすると大火傷なんで、24時間続いたら死んじゃいますけど、自分ってこういうふうに成り立っているって気付いたんです。だから今作は、私は本当は血塗れで、助けてほしいっていう気持ちを、ちょっとでも分かってほしいっていう、すごく狭い入口の内容なんです。

世界観だけではなく、音そのものもインパクトありますよね。

私はアレンジができないんで、プロデューサーに世界観を伝えるんですよ。『藁人形売りの少女』なら、陰鬱な世界に裸足の少女がいて、誰も相手をしてくれなくて、幻聴の中で死んでいかなければならないんだけど、0.1ミリでいいから光を差したい…そういうのお願いします!っていう。ここでギターがギャンってくるんですよ、とか言えたら分かりやすいんでしょうけど、こういう伝え方だと向こうも賭けに出ないといけないですよね。

頭の中の世界観とズレる場合もあるんじゃないですか?

めちゃめちゃあります。そういう時は、めっちゃ時間がなくて、進んでるプロジェクトでも、机ひっくり返します。

にしても、錚々たるプロデューサーやミュージシャンが参加されていますよね。

特に、『藁人形売りの少女』なんか、私がEMIに来て初めてやったレコーディングなんですけど、あとから思えば大御所ばっかりで。こんな変な曲を、大の大人が演奏してくれるのは、ほんとに不思議なことで。その時は、これからメジャーでやっていくんだっていう思いと、ずっと闘っていました。申し訳ないですけど、いいんですか?っていう。自分大好き人間で、有名になりたくて、お金を稼ぎたくてっていうタイプだったら、もっとああいう状況を楽しめると思うんですけどね。周りから見たら私はすごくラッキーだと思いますけど、ほんとに周りのスタッフが一日一日サポートしてくれたんですよね。売りにくいとも思うんですけど(苦笑)、私の存在そのものを認めてくれて、脚色もしないで出してくれたので。これからはその恩返しをしていきたいですね。

きっと、今日話していただいたような、小南さんのありのままの音と言葉を発信していくことが、一番の恩返しだと思いますよ。

それができたら本当に奇跡だと思うんです。奇跡は起こしたいと思うし、きっと起こせると思います。
嘘憑キズム
    • 嘘憑キズム
    • TOCT-29003
    • 1800円
小南泰葉 プロフィール

コミナミヤスハ:兵庫県出身のシンガーソングライター。2008年頃から大阪を中心にライヴ活動を始める、2010年6月、1stミニアルバム『UNHAPPY BIRTHDAY』を限定生産1000枚でリリース。同年8月にライヴショーケースフェス『MINAMI WHEEL』に出演。デビュー前にもかかわらず客席が満員となり、入場規制がかかる。2011年、シングル「藁人形売りの少女」「Soupy World」を発売。同年7月開催の『FUJIROCK FESTIVAL』に出演し、活動拠点を東京に移す。ダーティで退廃的な世界観を綴る詞と中性的な歌声、ギターロックからストリングサウンドまで幅広く用いた楽曲で反響を呼び、2012年もっとも活躍が期待できる新人アーティストを選出発表する『Japan Sound of 2012』に選ばれる。2012年5月にミニアルバム『嘘憑キズム』でメジャーデビュー。同年9月に発表した1stシングル「Trash」の表題曲とカップリングの「希望」が映画『アシュラ』の主題歌に起用された。同年12月、『COUNTDOWN JAPAN 12/13』に出演。2013年5月、初の1stフルアルバム『キメラ』をリリースした。オフィシャルHP
小南泰葉 Official Twitter

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