【片山 遼】儚い夏のワンシーン
2年振りのシングルをリリースしたばかりのシンガーソングライター、片山遼。そこには閉ざした心の扉をノックするような切なくて温かい世界が広がっているーー。
取材:山本弘子
両A面シングルが発売されましたが、夏の情景が浮かぶ「かくれんぼ」はどんなふうに生まれた曲なのですか?
自分がやっているラジオのレギュラー番組で、リスナーのみなさんからキーワードを募集して曲を作るコーナーがあるんですけど、“夏”がテーマだった時に作ったんです。俺、今まで夏の曲って一番自分に合わないと思っていて…だから、この企画がなかったら、未だに夏の歌がないかもしれない(笑)。で、夏の曲だから曲調は疾走感のあるものにしようと思って…ただ、歌詞は夜の神社や公園で友達と花火した思い出を書こうかなと思ったんです。そしたら《忘れそうになるなぁ、君との約束 数えきれないほど一緒に笑ってた》っていう冒頭の2行が書けたんです。で、自分が好きなアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』で描かれている風景が曲の持つイメージと重なるなぁと思って、それに寄せて書いた歌詞でもあります。
夏の曲が似合わないと思っている片山さんだから、打ち上げ花火じゃなく、線香花火が出てくるわけですね(笑)。
そうです、そうです(笑)。夏の儚いイメージ。懐かしい感覚のある曲だから、小さい頃に遊んでいた“かくれんぼ”っていうタイトルにしたんですけど、自分の中でもいろいろな解釈がある曲なんですよ。“ずっと隠したまんまの想いもあるんだよ”っていう気持ちも込められているし。
この曲はバンドサウンドでのアプローチですよね。
はい。路上で弾き語りする時以外は、自分はアコギを弾いてバンドスタイルで演ることが多いんですよ。でも、アコギでやってますけど、よく“コード進行がシンガーソングライターっぽくないよね”って言われるんです。それは父親が家の中でジャズを流している環境で育ったことや、自分自身、R&Bやロックとか、いろんな音楽を聴くからだと思うんですけど。
なるほど。「夢ノ扉」のほうは、片山さんが日々の中で想うことや葛藤、願いをストレートに歌った曲なのかなと。
ストレートですね。奥に秘めているものは「かくれんぼ」と一緒で、誰もが抱えている想いを歌いたいなって。目指していることに自信がなかったり、疑問を感じていたり、諦めようかと思っている人ってたくさんいると思うんですけど、自分自身もまだ夢の途中だし、そんな悩みながらも追いかけている俺の姿を見て“自分にもできるかな”って思ってくれたらいいなって。夢の扉を開く力はみんなにもあるんだって言いたくて書いた曲です。
片山さん自身、心の扉を開いて書いた曲なのかも。
そうですね。俺、家の中にいるほうが好きで、はじけるタイプじゃないんですよ。そういう根の暗いヤツでも、曲を書いてステージで歌えるんだよっていうことを伝えたかった。根っから明るい人も魅力的だけど、辛い経験や悲しみを知っていて、それでも明るく毎日を過ごしている人って素敵だなって思うんですね。影を知っている人の光というか…。自分もそういう歌をうたっていきたいなと思いますね。
では、そんな片山さんの夢、目標は?
去年、47都道府県を回った時に限定CDを制作したんですけど、それが「約束の場所」っていう曲なんです。各地で出会った人に“また歌いにきます”って小さな約束をして…そういうことって絶対に守りたいと思ってるんです。一個一個の約束を果たして、最終的にはみんなと同じ場所で出会えたらって。それが武道館なのか、街のバーなのか分からないけれど、最後に辿り着くところが自分にとっての夢で、約束の場所ですね。
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