【植田真梨恵】全ての女の子の気持ち
を代弁した曲を作って歌いたい

実は何年も前から注目していた植田真梨恵が、満を持してメジャー進出を果たす。そのデビュー作となるのが、シングル「彼に守ってほしい10のこと」。デビューを前に彼女の中で意識改革があったようで、そこには新境地が広がっていた。
取材:石田博嗣

インディーズで約7年間活動されていたわけですが、そこで得た一番大きなものは?

ライヴでつながっているお客さんですね。真摯に向き合ってライヴをする…その場の空気を掴んで届けるっていうのを、お客さんに教えてもらいました。お客さんはお金を払って会場に来てくれる…たかだか30分ほどのライヴを観るために、電車を乗り継いで、仕事を早く終わらせて来てくれるわけじゃないですか。そういう背景がひとりひとりの中に必ずあるわけだがら、それを一緒くたにして“みんなが集まってくれた”とは思っちゃいけないと思っているんですよ。だから、その日の一番良い状態でライヴができなきゃいけないなと思っていて。みなさん生きているから、そういう人たちが出している空気を掴んで、みなさんに返していきたいなと思っているんです。

なるほど。インディーズの頃に舞台をやられていましたが、それは自分にどう活きていますか?

人の話を聞くようになったこと(笑)。演技をする人っていうのは、台詞があるから相手が何を言うか分かっているじゃないですか。台詞の流れがあるわけだから、ちゃんと人の話を聞けるようになったと思います(笑)。10代の頃の私はいろいろ舐め腐っていたんですけど(笑)、人とコミュニケーションをとりたいなとは思っていたので。

思わぬ答えが返ってきた(笑)。いつも真梨恵さんのライヴを観ていて思っていたことなのですが、歌に入る瞬間にいつも表情が変わるなって。それって舞台経験があるから、パッと歌詞の主人公になるのかなと思っていました。

でも、それはずっとそうだったかもしれないです。逆に私はそれができるから、“演技もできるんじゃない?”と言われたりするんですよ。できないんですけどね(笑)。私は歌の力を信じているっていうか、歌っている時だけが無敵なので、それでガッと表情が変わるのかもしれないです。歌っている時だけ無敵モードに入るので。

歌ってない時は無敵じゃないの?(笑)

全然無敵じゃないです。ボケボケですし、言ったこともすぐに忘れるし、すぐお腹を壊すし(笑)。

(笑)。では、インディーズで3枚のミニアルバムと1枚のフルアルバム、3枚組のシングルを発表されましたが、その音源制作の中では?

音源を出していく上で、自分のモヤモヤだったり、思っていることを曲にすることが多かったんですよ。で、そういうふうに曲を作ることの楽しさを覚えたのが、インディーズ時代だったのかなと、今は思っていますね。

“今は”ということは、その考え方が変わった?

とても変わりました。いろんなライヴを観る中で、私は何も感じないライヴがすごく嫌で。私自身も、ちゃんと心まで届くライヴができていなかったらすごく嫌だなと思っていて。心まで届くライヴができるには、心まで届く歌を作らなきゃいけない。そういう歌っていうのは、自分のモヤモヤを吐き出しただけで終わっているようなものとか、ソレっぽいものを歌っている歌では無理だと思うんですよ。プラスアルファ、聴いてくれる人を少しでも引っ張っていけるようなものをメジャーでは作っていきたいなと思っているんです。

ちゃんと聴き手を意識するようになったということ?

そういうことです。聴き手の人がお金を払って手にしたものから、きっと応援だけの気持ちではなく、パワーとかそういうものが伝わっていくものでないと、今の音楽があまり売れない時代にCDを買ってもらえるわけがないと。

ということは、そう考えるようになったのは、メジャーデビューが決まったから?

そうです。そういうふうにライヴを見てる中で “大丈夫かな、私”と思うことがすごく多くなっていた時に、モヤモヤを歌っている場合じゃないってなったんですけど、実際に書きたいことがその時になくて…。で、“じゃあ、私は何を歌にしていったらいいんだろう?”って思うじゃないですか。そしたら、本当にみんなで大きな夢を見れるような歌を、単純にいい歌を作って、届けていくということをしたいと思ったんです。

それは今までの曲の作り方とガラッと変わるわけじゃないですか。そこに抵抗はなかったのですか?

“今までのものを作ってちゃ売れない”と思ったんですよ。だから、変わらないと!って。しかも、劇的に良く変わらないといけない。だから、怖さとかはなかったですね。

じゃあ、メジャーに向けて作ったのが今回の曲だと?

