L→R 渡邉 貢(Ba)、JILL(Vo)、本田 毅(Gu)、藤田 勉(Dr)

L→R 渡邉 貢(Ba)、JILL(Vo)、本田 毅(Gu)、藤田 勉(Dr)

【PERSONZ】“ひとりじゃない”って
いう意味合いを知るというか もっと
大きなものがあることを歌いたかった

“もう一度武道館でライヴをやります!”というJILL(Vo)の言葉から始まった“ROAD TO BUDOKAN”。ついにそれが現実のものとなり、その夢の凱旋の前に20枚目となるオリジナルアルバムが完成した。
取材:石田博嗣

“30周年になったら、もう一度武道館でライヴをやります!” というJILLさんの言葉で始まった、“ROAD TO BUDOKAN”のプロジェクトなのですが、そもそもこの言葉が出た背景というのはどういうものだったのでしょうか?

JILL
それは4年前…震災のあった年になるんですけど、PERSONZとしては久々に大規模なツアーを2月から4月にかけてやっていて、東北地方は24年振りになるんで、すごく楽しみにしていたんですけど、あの震災が起きたんですね。私たちはツアーで博多にいたんですけど、やっぱり不安だったし、自然とみんなとも地震の話をしていたし…被害の規模もだんだん分かってきたしね。結局、東北は7月に延期になったんですけど、ツアーをもう一度回った時って世間的には自粛モードだったし、今までは“今日はライヴだ! 騒いで帰ろう!”って感じだったお客さんも、みんな神妙な面持ちなんですよ。自分たちも不安はあったけど、ライヴをやって少しでも気持ちが晴れるなら!って感じでツアーを続けていた…それが精一杯だったんですよね。精神的にも重たかったし。で、東北を回った時、そのファイナルの新潟公演の前日に身近なスタッフやメンバーと食事をしている時に、“あと数年後に30周年ですよね。武道館とかできますかね?”って誰かに言われて、“いや〜、できないよ〜”っていう話をしてたんですよ。そんな話をした次の日に…結局、2月から始まったツアーがようやく終わるような節目だったから、自分でも気持ちがストンと落ちたのか、そのアンコールで言っちゃったんですよね(笑)。一晩の間にどれくらい考えていたかは覚えていないんですけど、目の前に不安感がある状態で生きているとすごく閉塞感があったし、なんとなく日本全体がそういう感じだったし、“復興っていつなの?”ってなっている中で、目標や明日への希望みたいなものが薄れていっていたから、自分でもどうすればいいのかと思っていた…もちろん、被災地に行ってボランティア活動するとか、募金をするとか、チャリティーライヴをするのもひとつの手段ですけど、自分たちが目標を持つっていうことも再生のひとつなのかなって。で、“30周年まで4年ぐらいあるから、やれないことはないかもな”って気になって、つい言っちゃったんです。他のメンバーはそんなこと思ってなかっただろうけど、会場のお客さんから“いいね!”っていうレスポンスがすぐにあったから、その時に“やれるかも!”って始まった夢ですね。

貢さん、JILLさんがそう言った時はどうでした?

渡邉
えっとね、結構、会場がアツかったんですよ。もうビショビショになってた記憶が(笑)。
JILL
7月だったしね(笑)。
渡邉
僕も前日の食事の席に一緒にいたから、その時に“武道館”という言葉は聞いていたんですよ。でも、その当時の僕らって、冗談でも“武道館”なんて口に出せるような状況ではなかったんですね。過去にやったことがあるんで、武道館の規模感とかは分かっているから、JILLさんが言った瞬間はメンバー全員、冗談だと思ってました(笑)。
JILL
私自身もそう言ったものの“できるのかな?”って思ってましたからね。ただ、言っちゃった時のお客さんの反応が素直に“おー、いいね! 武道館行こうよ!”だったから、逆に押されたところはありますね。“そっか、行っていのか!”って(笑)。
渡邉
それほど、非常に会場がアツかったと(笑)。きっとお客さんも少なからず、JILLさんが言ったような気持ち…ポジティブな目標を持ちたいっていうか、そういうものがあったんだと思いますね。だから、その言葉がハマった、みたいな。

もともとPERSONZは夢に向かう力を歌っているだけに、JILLさんから“武道館”という言葉が出た時に、その場にいたお客さんは未来に対して光が見えたんだと思いますよ。

