【植田真梨恵】すごく切ない3曲だけ
ど、その中に希望がある

デビューシングルから約3カ月で届いた2ndシングルは、ピアノライヴで何度か演奏されてきた「ザクロの実」。カップリングの2曲も含め、秋冬の季節に映えそうな切なさ全開の一枚となっている。しかし、そこにあるのは“光を歌うのに必要な闇”とのことだ。
取材:石田博嗣

「ザクロの実」はピアノライヴで何度か披露されていた曲ですが、この曲を2ndシングルにした理由というのは?

「彼に守ってほしい10のこと」をメジャーデビューシングルとして出すと決まった頃から、「ザクロの実」が2ndシングルという話はしていて…そもそも個人的に、それがいいなと思っていたんですよ。なので、みんなが納得した上で「ザクロの実」を2ndシングルとして出すことになったんです。

今回のリリースの後にピアノライヴがあるから?

私はまったくそんな気がなかったんですけど、会社の人から“そらそうやろ!”って言われました(笑)。私は単純にこの曲ができた時から…2011年くらいに書いた曲なんですけど、その時からずっとシングル曲にしたいと思っていたんですよ。でも、デビューシングルでは絶対ないと思っていたので、2ndくらいで出せたらいいなとはぼんやりと思っていたという感じです。

前回のインタビューで、デビューが決まった時に曲に対する考え方が変わって、“聴いてくれる人を少しでも引っ張っていけるような曲”、“みんなで大きな夢を見れるような曲”を歌っていきたいとおっしゃっていましたが、「ザクロの実」が今回のシングルになったというのはそういう曲だということで?

デビューシングルの「彼に守ってほしい10のこと」って私の中では希望が詰まった、光を歌った曲というイメージでリリースしたんですけど、それを聴いた人たちの反応の中に“こんな綺麗事ばかりじゃないよね”とか、歌詞に対しても“そんなん無理!”とかの意見があって、“確かにそうよな”って。私としてはメジャーデビューのタイミングでは、これまでインディーズで葛藤やもやもやした部分をたくさん歌ってきたんで、そういうのもひっくるめた上で大きい夢を見ようというのがあったんですけど、そのひっくるめている部分をまだみんなには見せられていないのかもしれないと思ったんです。闇を歌うことによって光が歌えるというか、光を歌うのに必要な闇もあるって。

そもそもはどんな曲を作ろうとしたのですか?

私はアコギとかバンドとかいろいろな編成でライヴをやるんですけど、これを書いている当時、ピアノの西村広文さんとふたりで回るライヴをするようになって。その編成で無理矢理バンドの曲をやっていて…それはそれでいいんですけど、ふたりで全部こと足りるような曲、ピアノが映えるような曲を作りたいなと思って。それで、この「ザクロの実」と「サファイア!」と「よるのさんぽ」という曲を作ったんです。

“ザクロの実”というタイトルの楽曲なわけですが、この歌詞の物語にはどんなイメージがあったのですか?

呼吸感のあるピアノの曲が書きたいと思ってた時に、 “ザクロの実が~”と言葉とメロディーが一緒に浮かんだので、“あ、ザクロの実ね”と思って(笑)。それから物語を作っていったというか、“ザクロの実”という言葉からのインスピレーションでバーッと作っていきましたね。なので、ザクロの実を最初から思ってできたわけではなくて、出てきたものに対して書いたって感じです。

そうなんですね。歌詞を読んでいて、“ザクロ”は“僕”と“君”というふたりの時間の象徴なのかなと思っていました。

私の中では時間ももちろんなんですけど、“ふたり”っていうものがひとつの実だという感じですかね。それが半分に割れてしまって、自分の片割れみたいな大切な存在の人がどこかへ行ってしまったらすごく辛いだろうなという思いで書いたので。世界には自分の運命の人がいるっていう話、女の子はすごく好きだと思うんですよ。

赤い糸的な?

そうそう。すごく簡単に言うと赤い糸のような話なんですけど、私は子供の頃から、そういう人がいるんだと夢見がちに思っていたんですよね。そういう自分の半分のような存在のことを歌った歌ですね。だから、そういう人との別れが悲しいというのがポイントというよりは、そういう存在の人だったこととか、ふたりで刻んだ時間があったこととか、その人が自分の身体にまだ残っていることとか…その素敵さを書いたみたいな。そんな思想がすごく好きなんですよ。

そして、この曲をシングル用にアレンジする際、「彼に守ってほしい10のこと」と同じく、バンドで“いっせーのーせ”でやったわけですよね。

そうです。最終目標としてはバンドでやることだったので、スタジオに入って車谷啓介さん(Sensation/Dr)と麻井寛史さん(Sensation/Ba)と西村さんとで“いっせーのーせ”で音を出してみて。ギターレスでやることはわりと早いうちから決めていたので、その辺を担えるようなベースラインだったりとか、音作りであったりとかを意識しながらやっていきました。サビの4つ打ち感はデモの段階から決めていたので、そこはお願いして…ピアノで作ったデモをそのまま肉付けしたようなアレンジにした感じです。

ピアノがバンドサウンドに乗って、より饒舌になった感じがしますね。

そうですね。いい感じにゴリっとしているので。

ちょっと話は逸れますが、通常のライヴとピアノライヴとでは、やはり意識は変わります?