そうです、まさしく。シングル曲になり得るような良い曲をたくさん作ろうと思って…このままアルバムを作るとしても、そういう曲ばかりにしたいという想いがあったので。なので、たくさん良い曲を書こうと思って作った中の一曲です。

たくさんの人に届く良い曲というのは、真梨恵さんの中ではどういう曲なのですか?

良い曲第一弾としてみなさんに届けたいと思ったのが…ライヴに来てくれるお客さんたちが私に手紙を書いてくれたり、Twitterでつぶやいてくれるんですけど、そこに書いているのを見ると、“今日はモヤモヤしてるから植田真梨恵を聴いて落ち着いてる”とか書いてあるんですよ。私はそれを見るとすごく不思議な気持ちになるんです。私の曲って癒し系じゃないから、全然。これまでのインディーズの曲だと、むしろその気持ちを煽るような曲を書いている意識があるので。まぁ、共感して落ち着いてくれているのかもしれないですけど。なので、余計にそういう子たちに向けて私は歌を作りたくなったんです。だから、良い曲第一弾としては、世のそういう面倒臭い気持ちを持つ女の子たちが聴いて歌ってくれるような曲を作ろうと。モヤモヤだけではなくて、聴いたあとにちょっとでも先に進めるような、プラスになるものを提示していきたいなと思って作りました。

そうやって生まれたデビュー曲の「彼に守ってほしい10のこと」。この曲はアレンジが“いっせーのーせ”っていう(笑)。

はい。いつもはデモの時から全体のイメージが見えていて…その段階ではリズム隊とかは入っていないんですけど、弾き語りのデモは全編出来上がっているんですね。それをアレンジャーさんに渡して、ある程度出来上がったものが返ってくるというのが私の中での制作の当たり前だったんです。けど、今回はそうではなくて、どんなふうに肉付けしていくかを見ていきながら、“そこはそうしよう”や“これは違う”というのを選んでやっていくのが一番良いと思ったんです。というか、こういう感じでやることにすごく憧れていたし、やってみたかったのと、この曲ができた段階で、オケ薄でバーンと歌が聴こえていて、無駄な引っかかりがなく最後まですーっと流れていくような疾走感のあるアレンジがいいと思っていて。だとしたら、スタジオにみんなで入ったほうが話が早いと。

まぁ、普通のバンドの曲の作り方ですからね。

そう! そうなんです!

しかも、バンドメンバーがすごい! アレンジャーとしても活躍されている方々ばかりですものね。

とても刺激的でした。みんなにとっての正解を出したかったというか、みんなに違和感がないものを作りたいという気持ちがあったので。それは歌の力を信じているからなんですけど、アレンジについてはみんなの多数決を取っていきたかったんです。歌を一番活かす方法をみんなに出していただいて作っていったという感じです。

そうやって生まれたアレンジに対して、どういう気持ちで歌に挑みました?

私は繰り返し聴いても疲れないものを作りたいなと思っていて…というのは、これまで私は1回聴いただけで疲れちゃうものをいっぱい作ってきたような気がしてて。音楽っていうのは心に何回も届くことで、刷り込むように心に入っていくのが大きい要素だと思っているので、しんどすぎない声で歌えたらいいなというのは思っていましたね。でも、すごく女の子っぽい曲を作ったので、なるべくこれまでの私の感じでは歌わないと決めていて…ギャーッと歌って痛すぎないところを目指して歌いました。

その歌い方が、この歌詞の女の子にすごいハマってるなと思いました。

だったらすごく良かったです(笑)。私の気持ちでももちろんあるし、全ての女の子の気持ちを代弁した曲をなるべくなら作って歌いたいと思って作った曲だったんで。

とはいえ、やっぱり言葉は強いなって。《最後に守れない約束なら くだらない》とか。

確かに、ここについては言い放ってますね。でも、これが一番この曲の中で言いたいことなので。

そうやって強く言い放っているところもあれば、《すぐに風邪ひかないでください》と彼氏のことを常に思っていたり。

そうですね。これを歌ってる女の子のことをすごく想像して作ったので。そこは私じゃなくて、例えばカラオケで女の子が歌ってるところを想像して、こういうフレーズを入れたんです。すごくかわいいなって思えるというか、そういう子が好きだなと思って(笑)。

そんな歌詞なのですが、最後に“そばにいてください”と歌って終わるじゃないですか。でも、それは歌詞に書かれていないんですよね。

そうなんです。気付いていただけましたか?