JILL
うんうん。自分自身も言ったことで、光を見出しているわけだしね。そういう意味では、がむしゃらに前に向かうだけじゃなくて、目標を持たないことには、みんなが一丸になることはないって、今振り返えると思いますね。最初は“嘘〜!”とか“何言ってるの?”って言われていたのが、だんだんかたちになっていった状況を体現しているんで。この武道館の前に渋谷公会堂という大きな場所があったし、さらにその前には赤坂BLITZというのもあって、自分たち的には赤坂BLITZをやった時に“やれるかも!?”って思えた…その赤坂BLITZの時に“武道館に行く前に渋谷公会堂に寄って行きたいの”って言っちゃったわけですから、またそこでもみんな慌てたわけですよ(笑)。ただ、言っちゃったことが本当に無理なことだったら、誰も相手にしてくれないし、ただの絵空事になるんでしょうけど、“じゃあ、やろう!”って言ってくれる人が集まってくれたり、自分たちのポジティブな気持ちもバンドだけに向けるんじゃなくて、外にも向けるようになったし…だから、ライヴハウスから始まって、ホールに行って、アリーナに行くっていう図式を数年でやろうとしてます(笑)。

でも、“もう一度武道館でライブをやります!”と言ったものの、“これは無理かも…”と思うことはなかったのですか?

JILL
四六時中思ってましたよ。やっぱり現実ってリアルと背中合わせじゃないですか。“お金はいくらかかるんだ!?”とか考えないといけなかったりするけど、そこでいろんな人に巡り会えたというのは大きいですね。それだけ自分たちのほうからオープンマインドになった…インディペンデントで活動をやっていた時は、過去の人たちとのつながりもなくなっていたし、自分たちで企画から全てをやっているから、目先のことしか考えれなくなってたんですよ。だから、意外とクローズしてしまっていたのかもしれないですね。あと、バンドの演奏力に関しても“武道館をやるんだったら、もっとこうできないと!”っていう意識にもなりましたね。若い頃みたいに勢いだけで突っ走れないから(笑)、みんなそれぞれに“もっと上手くなりたい”って危機感を持ってました。私も“歌うことってどういうことなんだろう?”って考えて、50歳手前でヴォイストレーニングを始めたり。やっぱり、“PERSONZっていいよね”と思わせたいですから。それには演奏力なんで。
渡邉
今振り返るから分かることかもしれないけど、バンドも当時は先のことを考えたり、高い目線で物事を見られる状況ではなかったので、目の前にあること…例えば、ツアーをやってるならツアーのことだけで、その次の予定は考えられなかったんですけど、遠くに大きな灯りがあることで、そこまでのプロセスを考えられるようになったんですよね。そうやって目標に一歩一歩近づいていると実感した時に、バンドのほうも“これはもう絵空事ではないぞ!”って思えて、いよいよ前に転がり始めたっていうのかな。

その時に、さっきJILLさんが言ってたようなクローズしていた原因というか、なかなか広まっていかないことの理由が見えたとか?

渡邉
それはありましたね。要は同じところを回ってたんですよ。マラソン大会で校庭内をグルグル走ってたけど、学校の外に出たみたいな…変な例えですけど(笑)、そういう景色の見え方に変わりましたね

校内では同じ人にしか会わないですけど、外に出ることで知り合いだったり、いろいろな人に出会いますしね(笑)。

渡邉
そうですよね(笑)。
JILL
バンドを30年やるっていうのは私たちの世代が初めてでしょうし、解散しちゃっているバンドも多いけど、今までやり続けている中で、これってないことはないジレンマですよね。ずっと順風満帆の人なんかいないわけだし。でも、こういうバンドもいるっていうのが世の中に分かってもらえれば、後輩にとってもいいんじゃないですかね。24年間もブランクがあるのに武道館のステージに立つバンドっていましたか?って(笑)。

初ですからね(笑)。その武道館の前にリリースされる今回のアルバム『夢の凱旋 -TRIUMPH OF DREAM-』なのですが、やはり武道館を見据えての作品となるのですか?

JILL
前作の19枚目のアルバム『ROCK'A'THERAPY』(2010年発表)を出したあとも新しいアルバムを作りたい、作らなきゃ、って毎年思っていたんですけど、そこにもジレンマがあったんですよ。ツアーをやっているとですね、お客さんに望まれているのは、やっぱり久々に観るPERSONZだろうから、新曲よりも“バンドブームの頃のあの曲を聴きたい!”みたいな空気を感じるんですよ。そういう意味では、まだ新譜を生み出す力がなかったんだと思うんです。でも、武道館をやるっていう目標を掲げて、そのための活動を続けてきて…その途中で一枚作っていたら、また違ったと思うんですけど、それがなかった分、すごくパワーの詰まったアルバムになりましたね。目標がはっきりしているし、聴く人に何を伝えたいかもはっきりしているし。なので、武道館を目の前にして、みなさんに聴かせたい内容が詰まってます。

曲作りの時から、例えば武道館で演奏することを意識したり?

