HYがラブソングというテーマを掲げ、初のコンセプトアルバム『LOVER』を発表。映画『想いのこし』主題歌「あなたを想う風」を含む全7曲には熱く切ない愛のかたちが収録されている。
取材:荒金良介
今作は初のコンセプトアルバムになりますね。
新里
今までのHYっぽい感じというか、誰々が作ったメロディーラインだって分かるものもあるんですけど、それだけじゃなくて、リズム的に爽快なものだったり、壮大な曲調もありますからね。だから、これまでの作品の中でも曲の振り幅は一番大きいかもしれない。
仲宗根
このアルバムもそうだけど“英之、来てるな!”と思うことが増えたんですよ。
というのは?
仲宗根
彼はすごく向上心があるし、ギターだけじゃなく、ピアノに挑戦した曲もありますからね。HYは来年で15周年になるけど、音楽に対する探求心を忘れたくない、音楽をもっともっと楽しみたい、このままで終わりたくない、という気持ちがメロディーやコードにも出てるのかなって。普段さらっとメンバーが弾くフレーズを聴いて、今めっちゃ良かった!と思うことも多くなりましたからね。そういう意味でも音楽に対する気持ちがあふれているのかなって。このアルバムにもその気持ちが反映されてると思います。
なるほど。今回はラブソングをテーマに据えた作品ということで、演奏やアレンジの面で特に意識したことはあります?
名嘉
歌詞とメロディーをど真ん中に持ってきたかったので、それをジャマしないように気を付けました。あと、「パタパタ」は英之が30歳にならないと書けなかったようなコード進行なんですよ。Aメロは懐かしいコード進行だけど、そこに今の等身大のメロディーを乗せてるから、ドキッとしました(笑)。
「パタパタ」はちょっと今までにないリズム感と歌い回しで面白かったです。
新里
不思議感を出したかったんですよ(笑)。だから、サビの後ろで鳴ってるギターフレーズも聴いてもらいたいですね。これは斎藤和義さんの曲からヒントを得たんですよ。そういうチャレンジもいっぱいあります。あと、シンセも加えているし、そういう意味で遊び心をいっぱい入れてみました。それをサラッとやることもスキルですからね。
そして、映画『想いのこし』主題歌に「あなたを想う風」が起用されていますが、曲名自体も愛にあふれたいいタイトルですね。
新里
曲名は自分でもジワジワといいなぁと思うようになりました。「あなたを想う風」では自分は普通に歌って、俊にラップを入れてもらったんですよ。で、最後は泉に歌ってもらって、3人の歌声も活かせた曲になったので良かったです。
バンド内に3人も歌える人がいるのはHYの強みですからね。歌詞に関してはどうですか?
新里
「あなたを想う風」は映画『想いのこし』の主題歌に選ばれたんですけど、あの映画を観なかったら、この曲は生まれなかったですね。映画を観る前に少し歌詞を書いていたけど、映画を観た後に今までの歌詞とリンクする部分があったので、書き直したんですよ。その映画自体が命にまつわる話が多くて、観終わった後に、自分もいつ死んでしまうか分からないなと。だから、周りにいる人を喜ばせてあげたいという感情が生まれてきたんですよ。その気持ちを歌詞に付け加えていきました。
あぁ、そうなんですね。
新里
自分が気になる人がいたら、話し方も変わると思うんですよね。その人に対して、やさしい気持ちで接するじゃないですか。それに好きな人から話しかけられたら、前に乗り出して聞く耳を立てると思うんですよ。その雰囲気が愛じゃないかなと思うんですよね。その空気感を曲にしたかったから、あなたを風のように包んでいるんだよ、という曲名にしました。
話を聞くと、この曲が持つやさしさや温かみ、それだけじゃなく、深さも感じます。作品全体からも映画『想いのこし』に通底するような、何かを失って気付く大切な気持ちみたいなものが色濃く出た楽曲が多いですよね。
名嘉
もともと映画のためにみんなで書き下ろした曲も入ってますからね。
悠平さんはどうですか?
宮里
ラブソングというテーマがある中で、打ち込みや壮大な曲調があったり、いろんな表情を楽しんでもらえる一枚に仕上がったと思います。自分たちもどんどん新しいことにトライしたいし、今回はとてもうまくいったんじゃないかな。みんなが書いたラブソングもいろんな角度から歌ってるし、音楽的にも一曲一曲テンポも雰囲気も違うから、そこがいいですよね。コンセプトを決めてやるのは面白かったです。
信介さんは?
許田
今回みんなが作った曲を聴いて、切なくなったり、懐かしさを覚えたり、いろんな感情が芽生えてきたんですよ。アルバム全体から、そういうものを感じられると思います。
仲宗根
今回のアーティスト写真の衣装はグレイの中にピンクを取り入れて、アルバムのコンセプトを表してるんですよ。何かこう…切な寒いような感じというか、人恋しくなるラブソングを作りたくて。今回の7曲が一枚にパッケージされた時に、ひとつのバンドとしてものすごく色のある作品ができたと思ったんですね。英之や俊が持って来た曲にも感動したし…今回はラブソングや愛がテーマだけど、こんなに幅広い書き方をできる人に自分もなりたいなって。HYってほんとにすごく可能性を持ってるバンドだなと思えたんですよね。今回のアルバムもそうだけど、これからのバンドにも期待してほしいですね。
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『LOVER』2014年12月03日発売UNIVERSAL J
- 【完全生産限定盤(グッズ+フォトブック付)】
- UPCH-9961 3888円
エイチワイ:2000年結成。沖縄県うるま市出身。グループ名の“HY”は彼らの地元・東屋慶名(Higashi Yakena)の地名が由来。03年に発表した2ndアルバム『Street Story』がインディーズとしては史上初のオリコンチャート初登場&4週連続1位という偉業を達成し、ミリオンセラーに。現在も沖縄に在住し、全国・世界へと音楽を発信している。HY オフィシャルHP