それが彼に守ってほしいことの10個目?

はい、そうです。でも、“そばにいてください”は守ってほしいことではあるんですけど、それを歌詞に書いて欲求してしまったら…ずっと一緒にいるための約束だから、そこまでを言ってしまうとちょっと違うというか。

重たくなる?

そうですね。なんと言うのかな…それって結果的に守れたというふうになったほうが嬉しいことじゃないですか。だから、歌詞には書きませんでした。

そんな「彼に守ってほしい10のこと」を表題曲にして、カップリングが2曲収録されているわけですが、この選曲はどういうポイントで選んだのですか?

カップリングを選んでいる段階の時に、たまたまアコギの弾き語りのライヴで「ダラダラ」を歌ったんですね。それで、“「ダラダラ」がカップリングでもいいね”という話が出て、私は好きな曲だし、いつかしっかりとリリースしたいと思っている曲ではあったので、あえてデモというかたちで入れてもいいのかもしれないなと思って。

デモのかたちというのは、弾き語りで入れたかったとかで?

いえ、いつかこの曲をちゃんと完全版としてリリースする日が来るだろうと個人的に思っているから、今回はあえてアコギの弾き語りで入れたという。

あ、数年後には完成版がアルバムとかに入ると!

はい。出そうと思っています。…今は!(笑)

この曲の主人公の女の子も、ある意味かわいいなって。

すごくラブソングを書きたい時期があって。人生においていつ歌っても変わらずにちゃんと届くもので、しかもそれが“こうしてほしい”とひと言も言わなくて、全部情景描写、比喩だけで歌詞を書いて、それがなんとなく聴き手の人に伝わったらいいな…みたいなのを作りたくなったんですよ。なので、私自身も気に入っているし、こういうものが音楽としての私の一番やりたいことだったりもします。

日本語の美しさとか響きを意識されたそうですが。

そうですね。モヤモヤを歌いたくなくなってから曲を書けなくなった時、まず書き始めたのがラブソングだったんで。日本語で私にしか出せない詞世界を作っていきたいなというところで、こういう歌詞になっています。

もう1曲が「アリス」。懐かしいというか、打ち込みもいい感じにチープで。

「アリス」に関してはカップリングの3曲目に入ることをイメージした時に、3曲通して聴いた時にノスタルジックな感じになってほしいなと。子供の頃のことを思い出したりすると、なんかすごく不思議な気持ちになるじゃないですか。そういう雰囲気がちらっとこのCDの中にも見えたらいいなと思っていて。今回のシングルは女の子とノスタルジックをテーマにして作ってるんで、最後にアナログのレコードで聴いているような感じのモノラル感というか、ああいうのが懐かしいところに響いていい感じに届いたらいいなと。

そんな3曲がパックされたデビューシングルは、どんなものができたという実感がありますか?

今回はフックの強い曲を作ったわけではなく、むしろストレートでなるべく余計なものを削ぎ落としたシンプルな音源を作ったと思っているんです。そういうアプローチで届けたかったので。なので、みなさんからしたら物足りなく感じるかもしれないという不安感もあるんですけど、そういう小手先のことではなくて、ちゃんと真摯に向き合って作ったという気持ちが大きいので、単純に良いものができたなと思います。

本作でメジャーデビューとなるわけですが、デビューしてやってみたいことは?

別にインディーズで続けていくこともできるじゃないですか。あえてメジャーデビューをするというところにすごく意味があって…きっとインディーズで続けていたらこういう曲は書いていないと思うんですよ、私は。だから、もっと大勢の人たちに届く、真っ直ぐで、歌が良くて、歌ってる感じが良くて…っていう歌の力がすごく強いものを届けていきたいと思っています。で、それがちょっとでもいい方向に作用して、みなさんを引っ張っていけたらなって。共感じゃなくて、引っ張っていくものを作っていきたいですね。
「彼に守ってほしい10のこと」
    • 「彼に守ってほしい10のこと」
    • GZCA-4140
    • 2014.08.06
    • 1296円
植田真梨恵 プロフィール

ウエダマリエ:中学卒業を機に、歌い手となるために故郷福岡から、単身大阪へ。15歳で作詞作曲を始め、16歳の春、力強いハイトーンヴォイスと怖いもの知らずのライヴパフォーマンスがレコード会社スタッフの目に止まる。音源制作と並行してライヴ活動も精力的に行なっており、14年1月には渋谷CLUB QUATTROと梅田CLUB QUATTROにてソロライヴを実施。そして、同年8月にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たした。植田真梨恵 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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