JILL
特にそういうのはないんですけど、今までは渡邉くんがひとりで担っているところがあって…それは彼がPERSONZのことを一番分かってるからなんだけど。今回はみんなで一緒に作ったんですけど、さっき言ったみたいに、他のメンバーは違う方向を見ていたりするから、それをまとめる必要があったというか。だから、“本田くんにはこういう曲を作ってもらいたい”っていうオーダーを出したり。

「TRUST ME!」は本田さんらしい曲ですよね。ライヴの絵が浮かぶし、サビで目の前が開けるのがPERSONZらしいし。

渡邉
そうですね。ああいう曲はギタリストにしか作れない。
JILL
でも、1曲目にあれが出てくるわけではないんですよ。オーダーをする以上はこっちも妥協はしないんで、何回か作り直してもらって。なので、その中で本人たちがPERSONZでやりたいもの作ってくれたというか。

だから、80年代や90年代のテイストではなく、今のPERSONZの音になっているんでしょうね。「QUEEN OF ROCK」は新鮮でした。

JILL
うんうん。あれが出てくるまで彼らを絞るのが大変なんですよ(笑)。でも、それがバンドのやり取りだから。何が来ても“いいよ〜”って入れるんじゃなくて、しのぎを削ったものを入れたいですからね。だから、“Produced by PERSONZ”になっているところが、過去のアルバムと大きな違いですね。
渡邉
リズム録りをみんなと一緒にやったのもすごく久しぶりだったし、バンドらしいレコーディングでした(笑)。

確かに。音を聴いて現役感のあるアルバムだなって思いました。

渡邉
逆に現役感のないアルバムって?(笑)

打ち込みで作ったフレーズを生の楽器に差し替えただけのような(笑)。そういうものじゃなくて、ちゃんとバンドの熱が感じられました。

渡邉
ずっとライヴをやっていたから艶はありますよね。このアルバムを作るためっていうか、しっかりと積み重ねられてきたものがあったんで、演奏自体に何の不安もなかったです。
JILL
24年振りに武道館を目指すわけだから、ツアーもそういう気持ちで臨んでいたし、そこでスケールアップもしてきたし…やっぱり表現力をもう一回磨く必要があったんですよ。だから、そこはこの4年の間に成熟したところかもしれないですね。

歌詞についてもうかがいたいのですが、“夢”“DREAMER”“ひとりじゃない”“自分を信じる”とPERSONZにとって重要なキーワードが多く使用されているのが印象的でした。

JILL
昨年ツアーを20本ほどやってきた中で…あのツアーってライヴハウスとの決別的な意味合いがあったんですよ。スタンディングでロックな盛り上がりを求めるんじゃなくて、もっと表現力のあるバンドになっているわけだから、観る人が観やすいようなものにしたいってのがあったんです。いつも「DEAR FRIENDS」が最後に演奏されて、みんながオー!ってなる…そういう図式がある中で、あれ?って思ったというか。あの曲は当時すごく葛藤がある中で生まれたものなんですけど、その歌詞の向こう側にあるものを伝えられないかなって思ったんですね。それって今までのPERSONZの曲になかったので、そこを書きたいと思ったのが、最初に出てきたこのアルバムのコンセプトなんです。「DEAR FRIENDS」の中で《ひとりじゃない》って歌ってますけど、“ひとりじゃない”っていう意味合いをもう一度考えて、それを違う曲の歌詞に託していたり…1983年の結成の時に「DEAR FRIENDS」はもうあったので、まさに30年経って“ひとりじゃない”っていう意味合いを知るというか、もっと大きなものがあることを歌いたかったというか。

かつてはアルバムタイトルにも掲げられた“DREAMERS ONLY”というタイトルの曲もありますしね。

JILL
この曲はずっとライヴでは歌っていたんですけど、ちゃんと音源となって出ていくと、また全然違った伝わり方をすると思いますね。今のこの時代に50代のバンドが“夢”や“愛”って歌ってるのってそうそういないと思うし。まして、女性が歌うっていうことでもね。どうしても女性は恋愛ものを歌うようになるので。そこは昔から変わらないPERSONZの歌詞の世界ですね。

そんな今回のアルバムにどんな手応えを感じていますか?

