【VALSHE】赤裸々に開放されたアイデ
ンティティー

これまでイラストでしか公開してこなかった姿を、ついに実写で公開したVALSHE。 中性的なハスキーヴォイスにピッタリの“イケメン”な素顔に加え、2ndアルバム『V.D.』で開放された彼女のアイデンティティーは、恐ろしく強固にして魅惑的なものだった。
取材:清水素子

昨年11月に発売された6thシングル「Butterfly Core」のジャケットで、初めてご自分の素顔を公開されましたが、それまでに人前に出られたことって一度もなかったのですか?

ありませんでした。音楽活動の始まりはネットに歌を投稿したことだったんですが、当時、意気投合したイラストレーターの白皙にイメージイラストを描いてもらい、それを顔写真の代わりに載せるというスタイルが定着していたので、自分の顔を出す必要性がなかったんです。それが昨年の11月末、ようやく初ライヴができることになったので、直前のリリースで姿を公表したという経緯ですね。もちろん、ライヴはデビュー当初からやりたかったんですが、初ライヴに対する明確なビジョンがあったので、それを叶えられる環境と自分の実力が伴うまで時を待っていたんです。VALSHEの作品の多くはコンセプトやテーマを設けて制作されているので、その世界観を体現できるライヴでないと嫌 だったんですよ。

当然、今回の2ndアルバム『V.D.』にも、何かしら明確なコンセプトがあるはずですよね。

はい。タイトルは“VALSHE's Identity”の略称で、ズバリVALSHEとしての存在意義、自分が自分であることの証明を ーマとしています。覆面での活動は納得ずくのものだったとはいえ、“イラストがあれば自分はいらないんじゃないか?”とか“声が似ている誰かがいれば済むんじゃないか?”と思い詰める部分もあって。そこで今回のアルバムでは自分自身と向き合い、VALSHEの全てを開放すべく、全編ノンフィクションというのがコンセプトになっています。

それが素顔を明かした直後のリリースになるなんて、素晴らしくドラマチックですね。

でも、この構想自体は1stアルバムの『PLAY THE JOKER』を制作していた頃からすでにあったんですよ。きっと次のアルバムを出す頃には顔を出してライヴをやっているだろう…と、 そんな未来への願いもあったので、1stアルバム以降のシングルはリリースの時点で全てノンフィクションで書いていました。裏を返すと、このアルバムに収録されている既発曲は全てVALSHEを語るには欠かせない楽曲なので、それを踏まえて聴けば、同じ曲でも違った解釈ができるでしょうね。

なるほど。色っぽいジャズ調でVALSHE初のラブソングとも取れる「Leopardess」(4thシングル収録曲)も、確かにノンフィクションかと思うと想像の翼が広がります。

そこが狙いなんですよ(笑)。だから、詳細はノーコメントですし、制作においても従来通り“どうとでも取れるような”抽象的な言い回しは心がけましたね。音楽は歌詞とサウンドとの融合であったり、そこから生まれる世界観、それをいかに読み解くかが魅力だと思っているので、聴き手に想像する楽しみを委ねたい。その結果、自分の意図と真逆に捉えられても構わないというポリシーがあるんです。欲しいのは共感ではなく、楽曲、サウンド、歌詞、ビジュアルと、いろんな要素を組み合わせて生まれたひとつの世界観が、手に取った方々に魅力的に映ることなので。

とはいえ、シンフォニックなSEに続いてアルバムを幕開ける「RAGE IDENTITY」からは、社会のルールに縛られず、どんな壁とも闘ってアイデンティティーを獲得するのだという強い決意がうかがえました。

決意表明でもあり、自分自身の存在意義について、どう考えたか?ということを書いた曲でもあります。サウンド面ではデジタルロックをブレない軸としつつ、毎回ちょっとした変化を付けながら幅を広げていきたいので、このアルバムでもさまざまなジャンルに挑戦しました。例えば、人前に立つ仕事ならではの“孤独”をテーマにしたロックバラード「Blissful Jail」に、自分が属する乙女座の神話から共感できる部分を抜き出して、王道のデジタルサウンドにクラシカルな要素を加えた「ASTRAEA」。中でも「Prize of Color」では、周りに指摘される“天の邪鬼”から一変、ファンへの想いをストレートに歌って、従来のVALSHEでは有り得ないほど明るいポップチューンに仕上げています。

幼少時の記憶を基にした「Human Dolls」、第三者の目からVALSHEを綴った「EVALUATION」等、サウンドプロデューサーのminatoさんが作詞されている曲もありますね。

詞を書いてもらうにあたり、minatoには自分の生い立ちをヒアリングしてもらったんですが、彼は3年以上活動をともにし ているので、ある意味、本人以上にVALSHEのことを知っているんですね。しかも、彼のほうが女性的な歌詞を書くから、バランス的にも良いんじゃないかなと。

VALSHEさんは歌詞の書き方も感情に流されることなく論理的で、そもそも歌詞の一人称が全て“僕”ですもんね。

これまで生きてきた中で“私”という一人称を使ったことがないので(笑)。それに歌詞で“僕”を使うと、女性も男性も受け入れられる、不思議なニュートラル感が出るんですよ。そんなスタイルを認めてくれる人々が身近にいるのは、とても自分にとっては大きなことで、そこで彼らに向けての感謝を書いたのが、ラストのバラード「Sincerely」なんです。今まで万人に届けることを念頭に置いてやってきたので、異例中の異例ではあるんですが、やはり今のVALSHEを語る上では絶対に外すことのできない存在ですから。

VALSHEという存在を赤裸々に記した集大成的作品を送り出して、さて次は一体どうなるんでしょう?

そこは前回同様、すでに構想があるので楽しみにしていてください。イラストから実写になったことで今後、活動の幅もどんどん広がるでしょうし、演技の勉強も並行して進めていたので、いよいよ声優業のほうも始めていけたらなと。いろんな場所でみなさんの目に触れる機会が持てるように頑張りますので、これをきっかけにどうぞよろしくお願いします。
『V.D.』2014年02月19日発売Being
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • JBCZ-9004 4095円
    • 【通常盤】
    • JBCZ-9005 3150円
VALSHE プロフィール

バルシェ:2010年9月にコンセプトミニアルバム『storyteller』でメジャーデビューしたデジタルロックシンガー。アニメファン層やネットユーザーを中心に支持を獲得し、13年11月発売の6thシングル「Butterfly Core」はアニメ『名探偵コナン』のオープニングテーマに抜擢。11月30日には初のライヴイベントを行ない、初めてファンの前に姿を見せた。公式サイト(アーティスト)

OKMusic編集部

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