【ゆず】新境地を切り拓き続けるゆず
の決意が詰まった新作
ファンタジーにすることによって 重い
メッセージも昇華されていく
「砂漠のメリーゴーランド」は60〜70年代のテイストが斬新な曲ですね。この曲はどんなきっかけから?
北川
「LAND」を作った時に、村上 隆さんにジャケットをお願いしようと思って、自分なりにデザイン案を勝手に作って、文に起こしたんですよ。その時、砂漠の中で回り続けるメリーゴーランドのビジョンが出てきた。これに物語を付けて音で表現しようと思って、ピアノで作っていきました。
そもそも村上さんにジャケットをお願いしようと思ったのは?
北川
村上さんがカタールで個展をやっていて、出展した作品の写真を見て、「LAND」という曲とカタールでのいくつかの作品とがリンクすると思ったので、お願いしました。
岩沢さんの歌声もハーモニーも新鮮でした。
岩沢
初期の頃の、北川が作ってきた曲に無理矢理ハモっていく感覚に近かった。ともかくまずハモってみようと。アコギのストロークの感じとか、ライヴが見えるというか、演奏する姿が見えてくる曲でもありました。しゃかりきになって弾いてるんだけど、どこかクール。力強さと切なさもあって、悲しみだけの曲ではない。
北川
この曲も東日本大震災の影響は大きいですね。僕は今回、ファンタジックな作品にしたかったんですよ。そのまま伝えると重苦しくなるメッセージも、ファンタジーにすることで昇華されていくんじゃないかなって。
メリーゴーランドというモチーフも象徴的ですね。
北川
今回、“メリーゴーランド”という言葉が「LAND」「LOVE & PEACH」など、あちこちに仕掛けのように入っています。3拍子の曲が多いんですけど、メリーゴーランドが回っている感じとワルツのもの悲しい曲調とがマッチするかなと。
「ゼラニウム」や「灯影」もレクイエム的な作品ですよね。「ゼラニウム」はどんなところから生まれたのですか?
北川
2011年10月に東北で握手会をやったんですが、その時に夫婦でゆずの大ファンだったという女性が、亡くされた旦那さんの写真を持ってきていて、いろいろと話してくれて。僕も身近な人たちとの悲しい別れを経験しているので、震災のことだけでなく、いろんな人に届くレクイエムを作りたいなって。メロディーが出てきたのは12月のホノルル・マラソン当日。朝3時に出走準備をしなければいけなかったんですが、寝れずにいたらDメロが浮かんできて、走る前に書き始めて。最初は曲の内容があまりにもパーソナルすぎたんですが、プロデューサーが大幅に組み替えるアイディアを出してきて、最終的にはより広い普遍的な歌になりました。いろんな別れを経験した人たちの心にリンクできるんじゃないかと思って、言葉とメロディとが一体化して魂が昇華していくイメージで作りました。
「灯影」も歌がじわりじわり入ってくる深みのある曲ですが、どんなところから生まれた曲なのでしょうか?
岩沢
最初はレクイエムを書くつもりはなく、ロックでもポップスでもクラシックでもなくて、面白い変拍子や転調ができないかとつらつらと書いていったら、こうなりました。個人的にも周りでもいろいろあり、レクイエムの方向に向かっていったんですが、自分だけの鎮魂歌みたいなものにはしたくなかったんですよ。ドーム公演後に着手し始めて、ツアー中も模索し続けて、最終的に“乗り越えていこう”とか“頑張りましょう”という言葉はいらないな、悲しいですって言えばいいんだなっていうところに到達した。北川も言ってましたけれど、答えはいらないというところに行き着くまでに時間がかかりました。
それぞれが同じ方向を向いて作っているのでは?
北川
作品で呼応し合ってる感覚はありましたね。僕が発した曲に対して、岩沢が曲として返してくるみたいな。言葉はないんですが、音楽を通してのやりとりはあったのかなと。
アルバムラストの「ムーンライトパレード」も「LAND」に通じるサイケデリックなテイストが詰まった曲ですね。
北川
これも村上さんとのやりとりがきっかけで生まれた曲ですね。村上さんから上がってきたアートワークが凄まじくて、すごい感動して新たな作品のイメージが沸いてきたんです。弾き語りで作ることが多いんですが、その時期にインフルエンザにかかって歌を歌えない状態だったので、頭の中でイメージを膨らませて、脳内にモチーフを点在させて、それぞれを研ぎ澄ませて接合していく手法で制作した…ケガの功名じゃないですけど、熱でトリップしていたからこういう曲ができたのかなと。幽体離脱してパレードに行くストーリーを映像化して、その映像をスケッチする感覚で言葉で表現した。
アルバムタイトルは「LAND」という曲名と同名の“LAND”ですが、そもそもこの単語はどこから?
北川
自分でもよく分からないんですが、「LAND」という曲を作ってて、“ラーンド!”って叫んだんですよ。で、これしかないかなって。日本という島国でどういうふうに生きていくかというメッセージにもとれるし、ディズニーランドとかテーマパークのファンタジックな感じとのダブルミーニングにもなっていて、ちょうどいい言葉だなと思って。
岩沢さんはこのタイトルについては?
岩沢
北川からこれは“LAND”でしょ! っていう確信にも近い提案があったので、それをそのまま受け取りました。
本アルバムを作って、新たに発見したことは?
岩沢
今回、熟成させた曲が多かったんですが、自分たちの中にしっかり入っていると、よりいろんな対応の仕方ができるんだなって感じました。この時期にできるべくしてできた作品なんじゃないかと思ってます。
北川
震災以降、やることが絞り込まれてきた気がしますよね。何もかもできるわけじゃないし、自分たちにできることは音楽だなって。その最新のかたちが、この『LAND』ですね。
- 『LAND』
- SNCC-86924
- 2013.05.01
- 3000円