【Ken Yokoyama】人生、一度しかない
から何でもやらなきゃもったいない!

今までやってこなかった音楽を、ロック
バンドとして鳴らせた

今回、“ロックンロール”というのがキーワードになってますが、健さんにとっては回帰ですか? 挑戦ですか?

両方ですね。聴いてきたものとしては“回帰”ですけど、ロックンロールのマナーで曲を作るのは“挑戦”でした。曲を作りながら“このフレーズをメイクしたい!”みたいな気持ちで、まだ人生にこんな気分が待ってると思ってなかったですよ。

最高ですね。今作を聴いて、若い子がロックンロールを掘り下げてくれたりしても最高ですよね。

ウチの10歳の子が僕がロックンロールを聴いてると、“エルヴィスじゃろ?”って言うんですよ。2000年代に生まれた子がエルヴィスに興味を持つって最高でしょ? 僕は自分の音楽が何かの入口であったらいいなと常に思っていて、僕をきっかけに掘り下げていって、“横山なんか聴いてられねぇよ”になっても全然いいと思ってるんです。音楽的なところでも、世の中での立ち位置や発信者や何でもいいんですけど、入口でありたいというのはいつも思ってます。

健さん自身もパンクロックを聴く前から、ロックンロールを掘り下げて聴いてた時期もあったんですよね?

僕が育った80年代はいろんな音楽がフラットに聴ける状況で、僕は取っ掛かりとしてメタルがあったんですけど、その後にスラッシュメタルやパンクロックに出会う一方、オーソドックスなロックンロールも必ず入ってきて。だから、新しい音楽を聴くと同時に、普通にロックンロールを聴いてました。それが箱モノのギターを弾き始めたここ数年、30年積み重なってきたものが俄然、輝きを増して耳に飛び込んでくるようになってきて、“1000回聴いたものが、1001回目に聴いたら違うんだ!”くらいの気持ちで、すごく不思議な感覚だったんです。

今作はライヴって意識されました?

今まではライヴでどうやるかっていうのを想定しながら作ってたんですけど、今回は少し引っ込みましたね。まずはバンド4人でかたちにして、パッケージにするっていうのを考えたみたいです。今、それをライヴに当てはめる作業をしていて、ツアーに向けてやらなきゃいけないことも多いんですけど、着地点を定めず、着地したところから次に進めればいいやと思ってるんですよ。僕、物事の考え方が結構そうで、“こうであらねばならない”と決め付けて着地点に向かうよりも、小ちゃな判断と興奮を積み重ねていった果てが着地点で、それに納得したいと思うんです。僕はいつも、自分が最高だと思うA地点に全力で向かうというより、とにかくどこに向かおうと目の前のことを全力でやって、着いた先をA地点とみなすという進み方をしているんですけど、今回のアルバムはそれが特に顕著だったし、今はライヴに関しても、どんなふうになるんだろう?って興奮してます。

なるほど。だから、健さんって常に“今”を生きてるイメージなんですね。今やるべきこと、今歌いたいことを直感で判断して、最速で行動して、伝え続けているというか。

うん、それをさせてもらえている環境を自分で作ったという誇りもありますけど、やらせてもらっている周りへの感謝もすごくあって。どこまでいけるか、これからも興奮しながらやり続けていきたいですね。

曲作り、レコーディングはどう進めていったのですか?

すぐにできた曲もあれば、2年くらいかかった曲もあったんですが、まずは僕の興奮をメンバーと共有することが重要だったんで、僕にとっては僕の気持ちを分かってもらったり、シェアする作業が一番大事だったし、大変でした。ただ楽器を鳴らしているセッションなのか、気持ちをシェアしてるロックバンドの音なのか、その差は絶対に出ると思うんですよ。結果、今まで僕がやってこなかった音楽を、ロックバンドとして鳴らせたという自負はあります。

