【見田村千晴】直球勝負、丸腰で立ち
向かっている作品

シンガーソングライターの見田村千晴の詞は、“感じていても、言葉にするにはためらう”といった人間の本質にあえて鋭く切り込む。そんな彼女が完成させた1stアルバム『正攻法』には、どんな想いが詰まっているのか訊いた。
取材:桂泉晴名

“正攻法”とは、シンプルで力強いアルバムタイトルですね。

サウンドも曲の書き方も本当に直球勝負というか、丸腰で立ち向かっていることをタイトルにしたかったんです。でも、どの言葉が一番はまるのかずっと探していて…タイトルはいつも悩みますが、今回も出してはボツり、出してはボツりで、最後に決まりました。

1曲目の「はなむけ」は《感じるな、考えろ》という詞が新鮮でした。普通は“考えるな、感じろ”と言いますよね。

いろいろな経験をすればするほど、新しいことを始めたり、違うことにチャレンジしたりするのって、怖くなるじゃないですか。若い時なら、後先考えずがむしゃらにいけるけど、“失敗したらどうしよう”と思うとびびってしまう。でも、怖いと思ってできなくなるのは、すごくもったいない。それなら感情は1回無視して、“こっちのほうが絶対正しい”とか、“こっちのほうが絶対自分自身だ”と合理的な考え方を優先させたほうがいい。だから“感じるな、考えろ”という詞になっています。

そんな「はなむけ」はサウンドも華やかで爽快という。

変拍子になっていたりして、アレンジで勢いが出ました。

1stシングル「わたくしどもが夢の跡」を挟み、3曲目の「LIFE SONG」は大切な人への想いを歌った切ない楽曲ですね。

大事な人って、生きてくれているだけで良かったりするじゃないですか。最終的にはそれ以外は何でもいいかな、と。「LIFE SONG」はアルバムの柱になっている曲で、ライヴでも育てていきたいですね。ピアノの弾き語りでやっていきたいなと思っています。

アルバムの中で、今までにないアプローチをした曲は?

6曲目の「バンドマンずるい」は新しいことにチャレンジしました。ずっと“バンドマンずるい”というタイトルの曲を作りたいと思っていて、自分の頭の中ではすごくカッコ良いバンドアレンジだったんですよ。でも、プロデューサーの松岡モトキさんに話していたら、“この詞でカッコ良いバンドアレンジだったら、そんなにずるいと思っていないように受け取れない?”と言われて。で、“確かに!”ってなって、だったら“主人公の女子が宅録で作ったイメージにしよう”と。それで今回のようなアレンジになったんです。松岡さんは普段そんなに打ち込みの曲をやらないですし、私も今までやったことがないんですけど、わりと面白がってやってました。プリプロしながらみんなで爆笑、みたいな感じで(笑)。

「バンドマンずるい」は“よくぞここまで!”というほど、バンドをうらやむ気持ちが赤裸々に語られていて面白かったです。やっぱりソロアーティストの立場から見ると、バンドはうらやましいものですか?

もう、ずるいですもん(笑)。私は合唱部だったというのもあると思うんですけど、“グループ萌え”の傾向があるみたいで。“みんなで夢に向かって!”みたいな。実際はそんな甘酸っぱいものじゃないんでしょうけど。

憧れの気持ちと言えば、9曲目の「ガール」もありますが。見田村さんは複数の女性アイドルグループを応援していて、その熱い想いが込められているそうですが。

自分のあふれる思いを書きました。本当は“アイドル”というタイトルにしたかったんですけど、“それはちょっと”と周囲から言われてしまって(笑)。

見田村さんが女性アイドルにはまった要因というのは?

他の人からは“アイドルになりたいの?”とか“曲がいいの?”とか言われるんですけど、ただキラキラしているかわいい女の子を見ているのが楽しいんですよね。でも、この気持ちをうまく言えなくて…。アイドル好きって言っても、人それぞれ、いろいろな角度で見ているから。異性として見ている人もいるし、楽曲として見ている人もいる。私は“その笑顔の裏で何を考えているのかな?”とか、そういうことを想像して楽しんでいます(笑)。

見田村さんのアイドルへの思いは全てこの曲に入っている、と(笑)。

いえ、まだいけますね(笑)。「ガール2」とか作りたいですもん。成長して、「レディ」という曲になっているかもしれないけれど(笑)。

サウンドはアコーディオンが入っていたり、かわいい感じで。

さわやかですね。私からも松岡さんに“キラキラした曲にしてください”とリクエストしました。ちょっと思ったんですけど、アイドルに憧れる気持ちって、自分の中のピュアな部分とか、純粋な部分の投影なんじゃないかなって。普段の生活でそんなピュアではいられないけれど、アイドルを見ている時は自分のピュアな部分を拡大して映しているというか。そういった部分を確認しているのかな、と思います。

その一方で7曲目の「愛だろうが 恋だろうが」は、見田村さんらしい社会常識に対する反骨精神が率直に表れた曲だと感じます。

例えば、“アーティストは恋していたほうが良い曲書けるよ”とか“いろいろな恋をしたほうがいいよ”と言われるんですけど、それに対して“そうですよね”と答えながら、どこかで“じゃなくても、いい曲書くわ!”と心の中で思っている自分がいて。男性アーティストはあまり言われないから、“なんで女にだけに言うんだよ!”とか。でも、“そんなの関係ない”という気持ちを歌っています。

見田村さんの詞は、自らの心を追い込みつつ、最後は肯定するものが多いですよね。

根本的にはポジティブな人間なので、“なんとかなる”と思っているところがあるんですよ。最終的には、曲もそういうふうになっているんですよね。

今回、初のフルアルバムを作ってどんなことを感じました?

フルアルバムで曲数があるからこそ、「バンドマンずるい」とか「ガール」といった曲が入れられたし、自分の幅を見せられたかなと思います。また、今までのミニアルバムの曲も2曲ずつ入っているので、松岡さんや今回のチームの2年間、そしてデビューしてから1年半の私がこれまでに“こんなこと考えていたな”といったことが全部詰まったアルバムになっていると思いますね。実は去年、“自分はこの先、ずっと歌を歌っていけるのか?”と結構考えていたんですけど、最近になって“私は歌を歌うのが一番好きだ。だったらやろう!”と覚悟が決まって。今はどんなかたちであれ、ずっと歌っていきたいという気持ちでいます。
『正攻法』2015年04月22日発売ビクターエンタテインメント
    • 【初回盤(DVD付)】
    • VIZL-823 3780円
    • 【通常盤】
    • VICL-64347 3240円
見田村千晴 プロフィール

ミタムラチハル:岐阜県生まれ。2011年タワーレコード主催オーディション『Knockin’on TOWER’s Door』にて準グランプリを獲得し、同年6月に1stアルバム『いつかのように』をリリース。13年9月、ミニアルバム『ビギナーズ・ラック』で待望のメジャーデビューを果たす。同作収録の「悲しくなることばかりだ」は桑田圭祐が年末に選ぶ『邦楽ベスト20』の4位に錚々たるアーティストに並んでランクインした。15年3月には第1期集大成となるメジャー1stシングル「わたくしどもが夢の跡」、4月にメジャー1stフルアルバム『正攻法』を発表!見田村千晴 オフィシャルHP
見田村千晴 オフィシャルTwitter
見田村千晴 オフィシャルFacebook

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