【BRAHMAN】異端という名の王道を駆
け抜けた20年間の軌跡
結成20周年を記念する『尽未来際』は、懐古趣味のベスト盤ではない。10年ごとに2枚に分けられ、ライヴのセットリストのように並んだ全42曲は、ノスタルジーの欠片もなく、今を生きる力にあふれた楽曲ばかりだ。アルバムに込めた思いについて、TOSHI-LOW(Vo)が熱く語る。
取材:宮本英夫
自分たちの生み出したものに対して ベ
ストもワーストもない
このあと、映画『ブラフマン』の舞台挨拶に行くということで。何を話すのですか?
何も。だって映画観てないですもん。昨日帰って来たんだから、俺たち。ツアーから。
ファンと一緒に初めて試写を観ますか(笑)。
何にも分かんないですよ。でも…まぁいいか。俺の映画じゃないし。
それは、この間お話した時も言ってましたね。映画は監督のものだからって。
そうそう。もっと言えば、俺らを通して、箭内道彦(監督)が映ってるだけですから。観た人の話を聞くと、どうやら主演は箭内ですね(笑)。
シングル「其限 〜sorekiri〜」のミュージックビデオが、映画の予告編みたいになってますよね。そっちは観ました?
あれを観て、この曲のテーマである“仲間”という言葉の意味が少し分かりました。映画を観れば、もっと分かるんだろうなと思います。
そのテーマを出したのが、箭内ですからね。自分のことを突き詰めて見ていけば、結局人のことも見なきゃいけなくなるし、自分のことが大事になれば、人のことがもっと大事になるし。結局、そういうことかなと思うんですよね。ひとりで生きてる奴はいないですから。
「其限」は本当にいい歌詞だと思います。
自分としては、追われて、間に合わせで書いたような歌詞だったんですけどね。さっきも地元の先輩から電話がかかってきて、“歌詞が良かったよ”って。15歳ぐらいの時から俺のことを知ってるような人が、“歌詞が良かった”ってわざわざ電話してくるってどういうことかな?って思ったんだけど。“難しい言葉にも飽きたの?”なんて、わざと冗談を言ってたけど、でもそう言ってくれるのは、よっぽどなんだろうなと思った。ただ、なんでこの歌詞を書けたのか?って、理路整然と言えてしまったら、その人が電話かけてくるような詞じゃないんだろうな、という気がする。
あぁ、そうかもしれない。
欲がないというか、無私というか、その部分が結局、心を動かすんじゃないかと思うし。かと言って、それは無機質なものじゃなくて、すごい情熱があって、生きてるものがすごく詰まってる。だけれども、あざとい狙いがない。そういうことなんだろうと思うんですけどね。
その、「其限」も入ったニューアルバムが『尽未来際』はいわゆるベスト盤ですけど、ベストではなくて、何て呼べばいいですかね? TOSHI-LOWさん、“ベストは作らねぇ”とずっと言ってましたから。
何だろうね。レコード会社が作りたかった“まとめ”みたいなものでいいんじゃないですか。
じゃあ、まとめアルバム(笑)。
俺らは全部ベストだと思って作ってるというか、自分たちの生み出したものに対して、ベストもワーストもないので。実際、ここに入ってない曲で、自分たちが今からライヴでやるであろう曲も、いっぱいあるし。
その感じ方はよく分かります。選曲は誰が?
自分たちは関わってないです、ほとんど。流れの面で、ちょっとだけ口出しはしたけど。なので、何も話すことがないですよ。
ここで話が終わるという(笑)。
いいじゃないですか、あとは書き原稿で。思いの丈を入れてくれれば。
入れますよ。みなさんがそれでいいなら。
そっちのほうがいいですよ(笑)。でもね、今回、付き合っている雑誌とか、ライターの方とか、ずっと知ってる人が多いじゃないですか。だから、何と言うか…照れ臭くて自分では言えなかったけど、すごい愛情を感じるというか。もちろんお仕事だし、他の人に対しても一生懸命やってるんだと思うけど。でも、やっぱり自分たちをすごく見つめてくれてる視線を、いろんな人に感じるんで。“ありがたい”とか“感謝”とか、一番言いたくない言葉だけど、実際それしかないんですよね。
はい。
だから、こういう分かりやすいもの(CD)があったとしても、自分たちで拒否するものではないし。これでなんとなく20年をざっと見て、そこから深く入ってくる人たちがいてもいいし。廃盤になったものを、無駄に探して買う必要もないし。いいんじゃないかなと思うんですけどね。