バンドでやるライヴも好きなんですけど、ピアノライヴの時のほうが、より何も考えずに音楽をやっているような感じがするというか。ある程度の枠組みとかキメとか、予定調和的な部分を超えていけるのがピアノライヴだと思っています。楽器が少ないからというのもあるし、ふたりの空気感で探りながら…もちろん、お客さんの雰囲気も読みながら鳴らしているので、そういう意味では空気を作っていくにはとても適したスタイルだなと思っていて、すごく“今、音楽をやっている!”という気持ちになれますね。

バンドより自由度が高い分、好き勝手できる?

好き勝手ですね、はい。

そういう意味では、このピアノライヴは自分のひとつのスタイルみたいな感じ?

そうですね。そう思っています。

なるほど。では、ピアノライヴ用に作ったものがバンドサウンドになった「ザクロの実」ですが、歌入れにはどんな気持ちで臨みましたか?

呼吸感を大事にしたかったので、サビまで全然他の楽器が入ってこないんです。歌い出しの《ザクロの実が~》はリズムを刻む楽器が何もないので、呼吸感がズレているとすごく気になるかなと思って、そこはすごく気を付けました。あと、最後のサビまで裏声でいって、最後のサビでやっと地声でガンッと出すんですけど、そこまでは淡々と進んでいくというか、わりと聴きやすく進んでいくような雰囲気にしたいと思っていました。最後のサビで一気にあふれるような感じが出せたらいいなと。

最後のサビまで裏声なのは、張り詰めている感情というか、ギリギリのテンション感が主人公の心情のように思えました。

もちろんそれもあるんですけど、ずっとワーワー歌うんじゃなくて、頭の中にある言葉をポツリポツリつぶやいているような印象というか、そういう曲だなと思っていたんですよ。だから、感情的なのは最後だけにしました。

2曲目の「ハイリゲンシュタットの遺書」は、タイトルからしてインパクト大でした。

これは、1曲目の「ザクロの実」に対して3曲目に「朝焼けの番人」を入れることを決めて、2曲目に何を入れようかといろいろ考えてみたんですけど、ハマる曲がなくて“じゃあ、作ろう!”って。ここに一番いい状態で、いいバランスで入ってくれて、なおかついい曲を書こうと思って作りました。なので、私の中で一番最新の曲ですね。ギリギリまで書いてました。

この2曲目に入れるということで、どんな曲を作ろうとしたのですか?

1曲目に生のピアノロックが入って、3曲目にはピアノ一本の曲が入るんで、バランスとしてはふわふわした、しゅわしゅわした、ピコピコした感じのものがいいなとは思っていて。あとは単純に楽しい曲かな。一聴するとただの楽しい曲のような感じにしたいというのがあって、たくさんの音が鳴っているプログラミングのイメージではありました。だから、絶対に打ち込みの曲で映えるものにしようと思っていましたね。でも、歌はしっかり歌っているみたいな。歌詞は切々と歌っているのがカッコ良いなと思って書きました。

やはりタイトルが目を引くのですが。

これはですね、今回の2ndシングルを出す時に、陰の部分を歌えたらいいなと思っていて。「ザクロの実」は自分の大切な存在がなくなってしまう曲で、「朝焼けの番人」も大切な人との関係を終わらせるような、何かがひとつ終わる…そういうのを歌った曲なんですよ。だとしたら、ひたすら切ない一枚にしたいなと思って、自分の恋人が死んでしまったとしたら、私はどんなことを歌うだろう?と思って書きました。このタイトルは後から付けたんです。

そこで、なぜこのタイトルに?

“死”の香りが、ほんの少し感じられる言葉がいいなと思っていて。この曲が出来上がってすぐの時に、たまたま行った図書館でパッと目に付いた本に“ハイリゲンシュタットの遺書”って書いてあったんですよ。

ってことは、別にベートーベンがどうのとかは関係なく?(笑)

はい(笑)。内容にはベートーベンはまったく関係ないです。タイトル的には「ザクロの実」「朝焼けの番人」が“○○の○○”っていうタイトルなので、せっかくだから2曲目もそうしたいと思って(笑)、“の”でつなぐ“ハイリゲンシュタットの遺書”っていうタイトルにしました。

そうか…、何か意味があるのかなと思ってめっちゃ調べましたよ。

(笑)。何か辿り着きました?

着かなかったので、謎だったんです(笑)。

ほんとにちょっと死の匂いを漂わせたかっただけなんで…ごめんなさい!(笑)

この曲は歌い方が独特なのですが、歌う時のテンション感というのは?

