L→R 恵梨香(Cho&Gu)、千晶(Vo&Gu)

L→R 恵梨香(Cho&Gu)、千晶(Vo&Gu)

【ひいらぎ】ライヴで見せるポップさ
とハッピーな感じ

ひいらぎが現在のテーマとして掲げている“ポップでキャッチー”をかたちにした、自身2作目のアルバム『ドーナツの穴』。より自由に楽曲制作に臨むことができたという本作について、紐解いていく。
取材:ジャガー

1stアルバム『地平線と秋の空』はバリエーションに富んだ内容になっていましたが、今作『ドーナツの穴』は楽しい雰囲気の漂うものが多いですよね。

恵梨香
今回はひいらぎのライヴで見せるポップさというか。ハッピーな感じを前面に出していきたかったので、明るい雰囲気の曲になりましたね。ちょうど上京したぐらいから曲作りをしていて、環境が変わってすごく刺激的な毎日で…“あの東京に住んでる自分”っていうのもありましたし、“これが山手線! これが渋谷!”って(笑)。実家を離れてひとりの時間が増えて、歌詞もいっぱい書けたので、本当にスムーズに曲作りができていた時期ではあります。

収録曲のタイトルのキャッチーさからして驚く人もいるんじゃないでしょうか?

恵梨香
今までは言葉を大事にするっていうのが、自分の中にすごいあって。日本語の響きであり、その言葉の持つ意味を踏まえながら、言葉選びにも慎重になってたんですけど、それと同じように言葉遊び自体も好きなので、こういうアルバムにするんだったらタイトルからして楽しい感じにしたいなと。タイトルありきで生まれた曲もあったり。

「エキサイティングマンデー」がそうですね。電車のアナウンスで“エキサイティングマンデー”と聞き取れる部分があったとか。

恵梨香
そうなんです! いまだに何て言ってるのか分からないんですけど。

調べてみたんですけど、“expecting mothers=妊婦”じゃないかなと。

千晶
エクスペンティグマザーズ。
恵梨香
エキサイティングマンデー…聞こえません?

(笑)。空耳から一曲誕生するのがすごいですよ。《オーイェイ》《ランランラン》など、ライヴで一緒になって歌いたくなるフレーズも盛りだくさんで。

千晶
ぜひ参加してほしいですね。
恵梨香
歌うとなると最初は恥ずかしさもあったんですけど、だんだん楽しい気持ちのほうが勝ってきています。

今作では、千晶さんも「あなたがくれたもの」「晴れた日曜日」の2曲を作詞作曲されていますね。

千晶
「あなたがくれたもの」は両親へ向けた感謝の気持ちを込めて作ったので、メロディーなしで歌詞を読まれると恥ずかしいですね(笑)。それぐらいちゃんと自分の気持ちをかたちにできました。「晴れた日曜日」は今までにない曲調のものを作りたいなと思ってレゲエ調に。ギターのカッティングから考えて、その後メロディーを付けて、歌詞を付けてっていう工程で作りました。

お互いの楽曲を聴いて感じたことはありますか?

恵梨香
やっぱり自分とは全然違う方向に矢印が向いてるなっていうのは感じました。それは前作でも感じたことなんですけど、自分にはない視点だからこそ、ひいらぎとしての幅を広げていけるからいいなって素直に思います。
千晶
言葉遊びがすごく前面に出ている曲が多いので、渡してもらった時にワクワクします。結成した当初のような感覚っていうんですかね、一曲一曲待ち遠しくて。“早く歌いたいな”“どういうふうになっていくんだろう”って、歌ってても楽しかったですね。

自分たちも楽しんで制作に臨めたと?

