L→R TOC(MC)、DJ KATSU(DJ)

L→R TOC(MC)、DJ KATSU(DJ)

【Hilcrhyme】いろいろと節目なのか
もしれない

そのタイトルからもHilcrhymeが新章に突入したことがうかがえるニューシングル「NEW DAY, NEW WORLD」。彼らの現在の想いが詰め込まれた本作、当然のようにメンバーの口からも“今までと違うものをやりたい”や“新しい一歩”などの言葉が返ってきた。
取材:石田博嗣

最新アルバム『LIKE A NOVEL』を引っ提げての全国ツアー『HILCRHYME TOUR 2013 “LIVE A NOVEL”』の感想からうかがいたいのですが。

TOC
ツアーが終わった途端に、もう次に頭が切り替わって、あまり感傷にも浸ってない感じですかね(笑)。それにファイナル公演のセットリストって、次の活動はこういうふうに動いていこうっていうのを完全に考えてた上でのものだったから、LUVのみなさんに出てもらったり…だから、あれは“これからこういうフィーチャリングの活動もやっていくんだよ”っていう意思提示でもあったし、ファイナルはDVDに収まるっていうのも分かってたから、結構作品を作るっていう感覚でしたね。もちろん、最後の万感の思いっていうのはありましたけど、一番楽しみだったのは、秋のホールツアーが決定したっていうのをみんなに報告することだったし。…でも、ツアー初日終えたところで、もう次を考えていたかな。
KATSU
今回もいいツアーだったと思うんですけど、アルバムを出して、ツアーを回ってっていう、その地道な活動をずっと続けてきた結果だと思っていて。動員も増えたし、内容も評判も全部含めて進歩したなって思うけど、それっていきなり今の動員になったわけじゃないですからね。だから、ここで気を抜いたらいけないって。まだ目指すところはもっとデカいわけだし、いろいろ先を見ながらもう動いてる感じですね。

ファイナル公演では、TOCくんが“みんなを武道館連れて行く”と宣言をしたわけですしね。

TOC
正直言うと、言った以上やらざるを得ないみたいな(笑)。そのために言ったという感覚はあったんですけどね。でも、もちろん自信はあるし、覚悟も決まったというか。『LIKE A NOVEL』っていうアルバムもそうだし、それと並行してやっていたLUVとの曲だったり、CHIHIROさんとの曲とか…あと、ダンサー、KATSUくんの音、全部含めて今までにない新しい活動や新しい観せ方が『LIVE A NOVEL』でできたと思っていて。だから、今はファナイルで“武道館に〜”って言ったことは間違ってなかったって思ってます。でも、Twitterの反応で意外だったのが、“別に武道館なんて行かなくていいよ”って(笑)。本当にコアな人は、武道館は観に行かないって。けど、ライヴハウスだったら行くっていう。それって“あぁ、なるほどなぁ”と思うところもあって。でも、ウチらは大きな舞台に行きたいし、それを願ってるファンの人もいるし、逆にそうじゃない人もいて…なんだろうなぁ、ウチらは武道館のステージに立ちたいっていうか、日本武道館っていうところをHilcrhymeのファンが埋めた絵を観てみたいんですよ。有名になりたいとかそういうのじゃなくて、その絵が観たいのと、そのライヴで自分たちがやりたいことを100パーセントやりたい。あと、今まで応援してきてくれたファンの人たちへの実証にもなると思うんです。昔からあなたたちが聴いてた音楽は、観てきたライヴは、今これだけの人に支持されるようになったよって。そういうふうに、ちょっと恩返し的な感覚がありますね。もちろん、スタッフにも。
KATSU
でも、あの場面で宣言するとは思ってなかった(笑)。
TOC
ごめん!(笑)
KATSU
まぁ、そういう性格だから、“なるほどな”と思ったけど(笑)。そうやって確実に明確な目標ができたわけだし、そうしていかないとね。現状維持しようとすると、現状維持すらできなくなるんで。確かに、近いライヴハウスがいいっていうお客さんもいるとは思うんですけど、武道館をやってもライヴハウスでやることは当然できるわけだから、まずは行ったことのないところに行きたいっていうのがすごいあって…それは場所に限らず。そういう気持ちはずっと持っていたいですね。

