L→R 小高芳太朗(Vo&Gu)、合田 悟(Ba)、櫻井雄一(Dr)、山下 壮(Gu)

L→R 小高芳太朗(Vo&Gu)、合田 悟(Ba)、櫻井雄一(Dr)、山下 壮(Gu)

【LUNKHEAD】“救われたっていいんだ
”、それがテーマのアルバム

その培ってきた経験値の重みが礎や骨組みとなりながらも、非常に新鮮な響きが鳴り広がっている12の楽曲たち。LUNKHEADらしい切迫感はそのままに、柔らかな温かさや豊潤さをも感じさせる――最高傑作の10枚目!
取材:竹内美保

ヒリヒリするような切迫感は変わらずありながら、温かさというか、包容力をすごく感じるアルバムでした。今作に向けたビジョンはどういうものだったのでしょう?

小高
いつもそうなんですけれど、1枚アルバムを作ると次はその真逆なものを作りたくなるんです。前作『メメントモリ』は“死”をフィーチャーした静かな情念を表現したものだったので、今回は“派手なの作ろうぜ”と。そうしたらイケイケの曲しかできない病になってしまったんですけど、ある時ピョコッと「うちにかえろう」ができたんですよ。そこで温かみっていうのがカチッとハマったのかな。これはすごく存在感のある曲になりましたね、リードももぎ取ったし。

こういう曲がリード曲になるのは久々ですよね。

小高
8年振りかな? 「夏の匂い」以来。
山下
最初は周りが“これいいんじゃない?”って言っても、小高は“LUNKHEADっぽくないかも”って心配してたんですけどね。
小高
あまりにも俺っぽすぎるので。『メメントモリ』は友達のこととか周りの大事な人を失って生き残っちゃった人がテーマになってて、自分は俯瞰で見てる感じだったんですよ、“死”っていうものに対して。それに比べて今回は自分のことを歌った曲がすごく多くて、ある種すごい“俺感”が出ているアルバムだなと。小高芳太朗の。自分の中での意識として、“俺がLUNKHEADだ”っていう気持ちがすごく強かった…それが歌詞にもメロディーにも出ている気がします。だから、「うちにかえろう」が自然とリードになっていったのかな。あと、「シンフォニア」があったのも大きい。アルバム全体に感じてくれた温かさは、たぶん「シンフォニア」が軸になっていると思うんです。ここで歌っている“救われたっていいんだ”っていう感覚が、このアルバムのテーマになっている…そこはすごく自分の中で生々しい感覚だったし。だから、前作とは対照的な…モロ事故ったことの曲とかね(笑)。

「僕たちには時間がない」ですね。でも、生き急ぎながらも人生を大切にしている感じは出ていますよね。

小高
そうなんですよ。ほんとにいつ死ぬか分からないな、と思ったから。で、たぶんピン!ときたと思うんですけど、2番の《明日食べたい物がある》っていうフレーズに。

「はるなつあきふゆはる」の《今日は何か美味しいものを食べよう》を思い起こしました。そう、あの曲はやっぱり『メメントモリ』の一番キモだったので。だから、「僕たちには時間がない」の2番の歌詞はすごく好きだし、一番生々しいとも思います。

合田
今回の歌詞は一番、小高らしいかもしれないです。かつ、わりと攻めた歌詞が多い。分かりやすいというか。今まではメンバーとしても勘ぐるようなところがあったんですけど、今回は1回その歌詞を見ると言いたいことが分かるんです。

「誰か教えて」とかは《殺したい》とまで言ってるし。でも、これは本音だと思いますし、心情としてすごく分かる。

小高
最初はちょっとオブラートに包んでいたんですけれど、“言ってしまえ!”と思って。これは神戸の女の子の殺人事件をニュースで観て、すごくしんどい気持ちになって…その犯人に対しての怒りが込められているんですけど。

こういう曲って主役になっちゃいけないんだけど…。

小高
このアルバムを象徴してる感ありますよね、逆説的に。全体的な温かさの中にあるから、余計に浮き彫りになる。
合田
きれいな曲なんですけれどね。非常に美しい。

サウンド面では、ますますアンサンブルの妙が表れていますね。

小高
そうですね。結構まぐれも多いんですけどね。まぐれで“いいね。これカッコ良い”っていうのが出てきたり。

「金色のナイフ」とかすごく面白いですよね、構築が。

小高
そうなんですよ。これは一番化けた曲。

ギターとかクセのある音色がそこここで飛び込んでくる。

山下
結構隙間があったからブチ込んじゃいました(笑)。昔あったどうでもいいこだわりがなくなって、“何やってもいいかな”っていう感じなんですよ。いろんな挑戦をしてますね、今回。

ラストの「玄関」が醸し出している雰囲気もいいですね。

小高
これは何もしてないんですよね、ずっと同じというか。
山下
ここまで一丸となってループするっていうのは、逆に勇気がいることなんですけどね。でも、それをやっちゃっても大丈夫なのは、曲の持っている力なのかな。

ベースも珍しく置きにいっているというか。

合田
こういうほうが聴きやすいんですよ。今回のアルバムはいろんな人にアピールしたいと思ってもいたので、“なるべく分かりやすい表現を”というのは自分の中のテーマでした。
小高
詞もスッと書けましたね。で、サビの輪唱のところを書いた時にもう、“家”というアルバムタイトルも浮かんで。LUNKHEADはファンにとって家みたいなバンドでいたいなっていう感覚はずっとあったんですよ。でも、「シンフォニア」のPVを観たら、映っているファンの子たちがみんなすごくいい顔で、愛を感じて。それで、どちらかと言うとこの子たちが俺らの家なんだなって…その感覚が“一緒に救われていいんだ”っていう感覚とリンクして“家”っていう言葉はやっぱりいいな、と思えましたね。

今作って一枚の全体像のイメージというよりも一曲一曲粒揃いの楽曲で構成されたアルバム、という印象が強いです。

小高
あー、そうですね。そういうのを作りたかった! 『地図』(2004年6月発売の1stアルバム)のあの詰め込んだ感、あの感じを意識したから、それはすごく嬉しいですね。
山下
『地図』の「白い声」はミニマムな世界、家を飛び出していくみたいな感じの曲で。で、10年経って10枚目のアルバムでやっぱり家なのかと思って。でも、あの頃の家と10年経った家とは全然意味合いが違うし。だから、すごくいいタイトルだなって思います。“家”って。
『家』
    • 『家』
    • TKCA-74217
    • 2015.04.01
    • 3132円
LUNKHEAD プロフィール

ランクヘッド:1999年に愛媛県で結成され、04年1月にシングル「白い声」でメジャーデビュー。10年4月にオリジナルメンバーの石川 龍(Dr)が脱退するも、桜井雄一(ex.ART SCHOOL)を迎えての新体制となる。結成20周年となる19年には、4月に12枚目のアルバムとなる『plusequal』を発表。LUNKHEAD オフィシャルHP

OKMusic編集部

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