恵梨香
そうですね。試してみたいことが増えてますし、プロデューサーの浅田信一さんがちゃんと受け止めてくれるので、自分の意見も言いやすくて。アイデアをすぐに試せたり、逆に浅田さんから提案されたことに乗っかってみたり。いろいろやってみることができたので、デモからだいぶ変わったものもあります。例えば、「タラッタラッタ」はもっとバンドサウンドがしっかり出てたんですけど、おもちゃ箱をひっくり返したような曲にしたいって言ったら、ドラムをばらして、スネアを小太鼓、バスドラを大太鼓、シンバルを手持ちにして鼓笛隊にみたいになって。ドラムの吉田さん(吉田佳史/TRICERATOPS)がコーチになって、鍵盤のはっちゃん(平畑"はっちゃん"徹也)と千晶さんで…これは本当にレコーディングなのか?って思っちゃいました(笑)。

また、パワフルに歌われている「自分ルール」みたいな曲があると、アルバムにグッと締まりが出ますね。

恵梨香
誰しもが持っている心の闇…そこまではいかなくても、あまり見せない部分を歌うことも大事だと思うので。そういったところを表現できるのがアルバムの良さですし、カッコ良い一面を感じてほしいです。
千晶
キメがすごく気持ち良くて、違う楽器が入ってくることによって、歌い方も微妙なニュアンスが変わってきたりして、ギター二本とは違った味わいがあると思います。

恵梨香さんがメインで歌われている「太陽と陰」はいかがですか?

千晶
デモでは自分が歌って、恵梨香にハモってもらってたんですけど、作った恵梨香自身が歌うことでよりリアルさが出る曲なんじゃないかなって。自分と恵梨香とでは声質がまったく違うから、メインが変わると印象が変りますね。

今作では唯一、切なさを滲ませている「九月」ですが。

恵梨香
路上時代からずっと歌ってきた大事な曲です。風景が見える歌もあまりなかったですし、時間経過が綺麗に流れている曲でもあるので、いろいろ想像しやすいと思います。

最後に彼を傷付けようとするんだけど、悲しんでいたのは他でもない自分だったというのが何とも言えませんね。それだけ相手のことが好きだったんだと気付いた時の惨めさといいますか。

恵梨香
友達の実体験をもとに書いたんですけど、何言ってるか分からないぐらい泣きながら電話してきて、“相手を傷付けたくて嫌なことを言ったのに、相手はごめんねって言うだけで自分はすごく泣いてた”っていうのを聞いて、すごいなと思ったんです。そういう経験がなかったし、最後の最後に傷付けたいって女の子らしい発想じゃないかなって。一人称も珍しく“私”にしてみました。

締め括りが「明けゆく空」っていうのもいいですね。

恵梨香
いろんなことがあるけど、それでもひいらぎはみんなの全てを受け止めたいんだよっていうメッセージを込めて、「明けゆく空」をアルバムのラストに持ってきました。この曲自体にすごく包容力があるので、大切に聴いてもらいたいです。
『ドーナツの穴』2012年09月26日発売Sony Music Records
    • 【初回生産限定盤(DVD 付)】
    • SRCL-8123 〜4 4000円
    • 【通常盤】
    • SRCL-8125 3000円
ひいらぎ プロフィール

千晶(Vo&Gt)、恵梨香(Cho&Gt)からなる、札幌・路上ライヴ発の女性アコースティック・デュオ。2000年10月、愛美を含む3人組アコースティック・ユニットとして“柊”を結成。2003年12月、東京にて初のライヴを決行。その後も路上を中心に積極的にライヴ活動を続けるが、2005年10月の5周年記念ワンマン・ライヴを最後に解散。2006年 10 月に活動を再開し、2008 年2月に<Sony Music Records>と契約。2009年2月にシングル「みず」でメジャーデビューを果たすも、2009年7月に愛美が卒業。千晶・恵梨香の2人で活動を開始し、2009 年8月にZepp Sapporo でワンマン・ライヴを行ない、新生・ひいらぎとしてスタートを切る。温かみのある歌声とサウンドに注目が集まり、2009年8月にリリースされた2ndシングル「かけら」が好評を得る。2010年10月、1stアルバム『地平線と秋の空』を発表。アニメ『夏目友人帳 肆』オープニングテーマの「今、このとき。」、アニメ『もやしもん リターンズ』 エンディングテーマの「最近」など数枚のシングルリリースを経て、2012年9月に2ndアルバム『ドーナツの穴』を発表。しかし、2013年11月の結成13周年記念ワンマン・ライヴ『いつもありが十三キュー!』ツアー最終日、札幌公演をもって惜しまれながら解散した。オフィシャルHP
恵梨香 Official Twitter

OKMusic編集部

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