【椎名慶治】我武者羅な椎名慶治の渾
身を聴け!

2013年、デビュー15周年を迎える椎名慶治が記念すべきアニバーサリーイヤーの幕開けに届けるニューアルバム『S』。Shiinaの“S”であり、Soloの“S”、Singerの“S”、SURFACEの“S”などなど、彼を取り巻く言葉の多くの頭文字となるアルファベット1文字を冠したこのアルバムは、これまでの彼の作品とは違った椎名慶治を感じさせる。一体その変化とは? 今作に至るまでの想いや、活動の中で感じたこと、自然体の彼が直面した変化の瞬間を探る。
取材:えびさわなち

久々のフルアルバムですが、実はこの前に出ているミニアルバム『I & key EN』がフルアルバムっぽかったから、それほどの久々感もないイメージがあって…。

そうなんですよね。ミニアルバムなんだけど、7曲入りのわりには充実していて、内容も濃かったですからね。だからね、今回のアルバムが2ndフルアルバムなんだけど、2枚目とか、そういう数字を言わないほうがいいのかなって思ったりもしますよね。ミニとかフルとかも含めて。アルバムはアルバムって言えばいいよね。自分でも、2ndを作っている気はしていなかったですから。自分自身も3枚目のフルアルバムを作っているような感覚でやっていましたからね。

そうなると、いわゆる“3枚目のアルバムのセオリー”みたいなものも、通じているような印象になりますよね。

そうそう。

1枚目はこれまでの自分の名刺代わり。2枚目はそこから派生した音。そして、3枚目で新しい可能性を見せる、というか。

うんうん。今回、ちょっと変わったよね。音にしても詞にしても。そんなに変化を求めて作っていたわけではなかったんだけど、自分の中でも何かが変わったのかなってことは思った時期だったのかなって。ただリリックは変わったよね、すごく。

これまでは自分のことを聞かせていたのが、今回は語りかけたり、投げかけてる感覚がありますね。“どうかな?”とか、“こう思うんだけどさ”というかたちで。

それは多い。完成してから改めて聴いて、同じことを感じた。問いかけているなって。でも、本当に意図的なものではなくて、次の世界を探しているような部分はあったのかなって感じる。それは書いている時には自覚していなかったんだけど、今になって思えば…という変化ではあるのかな。

あと、変化と言うと、今回の楽曲はすごくバンド感があるなとも感じました。

そうそう。不思議なんだよね。生演奏の曲は4曲しかないんだよ、実は。あとはアレンジャーに任せて、打ち込みで作った曲なのに、俺も聴いていて、バンド感があるな、ライヴっぽいなってことは感じたんだ。ライヴでのビジョンが浮かびやすい音になったなってことも感じたし。でも、意識したわけではないし、バンドっぽくしてくれって話をしたわけでもない。変化したとしたら、本当に気付かないくらいに自然だったんだと思う。何か変化するきっかけがあったとしたら、それは“気負い”かもしれないかな。

気負い?

1stアルバムの『RABBIT-MAN』を、今回の制作を前に聴き返しちゃったんだよね。客観的に聴いたら、クオリティーが高いな、いいアルバムだなって感じ入ってしまったんだよ。それでこのアルバムよりも劣るものは作れない、もっといい作品を…って考えちゃったら、それが気負いになってしまった。メロディーと言葉とサウンドが絡み合わないとっていう葛藤は多かったな。

確かに『RABBIT-MAN』を作った時のインタビューでも“これを超えるだけの作品を作らないといけないっていう指針になった”って話をしていましたよね。

そう、まさにその通りで。だからこそ、その想いは強くなったかな。でも、自分としては『RABBIT-MAN』を超えたと感じているけどね。この『S』は。

『I & key EN』のツアーも『S』の変化のきっかけのひとつ?

アルバムを作っている時に、あのツアーが何かしらかのきっかけになったとは思っていないんだけど、でもあのツアーを経験していなかったら作っていないアルバムだなというのは分かる。すごく影響を受けたライヴだった。楽しいよりも辛かったし。バンド間の仲の良さも出ていたし、ライヴとしてはすごくいいライヴになった自信もあるんだけど、実は俺自身は絶不調だったんだ、精神的に。だけど、このツアーを絶不調ながらもいいものにできたなら、俺の中で何か変化がある気がするってことをマネージャーとも話していたんだよね。それが終わって、いいツアーにできた。だからこそこのアルバムになったとは思う。

ライヴに来た人たち、バンドのメンバー…絶不調の椎名くんを支えてくれた人たちがいたからこそ、今回のアルバムは内側に投げかけるのではなく、外へ、聴く人へと投げかけるメッセージになっていったのかもしれないですね。

その言葉には納得する。無意識ではあったけど、そうかもしれない。あれだけ辛いライヴを乗り切れたのは、バンドのメンバーやスタッフ、それにお客さんたちの存在だったから。その気持ちは自然に楽曲に投影されていったのかもしれないね。本当に我武者羅に作っていたから。誰よりも自分を納得させるアルバムにしたいっていう気持ちを動力に動いていたから。何よりも自分を納得させて作るのが大切だってことを感じながら作っていたからこそ、出てきたメッセージだったんだろうね。

2013年はこのアルバムで幕を開ける椎名慶治ですが、どんな年になりそうですか?

2012年は『I & key EN』を作りながら、May’nちゃんとのユニットのAstronautsが仮面ライダーフォーゼの音楽ユニットとして動いていたし、『しろくまカフェ』の主題歌のJPくんの曲に歌詞を提供したりもして、活動が広がってきているので、2013年も広げていきたいよね。それにデビュー15周年の年でもあるから、面白くしていけたらいいなって思っています。期待していてください!
S
    • S
    • BSCL-0007
    • 2940円
椎名慶治 プロフィール

シイナヨシハル:1998年、SURFACEのヴォーカリストとしてシングル「それじゃあバイバイ」でメジャーデビュー。10年6月にSURFACEが解散するが、同年11月にミニアルバム『I』でソロデビュー。ソロ活動と平行して結成したAstronauts(May’n&椎名慶治)では『仮面ライダー フォーゼ』のエンディングテーマを歌い、さらにタッキー&翼への作詞提供など、活動の幅は多岐にわたる。現在、高橋まこと(ex:BOØWY)率いるJET SET BOYSのヴォーカルとしても活動中。2018年5月27日にアーティスト活動20周年を迎える。椎名慶治 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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