【竹友あつき】 “手を握ろう”と言
われたら、握り返せるようになった

目線さえ変われば、見える景色が変化するのも必然。そして、見えたがために、沸き上がる感情と戸惑い。“優等劣等生”こと竹友あつきが描く“自分”という未来地図は、まだ始まったばかり。
取材:石岡未央

“自分と誰か”というのを描いた作品
になってます

4月リリースのデビュー作から5カ月くらいですが、今作を作り始めたのって?

実は、デビューEP『17歳』を出した時には全曲できてたんですよね。「未来ライン」が一番新しい曲で、3月頃に作りました。

それがEPとしてのタイトルでもあるけど、高校野球予選のテーマソングになっていたりして、そのために作ったの?

そのために作った感じは強いですね。タイアップもそうですが、プライベートでも野球部の友達から高校3年で最後の夏だから、地区大会を観に来てほしいって誘われて。で、僕はすごいスポーツが苦手で勝手に縁がないものと決め付けていたんですけど、観に行ったらルールも分からない中、2時間釘付けで感動したんですよね。グラウンドで汗にまみれてる姿とか、ここまで来るのに葛藤や悔しい思いもたくさんあったんだろうなって…いろいろと見えてきて。それが自分の音楽に懸ける想いと同じだなって、無縁だと決めつけてたものにも縁を感じたというか。そのつながりと気持ちを称える歌を作りたいと思って「未来ライン」という言葉が生まれて仕上がりましたね。

《頑張る姿を笑う人は たくさんいるけど そういう人たちは 頑張ったことがないだけだから》ってありますが。

いや、なんか単純に悔しかった時があって。デビューしたら手のひらを返して…みたいな人。馬鹿にされた時に何クソって思う気持ちはあるんですけど、そういう人に対しての皮肉もありつつ。メロディーはすごいポップなので、あえてそういうフレーズを入れるっていうのは僕らしさでもあるのかなって。

野球って団体競技だけど、音楽って個人作業が多いしチームの意味はちょっと違うよね。

はい。プロデューサーの浅田(信一)さんとの出会いが大きかったんですけど、一緒に音楽を作ろうとする人たちとの出会いで開けたというか、今まで独り言みたいに作っていたものを支えてくれたり、いろんな人たちに届けられることで、最近は“自分対誰か”がないと音楽も成立しないんだなと思っていて。だから、今回のEPは“自分と誰か”というのを描いた作品になってます。前作は教室で言えば、自分の机の上だけにこもって書いていたんですけど、それを“もっと見て”とか、見せてもらったり、黒板や先生を見ていたりだとか、教室というひとつの世界を外から見るようになったなと。それが大きな違い、心境としてもそうですし、俯瞰で見てる曲は多いですね。

現役の学生目線だけど、精神性でちょっと抜けたところにいる感じがするね。

今までは学校のコミュニティーしかなくて。僕なんかは狭いタイプだったので、学年で20人くらいしかいなかったわけですよ。それがデビューして、いろいろな人と関わるようになって…それをきっかけに学校でも話しかけてくれる女の子がちょっと増えたりとか(笑)。勝手に心を閉ざしていたけど、ふすまを軽く開けるくらいでも見えてくるものって違うなって。そういう成長というか、自分の中の変化がそのまま作風としても出てる。シュ〜って吸収できるものがあったんだと思います。

アタマの3曲って、どれも疾走感があるポップなタイプだと思うんだけど、3曲を並べた意味合いって?

その3曲をすごい押し出したいという気持ちが強くて。「Days」はさわやかな曲調ではあるけど、歌詞がそうではない。例えば、罪悪感的なものって、こういう曲調に乗るとスピード感が落ちるから、言葉に違和感を感じたりしてたんです。でも、ちょっとデコボコしてる中を駆け抜けていく感じというか、ネガティブな部分も爽快なメロディーに乗せて振り切っちゃうような曲にしたくて。「未来ライン」とはベクトルが違うけど通じるものがある。「未来ライン」は相手がいて、「Days」は意外と自分曲なのかもしれない。「いちぬけた」は高校入学の時の説明会で、大学受験の話を1時間くらい耳にタコができるくらいされて、すごい嫌気が差して腹が立ったんです。高校3年間を注ぎ込めみたいに言われて。そんな大人への苛立ちだったり、自分らしく生きたいんだっていう宣言を、あえて強い言葉を選んで書きましたね。

「未来ライン」が一歩先を行っているというか、“いちぬけた”先にいるって感じはするね(笑)。

そうですね、結果(笑)。

人と手をつなぐことを覚えたみたいなことになるのかな? これ。

まぁ、ぎゅっとはいけないけど…握ってみようという感じには、たぶん“握ろう”と言われたら握り返せるようになった。

そこに、もしかしたら楽しいことがあるであろうと。

っていうことに気付き始めた(笑)。「成長期」っていう曲もありますけど、18歳は今まで以上に大人に近付いてる感じがしてて、その中で“大人って何だろう?”とか、どうすれば大人になれるのか。そもそも大人になりたいのか?って、心が揺れている感じがそのまま出たなと。だから、今回は“成長期”のアルバムだなというふうに思っていて。

ラストを飾っている曲がその「成長期」ですけど。これは一発録り?

一発録りですね。そういうのに挑戦したのも、バンドとか打ち込みでがっつり作りすぎた曲を並べても嘘になってしまうというか…自分のライヴの部分っていうのも含めて、素のまま、デモに近いかたちで録りました。

ちょっとボーナストラック的な。

その立ち位置はありますね。ひとつだけ質感が違うので。これも結構自分ソングですね(笑)。

OKMusic編集部

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