結構いろいろ試しながら歌ってみたんですよ。もうちょっと可愛い感じで歌ってみたりもしたんですけど、結果的にふてくされた感じで歌ったものが選ばれました。まぁ、自分で選んだんですけどね。それが一番いいバランスで聴こえてきたので。サウンドはキャンキャンピコピコしているんだけど、歌は芯の通ったようなものにしたかったので、なるべく最後のサビ以外は淡々と歌いました、この曲も。

歌詞で言っていることは結構ヘヴィなのに、歌い方だったり、その表現の仕方でキャッチーになっているというのは感じました。

そうですね。耳障りはすごく軽やかで楽しい曲なのに、なんかちょっと切ないくらいのニュアンスで伝わったらいいなと思っていました。

聴き終わった時に“なんか重たいものが残ってるぞ”みたいな感覚がありましたよ。

そう!(笑) “なんで?”みたいなのができたらいいなと思っていました。

3曲目の「朝焼けの番人」は、曲としてはどのくらいからあったのですか?

「ザクロの実」と近い時期に書いていました。ちょっと「朝焼けの番人」のほうが早いかなという感じですね。この曲はピアノがバンドの中に入るとは思っていたんですけど、ピアノ一本でやるとは思っていなくて。単純に素敵なスローバラードになればいいなと思っていたんですけど。作っている時、私自身がすごく感情的になっていて、うぅ~ってなっているまんまに作った曲で…。

この主人公、病んでるよね?

これは心の中をごっそり切り取ったような歌なので、主人公というか…私自身です(笑)。

なんか、すごい刺さったんですけど。

えっ、病んでるんですか!?(笑) どの辺ですか?

主人公の男の人が出て行って、彼女が追いかけてきてくれるのに強がってしまっている、その自分勝手さ、幼稚なところとか。謝れば済むところを強がってるというか。

すごい!(笑) インタビュー、今で6社目なんですよ。で、いろんな方とお話をしているんですけど、みんな解釈が違うので…そうですか! いいお話です。

でも、真梨恵さんは女性の視点でこれを書いたわけですよね。

はい。普通に私は女の視点で書いていて…っていうか、単純に実体験です(笑)。なので、“僕”っていうのが私。…って、それぞれにそれぞれのドラマとして曲がみなさんの中で成長していることがとても嬉しいので、あまり本当のことを言いたくないんですよ。なので、今日はひたすら感動しています。視点が違うとこんなに解釈が変わるんだというのが面白いです。ちなみに、今、おっしゃっていただいたお話とは全然違います(笑)。

違うんや(笑)。

でも、それでいいです。それにしましょう(笑)。

(笑)。この曲はグランドピアノ一本でやられているのですが、最初からピアノ一本でやろうと?

単純にグランドピアノで曲を録ってみようという。そういうこと自体が初めてで、何曲かやってみたい中に「朝焼けの番人」があったんです。で、録ってみた音源がとっても良くて。その時にしか出せない空気感みたいなものがあったので、これはせっかくだからちゃんとCDに収録したいなと思って入れました。

では、そんな3曲を収めた、今回のシングルはどんなものができましたか?

いろんなことがタイミング良く合っていたのが嬉しかったんですけど…もちろん、それはピアノライヴ前っていうのも。私は最近になって、より音楽を聴くのが楽しくなってるんですよ。夏の暑い感じから、ちょっと寒くなってきた今の季節、イヤフォンとかで聴きながら町を歩いていると、今まで以上に音楽が良く聴こえると思うんですね。秋冬というのは。なので、そういう季節にぴったりな3曲を収録できたなって。どれも“大事なものを失う”というところがテーマになっているので、すごく切ない3曲なんですけど、その中に希望があるというか。それでも日常が続いていくことは寂しくもあるけど、とてもやさしいことだと思うんですよ。ずっと日常が続いていって時間が経っていくっていうのは、また新たなことへのつながりなので。だから、そういう希望みたいなものも少しずつ見い出してもらえればいいかなって。ひとしきり切なさに浸ってもらって(笑)。

年明けにはピアノライヴが控えているわけですが、どんなライヴが期待できますか?

今年の頭にもやったんですけど、私は同じことをするのが嫌なんですよ。だから、また新たなところを見せられたらいいかなと思っています。まぁ、毎回その場の空気でやっていくというところがあるので、同じものには絶対にならないと思うんですけど。音楽に打ち込んでいる私の姿を観に来てもらえたら、とても素敵な夜になると思います。
「ザクロの実」
    • 「ザクロの実」
    • GZCA-4141
    • 2014.11.19
    • 1296円
植田真梨恵 プロフィール

ウエダマリエ:中学卒業を機に、歌い手となるために故郷福岡から、単身大阪へ。15歳で作詞作曲を始め、16歳の春、力強いハイトーンヴォイスと怖いもの知らずのライヴパフォーマンスがレコード会社スタッフの目に止まる。音源制作と並行してライヴ活動も精力的に行なっており、14年1月には渋谷CLUB QUATTROと梅田CLUB QUATTROにてソロライヴを実施。そして、同年8月にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たした。植田真梨恵 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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