JILL
今回の武道館を象徴する曲というか、1曲目に「SONG OF CELEBRATION」って曲があるんですけど、私には渡邉くんが作ると分かっていたし、まだ曲がなかった時からイメージがはっきりとあったんですよ。“武道館について来てね!”って言ってファンと夢を共有してきた中で、それを現実化してステージに出て行く時に、高らかにファンファーレが鳴って、ここから始まる…そういうすごく期待感のあるアルバムですね。これで終わるわけじゃないし、ここからまた違うPERSONZの音楽が生まれてくるような。30年目にして初めて作る1stアルバムみたいな気がします。初期の頃のアルバムってライヴでやっていた曲を入れていたので、そういう安堵感があるんですよ。曲に馴染みがあるんですよね。だから、ファンの人が初めて聴いても、初めて聴いた感じがしないんじゃないかな。

確かに。それこそ「DEAR FRIENDS」しか知らない人が聴いても、PERSONZらしいと思うようなアルバムかなと。

JILL
だと思いますね。一応、分かりやすいように「ALONE」って曲があって、その次に「DEAR FRIENDS」が来るように作ってあるんですよ。「DEAR FRIENDS」は他人に語りかけているような歌なんだけど、“ひとりじゃない”っていうのは自分で自分に対して責任を持つっていうところから始まっていて…なので、友達がうなだれているから慰めてあげる歌ではないんです。20歳そこそこだったら分からないかもしれないけど、成熟しているリスナーだったら分かってもらえるんじゃないかな。インディペンドでしっかりと自立していて、“ひとりじゃない”って思えるというのは、今の50歳をすぎて、なおかつやりたいことがやれている自分たちだから歌えるのかなって。50代が何をやってるんだ!っていうところが社会的にあるけど、50代がこんなに活きのいいアルバムを作っちゃうわけ?って(笑)。今、若い子のほうがジメジメしているしね。

貢さんは?

渡邉
次にどんなものを作るのかなっていう期待もさせる…もう20枚目になるんですけど、ある種1stアルバムみたいな作品にもなったし、次もいい作品を作ってくれると期待を持ってもらえるようなアルバムになったと思いますね。

もう“次”という言葉が出てくるのもPERSONZらしいです。

渡邉
あのね、〆切がすぎてからも曲を作っていたんで…
JILL
在庫があるんだ! 余裕だね(笑)。
渡邉
私、持っております!(笑)

では、最後にうかがいたいのですが、24年振りの武道館はどんなライヴになりそうですか?

JILL
言葉では言い表せないんですけど(笑)、とにかくバンドは一番いい状態です。きっと1曲目から泣く方もいらっしゃるだろうし、最後まで観たらいい涙が流れてくれるようなライヴ…今まで私も堪えてきているから、大泣きするかもしれないし。“これは汗だ!”って言い切ってたけどね(笑)。いい汗と涙が流せるライヴになるんじゃないですかね。そういう意味では、大きなものがあるっていうよりかは、ひとりひとりの胸に残るっていうか。“あぁ、やっぱりPERSONZっていいな”っ思って、またライヴが観たくなってもらえれば一番いいですよね。

アルバムのタイトルからして“夢の凱旋”だし、夢に掲げた武道館のステージに戻るというのはドラマがありますよね。

JILL
自分でも“なんてドラマチックなタイトルを付けちゃったんだろう”って思いますけどね(笑)。このタイトルを伝えてから、リスナーのみんなにもイメージができているみたいで、“旗を振りたい!”って言ってくれていて、まさに“そうだよね”って。

貢さんはどうですか?

渡邉
全て言ってくれたので、もう何もないです(笑)。いいライヴにします!
『夢の凱旋-TRIUMPH OF DREAM-』2015年06月03日発売EMI Records
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • UPCH-29189 3980円
    • 【通常盤】
    • UPCH-20390 3240円
PERSONZ プロフィール

パーソンズ:1984年結成。87年にリリースしたミニアルバム『POWER-PASSION』がインディーズチャート1位を獲得し、同年9月にアルバム『PERSONZ』でメジャーデビューを果たす。TBSドラマ『ママハハ・ブギ』に「DEAR FRIENDS」が起用されると大ヒットを記録。その後もエッヂの効いたメロディアスでポップなサウンド、そして存在感あふれるヴォーカルで多くの人々を魅了し続け、15年6月には24年振り3度目となる日本武道館公演を開催した。PERSONZ オフィシャルHP

OKMusic編集部

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