【浮気者】自分の世代の日本人にしか
できないことをやりたい
SuGの武瑠のアザーサイドであり、ジャンルを超えたアーティストやクリエイターたちとコラボする浮気者がiTunes限定シングル「HELLYEAH」を配信する。今回の浮気相手はクラブミュージックはもちろんJ-POPシーンでも活躍するプロデューサー兼DJのTeddy Loid。武瑠ワールドが炸裂したジャケットのアートワークも尖っているが、10月18日には前代未聞の謎のイベント(?)も企画されている。東京から発信される音楽×映像×ファッションのアート。好奇心とひらめきが武瑠を突き動かし続けている。
取材:山本弘子
まずはSuGが復活して精力的に活動を行なっている中、ソロプロジェクト、浮気者を再び始動させる武瑠くんのモチベーションというのは?
SuGも浮気者も純度高く好きなことをやっているという意味では同じなんですけど、主軸がSuGで、自分の遊び心をより伝えやすく表現しているのが浮気者なんですよね。
本命のSuGを浮気して、さまざまなジャンルのアーティストとコラボするのが、浮気者のコンセプトだと思いますが、今回のiTunes限定配信シングル「HELLYEAH」だったら、どんなスタンスだったのですか?
『HELLYEAH』に関してはもともとはSuGでやるために作っていた曲をTeddyくんと浮気して、めちゃくちゃ遊んじゃったっていう。SuGも浮気者も同じ人間がコンセプトを考えてるから世界観は一緒なんですけど、EDMアプローチ、ファッションアプローチを強めに出しているのが浮気者ですね。SuGはバンドサウンドを活かして作っているので、自分の感情を一番大事にしてる。
今回、Teddyさんと組んだいきさつというのは?
SuGのシングル『B.A.B.Y.』のアレンジをTeddyくんがしてくれた時に、浮気者のミニアルバム『I 狂 U』がMVを含めて好きだって言ってくれたので、“じゃあ、浮気者やる?”って訊いたら“ぜひ、やりたい”って。その場のノリで“この曲をエレクトロなアプローチにしてみるのはどう?”って話が発展していった感じですね。
じゃあ、「HELLYEAH」の原型はもっとバンドサウンドだったんですか?
何回も出てくるシーケンスのフレーズはギターで弾いていて、4つ打ちロックなんだけど、メタルっぽい曲だった。だから、タイトルのロゴがアイアン・メイデンみたいなんですけど。
言われてみれば確かに(笑)。
で、サビの《HELLYEAH》っていうところはライヴで一緒に歌ってジャンプできるようなイメージ。
サビはかなりポップですもんね。じゃあ、Teddyさんとコラボする際にリクエストしたことは?
浮気者のコンセプトがTOKYOであること、デザインのイメージを伝えて、曲に関しては歌メロとギターで弾いてたメインフレーズは変えないでほしいっていう話はしましたね。音色についてはダフト・パンクの「トロン:レガシー」の曲が好きなので、硬質で寒色の世界観でお願いしたいって。その上でTeddyくんのカラーで曲をいじってもらったんですけど、エンディングのセクションは彼が考えてくれて、そこにラップを乗せたりとか。
歌詞には武瑠くんの今の心境が反映されているのですか? “サイテーな気分、イエー!”みたいなニュアンスなのかなと。
(笑)。能動的なイエスのニュアンスですね。“これ、やってみる?”、“挑戦してみる?”、“もっと欲しい?”って言われたら、“当たり前でしょ”みたいな意味の“HELLYEAH”。SuGで昔、書いた曲「Vi-Vi-Vi」では《絶望なんてドラマティック》って歌って、「butterfly BoY」では《VIVA挫折 いぇいいぇい》って歌ったんだけど、そういうことを今の自分の感覚で書いてみたいなっていうのはありました。《平坦なLifeこそが恐怖》とか《悟ったところで気持ち良くないからHELLYEAH》っていう歌詞も、悟り世代の“最初っからムリっしょ”っていう感覚も分からないではないけど、それもつまんねーなって。熱血とも違うんだけど、“とりあえず、やってみる”っていう自分のスタンスが“HELLYEAH”。2年前からずっと使いたかった言葉で、誰かに先に使われないか、ドキドキしてた(笑)。いろいろな意味で自分のルーツがめちゃめちゃに混ざっている曲ですね。今回のビジュアル自体もう浮気者そのもの。ロック、メタル、ヒップホップ、ファッションと要素が半端ない。
未来的な要素とノスタルジーが同居していて、ぶっ飛んでますよね。
ザ・浮気者、ザ・自分の美学…日本のバットマンみたいなイメージ。キャッチーなダークヒーローみたいな。
アジアのテイストが感じられますもんね、キセルを持っていて。
服も着物っぽく見えるようにして、メイクはジョーカーみたいな感じで。顔にハート描いてるのが自分っぽい。
MVも凝っていておしゃれですが、一緒に組んだのは?
