【シシド・カフカ】何が起こるか分か
らないセッションは、インプットとア
ウトプットの繰り返し

ドラマ『医師たちの恋愛事情』主題歌「Don’t be love feat.斉藤和義」が話題のシシド・カフカの新作は、“K⁵(Kの累乗)”と名付けられたセッションミニアルバム。シシド・カフカのミュージシャンシップとセンスが全面に発揮された作品になった。
取材:榑林史章

《ビヨーン》という歌詞は 私なら一生
かかっても出てこない

セッションミニアルバムを出すという企画は、以前から考えていたのですか?

いろんな方とセッションしてみたい願望はあって、ステージでそれができたらいいなと思っていました。でも、その時はタイミングがなかったのと、自分の中で今一歩踏み出す勇気がなかったのもあって…そこで今回レーベル移籍のタイミングで “その企画、盤にしませんか?”という話になったんです。9月でデビュー丸3年になりますし、自信が付いたというのとは違うんですけれど、シシド・カフカの色というものは、その場で演奏することで、それ自体が色になるという感覚も養われていましたので、この機会にぜひにと踏み出した次第です。

参加アーティストそれぞれのテイストが出ていて曲調がまったく違いますが、カフカさんの持っている歌謡曲やロックの雰囲気と絶妙にハマった作品になりましたね。

こちらからは、みなさん個々の持ち味、カラー、○○節みたいなものを存分に発揮してくださいとだけお願いして。レコーディングに関しても、みなさんがいつもやられているスタッフやスタジオに私が単身乗り込んでいくようなかたちでした。なので、こちらからのリクエストはほとんどなくて、みなさんが思った“シシド・カフカのこんな扉を開けてみたい”というものを、どんどん開けてくださった感覚です。“そんなところにも扉ありましたっけ?”って、自分でも知らなかった扉をたくさん発見することができました。

参加アーティストはKenKenさん以外は全員初対面で、リスペクトしている方ばかりという。

はい。何度もライヴを拝見させていただいていて、ライヴミュージシャンとしても尊敬している方たちです。例えば、「バネのうた feat.甲本ヒロト」を一緒にやらせていただいた甲本ヒロトさんは、私のプロデューサーのひとり、大島賢治さんがザ・ハイロウズで一緒だった縁もあって。学生時代には学祭で「TRAIN-TRAIN」や「リンダリンダ」などを演奏した思い出があります。

「バネのうた feat.甲本ヒロト」はユーモアがありながら、シンプルだけど芯が感じられる、ヒロトさんらしい楽曲ですね。

デモを聴いた時のインパクトが一番すごかった曲ですね。私なら一生かかっても出てこない歌詞です。だって、《ビヨーン》ですから(笑)。ヒロトさんが切り取っている世界、それを表すための言葉なので、やっぱりヒロトさんにしか書けない歌詞だと思います。でも、ビヨーンのニュアンスはこうだろうかああだろうかと、何度もビヨーンビヨーンと歌っていた様子は、きっと奇妙だったと思います(笑)。

ドラムはすごくシンプルですよね。

でも、私の楽曲史上、最多の打数なんですよ。ライヴで何度かやっていますけど、すっごく叩いているので、めっちゃ疲れます(笑)。あとは、リズムで言うとヒロトさんの曲は裏拍を取らないのが特徴です。普通の人がそれをやると間延びしてしまうけど、ヒロトさんが歌うとすごく魅力的になるんですよね。私も難しくて、結果的に少し変えましたけど。

ギターでウルフルズのウルフルケイスケさんが参加しているのも、楽曲のポイントですね。

イベントでの共演をきっかけに、折々でメッセージをくださったりするので、勝手に頼れるお兄さんだと思っています。ウルフルケイスケ節を存分に発揮してくれました。

次の「Don’t be love feat.斉藤和義」はドラマ『医師たちの恋愛事情』の主題歌として放送されて、早くから話題になっていた曲ですが、こちらは斉藤和義さんとのセッションですね。

自分でチケットを買ってライヴを観に行っていたほど、和義さんのファンなんです。和義さんもドラムを叩くし、猫が好きとか共通項も多くてとても盛り上がりました。

独特な曲ですね。曲調もそうだし、リズムも。

和義さんから醸し出されるセクシーな感じが存分に詰まっている曲です。ドラムはヒロトさんの曲とは正反対に、とつとつと叩いているんです。当初の私のプランでは、要所要所で私の色でフィルを入れようと思っていたんですけど、当日スタジオに行ったら、フィルを入れようと思っていたところが全部ブレイクになっていたという(笑)。でも、ブレイクの感じも含めて、和義さん節だなと思いますね。

歌詞はおふたりの共作になっていますが。

私が書いた歌詞のアイデアのメモをもとにブラッシュアップしてくださったんですけど、なんでこんなに女心が分かるんだ!?と驚きましたし、ハッとさせられました。また、そこからドラマの内容も織り交ぜていって、こういうかたちになりました。譜割の感覚が私とは違うのは、とても勉強になりましたね。

去年の『COUNT DOWN JAPAN』でもライヴセッションをしていた、KenKenとの「Trans fatty acid feat.KenKen」はブレイクビーツの曲で、作品の中でインパクト大ですね。

最初にドラムとベースでベーシックを録って、そこからどうする?って始まって。サンプリングしたこういう音があるとか、こういうソフトがあるとか、その場でいろいろ試しながら色付けしていった曲です。だから、楽器はKenKenのベースが2本、私はドラムとジャンベだけという。とにかく私のドラムの合間を縫うように、自由自在に遊んでベースを弾いてくれている印象でした。しかも、音色が多彩で、音圧や表現の豊かさがあったので、ふたりでやってるとは思えない瞬間が何度もあってとても楽しかったです。

ハンドクラップの音とかは?

あれはKenKenがひとりで録ったやつだと思います。最終的には使わなかったけど、自分の靴のマジックテープのベリッという音もひたすら録ってましたよ(笑)。そういう遊び心があるところも、KenKenの魅力ですよね。

OKMusic編集部

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