今回のシングルは、前アルバム『LIKE A NOVEL』のツアーからの第一歩となるわけですが、意思表明というか、今のHilcrhymeの想いが表題曲にもカップリングにも詰まった一枚だなと思いましたよ。

TOC
そうですね。今までのシングルとはまったく違うものですね。単純にクレジットを見れば分かる通り、外部からトラックメイカーを招いて作った曲なので、KATSUくんがトラックを作ってないんですよ。あと、ミュージックビデオだったり、アー写撮影だったり、それこそマネージャーやレコード会社のA&Rまで、関わる全てのスタッフが変わったんですね。となると、作品も当然変わる。そこにある意志っていうのは僕とKATSU …事務所の社長やスタッフを含めて全員で話し合った結論が、この「NEWDAY, NEW WORLD」とカップリングの「次ナル丘へ」っていう曲ですね。“新しいものをやりたい”“今までと違うものをやりたい”“幅の広いことをやりたい”、あと“思いっ切りラップを乗っけたい”…そういう今のHilcrhymeの現状を踏まえた上で、全員で出した結論が詰まってます。だから、タイトルからして“NEWDAY,NEW WORLD”…“新しい一日を、新しい世界を”って。歌詞に関しても誰かに向けた曲じゃなくて、“あなた”の曲でも誰のものでもなく、自分の思いを書き記しました。今までこういう曲はシングルで出していなかったんですね。自分の中でそれを避けていたというか。でも、もう思いっ切りそういう方向でやってみようと。“今のHilcrhymeはこう!”っていうのを、この『LIKE ANOVEL』後のタイミングで、最初のシングルで見せたかった。

でも、今まで自分たちで作ってきたのに、外部のトラックメイカーにお願いするのは抵抗はなかったのですか?

KATSU
Hilcrhyme っていうユニットとして考えて、とにかくやったことがないことをやりたかったんですよ。外部のトラックメイカーを入れるっていうのはユニットとして考えた時、新しい風が吹くというか、絶対にプラスになると思いましたね。だから、新しい一歩としてはいいんじゃないかなと思ってます。

トラックを外部に発注したということは、どんなトラックを作ってほしいとかのオーダーをして?

TOC
いや、なかったですね。単純にトラックをいっぱい集めて、 その中から衝動的に歌詞を書きたいと思った曲を選びました。 テーマはその後に決めたので。

そうなんですね。歌詞にも《日はまた昇る》とかの言葉がありますけど、トラックだけを聴いても夜明けというか、新しい日が始まるようなものだったので、そういうトラックをオーダーしたのかなと思っていました。

TOC
期せずしてそうなったって感じですね。もしかしてそういうものを無意識に選んだのかもしれないし。ひとつ言っておきたいのが、カップリングの「次ナル丘ヘ」の歌詞が、インディーズの頃に出した『熱帯夜』っていうデモアルバムに入っていた「ヒルクライマー」の歌詞そのままなんですよ。ちょこっと変えてる部分はあるんですけど…まずトラックが違うからフローを作り直したり、ニュアンスを変えてる部分はあるけど、ほぼそのまま使ってる。ここにもちゃんと意思があって、ファンの人たちへ向けてのメッセージでもあるんです。「ヒルクライマー」っていう曲は、当時のウチらの代名詞の曲だったんで、その歌詞をそのまま使ったものを、このタイミングでカップリングに入れることの意図を汲んでもらえればなぁって思ってます。

次に目指す丘が見えたということもあるんでしょうしね。

TOC
その次なる丘は武道館だったりするので…なんか歌詞を使い回すっていうような感じになっちゃってるんですけど、「ヒルクライマー」っていう曲は“TOCとDJ KATSUです、俺らは”っていう、まさにHilcrhymeの意思提示の曲なんですよ。
KATSU
「ヒルクライマー」の歌詞が乗っかってきたのは、BPMやキーも違うし、まさかと思いましたけどね(笑)。こんな変則的なことをできるんだっていう。
TOC
サビは全部変えてるんですけど、こういうのも新しいかなと思って。フローを変えて同じものを使うって前例がないし。…って、ほとんどの人が初めて聴く曲だと思うんで、本当コアな人しか分からないでしょうけど。

