【BUCK-TICK】破壊的衝動がもたらし
た前進的無秩序
さまざまに変容してきた“夢”への思い
“夢”という言葉が出てくるのも象徴的な気がします。
櫻井
“夢”というひと言を使う思いも、作品ごとに変わってきてますね。ほんとに不思議な現象で、なぜこんな夢を見るのかとか、分からないものだからこそ、永遠に使い続けている言葉だと思います。例えば、自分だけではなく、彼は死に至るまでどんな夢を見たんだろうとか、彼女はどんな夢を見て寝ているんだろうとか、その人の物語の中の夢みたいなものを考えて、いろいろ書けたというのもありますね。「形而上 流星」とか「無題」とか、やはり感情を押し殺した中で、作品に対してはそういう使い方はできたかなと思ってます。
話が前後してしまいますが、1曲目の「DADA DISCO -G J T H B K H T D-」は、特に多くの人が新しさを感じるのではないかと思うんです。“BUCK-TICKがこんな曲をやるのか!”と…毎回、そんな驚きはあるわけですが。
今井
ラップの手法というかね。このカッティングのリフ自体は、それこそ20年ぐらい前から自分の中にあって、今回、自然に出てきたので、このまま勢いで作品にしてみようと思ったんですよ。そこにこういう歌が乗せられたというところでは、ほんとに上手くいったのかなと。
歌詞も今井さんが書かれていますが、単純に楽しくもなりますし、ものすごく深読みもしたくなったりもします。
冒頭にSEX PISTOLSを思わせる一節もありますね。曲名の副題にある“G J T H B K H T D”は一体何なんでしょう? かなり調べた結果、何かの頭文字だなと考えて、“現実逃避、爆発だ”というようには導かれたんですが。
今井
秘密でいいですかね ?(笑) でも、そういう発想です。この歌詞の内容とかでいったら、まぁ、だいたい…。
櫻井
僕は気にしてなかったんですけど、他のメンバーが騒ぎ出して(笑)。その瞬間、“あっ!”て分かりましたけど。(この取材から)帰る頃には分かると思いますよ(笑)。
今井
いわゆる名言みたいなものですね。世代によってはあまり馴染みがないかもしれないですけど。
櫻井
嬉しくてしょうがないんでしょ、分からない顔をしてる人を見てるのが(笑)。
今はパッと思い浮かばないのが悔しいです(笑/しかし、取材後に正解が判明)。歌の構成も面白いですね。
櫻井
ほとんど掛け合いとかになってて。他の“自分がしっかりしなきゃ!”みたいな曲は結構真面目というか(笑)、これは真面目にふざけられるというか、いろんなことをやれましたね。聴いてても楽しいと思いますけど。
当然、ライヴの時も掛け合い的な見え方になるんですよね。作曲者の観点で、他にも特に新しさを感じながら作ったものがあると思うのですが、何か一例を挙げるなら?
今井
「無題」ですね。ある意味というか、裏面でというか、一番好きな曲ではあるんですけど、出来上がってみれば、歌がずっとファルセットで。アレンジも特別ややこしいこともしてないんだけど、何か不穏な感じがあって。
これもまた歌詞が、宇宙的というのか、逆に人間的というのか、どの次元を描いているんだろうと思わせる。
櫻井
それを説明したくないので、“無題”とさせていただきました。聴いた方の頭の中で楽しんでもらうほうがいいなと。今井さんのデモではまた別の仮タイトルでして、それがひとつのヒントでもありますし、あとはいつもの胎内宇宙、胎内回帰的な…“生命体、何を思う?”的な感じですね。それにすごくフィットする曲があり、僕に“歌詞を書いて”と言われたので、楽しくて仕方なかったです(笑)。
今井
もうバッチリですね。最初からディレイを飛ばすみたいなアレンジは自分の中にあったんですけど、そこに言葉が残っているところが、上手くハマったかなって。深読みしたくなるような意味が出てくるんですよね。
音と言葉が相まってと。「Devil' N Angel」はシンセベースでスタートしますが、本作において、デジタル・ビート/サウンドはひとつの音色的な特徴だと思うんですね。
今井
そうですね。そういうのはわりと積極的に今回は採り入れようかなと思ってました。「Devil' N Angel」もそこから作り始めて、好みの楽曲、アレンジになりましたね。歌詞は聞いた話からなんですけど、子供が言ったことですね。“僕はどこから来たの?”って問われて、“天使の家”と言ったら、急に泣き出しちゃって、“天使の家に帰りたいよぉ”って布団の中に潜っちゃったという。
歌入れに際して、その物語は聞いていたのですか?
櫻井
聞いていなかったけど、かわいくて…この世は恐ろしいんだぞ、みたいな感じに聴いてもらえばと(笑)。
なるほど。そして、またタイトルもさまざまな思いを巡らせてしまいます。“或いはアナーキー”と聞いて、何に対しての“或いは”なのかと、すごく考えてしまったんですよ。
今井
ということなんです(笑)。だから、例えばシュルレアリスムとかダダとかに対する“或いはアナーキー”。つまり、無秩序というか、何でもありというか。それこそ“無題”みたいな…としか言いようがない(笑)。
櫻井
何の“或いは”なのかは僕も思いましたけど(笑)。でも、今井さんの中には、“或いは”の前に何かあるんだろうぐらいに思って、そういうのであれば、他にアイデアもなかったですし、首を縦に振るしかないみたいな(笑)。
“アナーキー”そのものはパンクにもつながってきますね。さて、本作を引っ提げた全国ホールツアーが夏に行なわれますが、どんなライヴになりそうな予感ですか?
今井
「DADA DISCO -G J T H B K H T D-」とか「無題」とか「形而上 流星」とか、振り幅があるし、いろんなタイプの曲があるから、やり甲斐もある。楽しみですね。
櫻井
漠然とですけど、いろんな夢を与えられるような。例えば、中高生とかの若い人たちが、後々、これに影響されましたと言ってくれる、そんなライヴになればいいなと。普段はなかなか会えない人たちにも、日常があっての非日常みたいなものを見せられればいいなと思います。
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