【中島卓偉】デビュー15周年ツアーは
過去へのR.I.P

7月にリリースされるDVDとCDの2枚組シングル「どんなことがあっても / 忘れてしまえよ 許してしまえよ」の発売を前に15周年ツアーを行なう中島卓偉に、これまでと未来の音楽とのかかわりについて話を訊いた。
取材:大庭利恵

6月5日からデビュー15周年ツアー『15thAnniversary 15years of Rock’n Roll Tour 2014 ~』がスタートするわけですが、改めて15周年を迎える心境というのは?

デビューすることになった時、母親に“そういうことだから”と話したら…親ですからね。そんな夢みたいなこと長く続くわけがないと言われたのが、20歳。とにかく3年は頑張ってみるよと言ったことを考えれば、15年は随分と長く続けられてありがたいなと思いますね。

バンド活動をしていた時期もあり、ソロとしても“TAKUI”から“中島卓偉”になるなど、いくつかターニングポイントとなる場面があったんじゃないかと思うのですが。

もちろん、たくさんの出会いと別れ、いろんな変化がありましたね。でも、実はどれかがターニングポイントということはないんですよね。ありがたいことに、休むことなく毎年リリースさせてもらっているので、そのたびに変化を求めてやってきていることもあって、どのタイミングで大幅に音楽性が変わったということもないですし。

音楽性じゃなくとも、考え方がガラッと変わった出来事…それこそ30歳になった時とかは?

これが、なかったんですよね。子供の頃から、いろんな夢を見るんですけど、見込みのないことには執着せず、わりとドライに考えるほうだったし。例えば、ラモーンズがずっと同じことをやり続けてきたことが苦しかったと後のインタビューなどで告白するじゃないですか。彼らはパンクが好きだからやり続けてきていたと信じて聴き続けていた僕は、それを読んで苦しいなと思ったりする。ドライな僕は、だとしたら、同じことをやり続けないほうがいいのかもしれないと思い、変化を求めるようになっていったので、自分は何がしたいのか、何を求めているのか、常に自問自答しながら進んできたのかもしれないですね。

その自問自答の中で卓偉さんが信じてきたものとは?

ライヴですね。制作中は迷ってなんぼ。その代わり、マスタリングが終わった時点で、その迷いは一切なくなり、これが中島卓偉の曲だと自信を持ってステージに立つ、ということでしょうかね。ガキの頃に聴いてた音楽を今聴くと、その時の心境やテンションまですごく覚えてたりしません? 当時の僕にとって音楽とは歌うことやパフォーマンスではなく、単なる“好きなもの”だったわけで、迷った時は結局、そういう気持ちが自分を助けてくれてた気がしますね。

7月にシングルDVD「どんなことがあっても / 忘れてしまえよ 許してしまえよ」がリリースされますけど、そのフライヤーには“過去の15年の年号を墓石に刻むR.I.P(rest in peace)”と書いてありますよね。

そうなんです。このフライヤーの僕の写真はモノクロで、過去を向いている。過去は葬るけれど、それはエバーグリーン(不朽、色褪せない)であるということを意味してるんです…って、まぁ、それも説明する必要はないんですけどね。いつか“あ、そういうことか”と分かってもらえるほうが楽しかったりすると思うんで。

それは、昨年リリースしたフルアルバム『BEAT&LOOSE』の時、自身のこれからの音楽は30代に作った作品を中心にやっていきたいと話していたことに通じてますか?

40代、50代はおまけだと思っているので、30代の今、いかにこの先の土台となる曲が書けるかだと思ってるんですね。さっき、ターニングポイントの話をしましたけど、やっぱり僕にとってこの15年の中にそれはなかったなと改めて思いました。あるとしたら、それこそここから40代に向けて発信していく『BEAT&LOOSE』というアルバムなんじゃないかな。

過去を全て引っ括めて、35歳の現在から未来に向けて新たな一歩を刻んでいく?

そう。だから、本当だったら15周年ツアーなんて、新曲がなくても成り立つものだと思うんですよ。でも、新曲をリリースし、それを演奏するわけですよね。

なるほど。楽曲自体も、ものすごくストレートなメッセージが詰まったものになっていますけど、制作自体15周年を意識したものですか?

表題の「どんなことがあっても」は実を言うと、2年前に喉をつぶした時のことを書いたものなんですよ。回復の見込みが50パーセントだと言われ、半年近く休ませてもらったことがあって、事務所からも完治するまで休んでいいと言われたんですけど、休んでること自体が辛いし、どうしていいか分からなくなる。結局、なんだかんだ完治するまでに1年半ぐらいかかってしまって。その時に浮かんだ《どんなことがあっても》というフレーズを歌詞にしたものですなんです。

経験したからこそ出てきた言葉ですね。

これは、まさにそうですね。経験しなければ出てこない言葉だったと思います。次作のアルバムを視野に入れて、結構いろいろと作っていたんですが、結果シングルとして聴いてほしいと選んだのは、ロックバラード「忘れてしまえ、ゆるしてしまえ」も含め、一番新しく作ったもので、15周年を意識した歌詞のものになりましたね。

やはり、一番新しいものが一番いいものであるわけですね。

そうですね。新しいものが自分にとって一番伝えたいものではありますけど、根本はそんなに変わってないですからね。デビューからずっと夢は武道館でライヴをすること。それは、叶うまで何年経っても変わらないことですし、形は変われど、伝えたい叶えたいと思うことは口にしていかなきゃいけないと思いますからね。
「どんなことがあっても/忘れてしまえよ 許してしまえよ」
    • 「どんなことがあっても/忘れてしまえよ 許してしまえよ」
    • EPBE-5486〜7
    • 2014.07.16
    • 2200円
中島卓偉 プロフィール

ナカジマタクイ:1999年10月21日、シングル「トライアングル」 でデビュー。ソロでありながらロックやパンク、バンドにこだわったサウンドメイクといった楽曲のみならず、ファッションひとつからも随所に施されたブリティッシュテイストは、UKロックへの敬意を感じさせる。06年、アーティスト表記をTAKUIから本名の中島卓偉に改めた。14年にはデビュー15周年を迎え、15年4月8日に通算15作目となるニューアルバム『煉瓦の家』をリリースした。中島卓偉 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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