SuGの『dot.0』から一緒にやってて『MISSING』のジャケットも手がけているLIKIが全力で作ってくれていて、CGが尋常じゃないクオリティーになってます。で、映像の中に出てくる絵を描いてるのが、海外でも活躍しているAruta Soup。ジャケットやMVも含めてTOKYOが浮気者のコンセプトなので、自分の世代の日本人にしかできない感覚のものを作りたいと思ってます。
それが西洋文化と東洋文化のミックスでもある?
そうですね。日本古来のものはすごくオリジナリティーがあるけど、今の日本人がそういうものを取り入れているかって言ったら、ベッドだし、洋式トイレだし、畳なんか少なくなってるし、そのバランスって日本語英語みたいな感じで“和”とは、ちょっと違うんですよね。無宗教で雑多で信念がない感じ。でも、NYとか海外に行って“日本の良さってどこだと思う?”って訊ねると“宗教がないから自由なところ”ってみんな言うんですよ。今回のアートワークも海外じゃあり得ないと思う。ロリータを性的な目で見るのがタブーな国も多いから、アイドルも日本独特のカルチャーだと思うし。
そういう特殊な文化を活かさない手はないだろうって?
そうですね。フィジカル面もそうだし、1本線じゃ向こうに勝てないと思うから、自分がいいと思うものをセレクトしてコラージュ化していく手法というか。「HELLYEAH」の短編小説も書いてるんですけど、服のデザインやどういうやり方で見せて聴かせていくか総合的に考えて作ってますね。浮気者はミュージシャンというより、クリエイターに近いのかもしれない。
もともと武瑠くんはSuGで衣装のデザイン、MVの監督もやっていたから、ますます可能性を広げていると言っていいのかもしれないですよね。
そう。ティーザー映像に一瞬“10.18 XXX at TOKYO”って文字が出てくるから、“あれは何ですか?”って訊かれてるんですけど、今、もっと面白いことやろうとしてるんですよ。
気になりますよね。10月18日に何かが起こる?
ライヴの告知もしてないし、チケットもないし、インフォもないんですよ。“地方に住んでるんですけど、どうやったら行けるんですか?”って質問に“自分の世界観を愛してくれたら、絶対、会えるので大丈夫です”とだけ答えてるんですけど、当日にならないと何が起こるか分からないような超ドキドキすることをやりたかったんですよね。詳しくは言えないけど、自分がクリエイトしているものが好きでサポートしてくれる人は絶対に会えると思います。当日になっても“どうなってるの?”って振り回されるかもしれないけど(笑)。だから、たくさんの人には理解してもらえなくても、飛び抜けて面白いことをやろうとしてるのが浮気者かもしれない。自分のアザーサイド。この立ち位置でしかできないことをやっていく。
ということは今後も不定期にやっていく?
そうですね。“フツー、それ、できないでしょ”っていう思いつきを浮気者ではやっていきたいですね。
ウワキモノ:2012年12月29日の代々木第二体育館公演を最後に活動休止に入った、SuGのヴォーカリストである武瑠のソロプロジェクト。ファッションデザイナー、映像ディレクター、小説家などマルチな活動を続けるアーティストでもあり、多方面から注目を集めている武瑠が“SuG=本命ありき”で活動をスタート。さまざまな個性派アーティストとコラボし、ミニアルバム『I 狂 U』を完成させた。浮気者 オフィシャルHP