でも、「次ナル丘ヘ」でJ-POPらしからぬ挑発的なトラックも含め、そこまで吹っ切れたというのも、「NEW DAY, NEWWORLD」で言いたいことが言えたからなのでは? 自分に自信を持つことの大事さを唱えた曲になってますし。

TOC
そうですね。自分を奮い立たせる曲ですしね。さっきも言いましたけど、今まではそれを誰かに向けて歌っていた…なんかちょっと、自分の中で逃げみたいな部分があったんですよね。でも、今回は初めてシングルの曲で自分と向き合って、今の気持ちが素直に書けたというか。さっき、“夜明け”っておっしゃいましたけど、まさにそんな感じで。今、すごい充実してますね。

フレーズ的にも《今日の俺が一番かっこいい》とか、《昨日よりも好きな今日の俺》と言い切っているのが印象的でした。

TOC
今までのHilcrhymeの曲でも結構そういう曲はあった…例えば、「Changes」では《君が変われば》って歌ってたり。でも、それって全部“君”だったり、“あなた”や“お前”に向けて言ってるんですよね。自分のことを言うのが怖かったっていうのもあるんですよ。だから、“やっと言えたなぁ”みたいなところがありますね。
KATSU
『LIKE A NOVEL』から“次のステップへ”というコンセプトに切り替わってきているんで、それも成るべくして成ったかなっていう感じはありますね。そういう意味でも、いろいろと節目なのかもしれないですね。
TOC
全部重なったよね、スタッフの交代だったりとかも。この曲ができたのが先で、その後にいろいろ変わったんで、全部重なったなぁって思いますね。

必然的に変わる時期だったんでしょうね。

TOC
そうですね。こう言ったらスタッフとかに怒られるのかもしれないですけど(笑)、売れなくてもいいと思ってるんですよ。今までは売れることに固執してたところがあって、それは自分の中で正しいことだと思ってたんですよね。それが正しいか間違ってるかは人それぞれだと思うんですけど、今はちょっと違うと思っていて、“この作品を世に出せればそれだけでいい”みたいな感じなんですよ。まぁ、売れてほしいですけどね(笑)。

でも、今回のシングルはHilcrhymeの意志表示でもあるし、このタイミングに出す意味というか、それこそ先ほどの武道館の話じゃないですけど、“みんなを武道館に連れて行くから、俺たちの背中を見ておけよ!”みたいなメッセージさえ感じますよ。

TOC
そうですね。見ていてほしいって思いますね、うん。だから多分、次のアルバムは自分を歌った歌が大半を占めるんじゃないかと思います。今までの自分を否定はしたくないけど、この時期にそういう曲を書くことが大事だと思うし。

そして、このシングルのリリース後には、秋のツアーが控えているわけですが、やはり気持ちは心機一転という感じですか?

TOC
ツアータイトルも“NEW DAY, NEW WORLD”に決まって、すごく気合いが入ってますね。秋のホールツアーは楽しみにしていてほしいというか、この一年でHilcrhymeが変わった部分だったり、作品で意志提示してきた部分を、今度はライヴでしっかり見せる…そういうツアーにしたいですね。
KATSU
やっぱり今までのツアーだったり、ライヴ…夏フェスも今年は結構あるんですけど、それとは違うものにしたいなと思いますね。まだ具体的なことは何も決まってないんですけど、『LIVE A NOVEL』とはまったく違ったものにはなりますね。
「NEW DAY, NEW WORLD」UNIVERSAL J
    • 初回限定盤(DVD付)
    • UPCH-9869 1680円
    • 通常盤
    • UPCH-5803 1260円
『HILCRHYME TOUR 2013 “LIVE A NOVEL”』2013年07月10日発売UNIVERSAL J
    • 初回限定盤(2DVD+CD)
    • UPBH-9524 7980円
    • 通常盤(2DVD)
    • UPBH-1345/6 4980円
Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

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