昨年9月に発表されたDVD『横山健 -疾風勁草編-』に「STOP THE WORLD」が収録されていて、“この曲が『BEST WISHES』と、次のアルバムをつなぐ曲になるだろう”と解説してましたが、その時には想像しなかった方向へと進んでいきましたよね。

あの時期、KEN BAND用に7~8曲作ったんですが、その中でも一番変わった曲が「STOP THE WORLD」なんです。これはどの曲ともつながらない、1曲でしか存在し得ない曲だと思ったので、あの曲はあのかたちがベストなんですよ。他にも生き残った曲は何曲かあるんですが、5~6曲をボツにして、そこからロックンロールに向かっていった感じでした。

「I Won't Turn Off My Radio」ができたタイミングというのは?

ロックンロールが開けた時、「I Don’t Care」であったり、振り切った曲をどんどん作っていったんですけど、ある時期から“やっぱりKEN BANDらしい従来の曲も作りたいよね”って気持ちが僕にもメンバーにもあって、そこでできた曲が「I Won't Turn Off My Radio」だったんです。一度ロックンロールモードを通過してメロディックパンクに向かう狭間の曲で、ロールしてる感じとパンクの尖った部分がちょうど良い具合に入り混じった曲ですね。“Radio”という曲のテーマ通り、いろんなところに発信してる曲になったなと思います。いろんな人の心のアンテナに引っかかったと思うし、過去の自分にも問いかけてるし、未来の子供にも伝えようとしてる曲だと思うし、すごく訴える曲になったと思いますね。

“おっさん、うるせぇな”と思われても言うべきことは言って、小言言ってるくらいのほうがいいんですかね?(笑)

そうですね。僕、ずっと自分はパンクスだと思って、パンクなりの美学やマナーを守りながら生きてきたんです。その中で“おじさんの言うことに耳を傾けない”っていう“Don’t Trust Over 30”な精神もあったんですけど、自分が45歳になって、小言に聞こえるかもしれない伝え方を始めて、どっちを信じるか?って考えた時、やっぱり自分を信じたいんですよ。“Don’t Trust Over 30”とか言ってるヤツ、ガキじゃん!みたいな…まったく大人げないですけど(笑)。聴く人によっては、横山の言うこと説教じみてるなとか、押し付けがましいなと思う人もいると思うけど、それはそれでいいんです。絶対に響く子もいると思ってるので、それこそ左側に目を向けず、興味を持って右側を並走してくれる子に対して、発信し続けていきたいですね。
『SENTIMENTAL TRASH』
    • 『SENTIMENTAL TRASH』
    • PZCA-73
    • 2015.09.02
    • 2365円
Ken Yokoyama プロフィール

ケン・ヨコヤマ:1969年生まれ、東京出身のロック・ミュージシャン。1991年にバンド、Hi-STANDARDを結成し、ギタリストとして活躍。日本のメロディック・パンク・シーンの創生と黎明、勃興を先陣を切って駆け抜ける。1999年に自身のレーベル<PIZZA OF DEATH RECORDS>を設立し、社長を務める。2004年2月にはアルバム『The Cost Of My Freedom』でKen Yokoyamaとしてソロ活動を開始。その後、ソロ・バンドの通称“Ken Band”を率いてライヴを行ないつつ、2005年11月に2ndアルバム『Nothin' But Sausage』、2007年9月に3rdアルバム『Third Time's A Charm』をリリース。ハイスタを彷彿させる疾走チューンから、アコースティック・ギターによる歌心あふれるナンバーまで、卓越したメロディー・センスを感じさせる。2008年1月、日本武道館でのライヴを『DEAD AT BUDOKAN』と称して行なう。2013年3月には、WOWOWで震災後の彼の活動を追った『ノンフィクションW 物言うパンクス!横山健~311、ハイスタ、その先に~』が放送。同年11月、自身の生い立ちから現在までを追ったドキュメンタリー映画『横山健-疾風勁草編-』が全国60館で劇場公開。Hi-STANDARDはもちろん、BBQ CHICKENSとしても活躍し、さらにレーベルはHAWAIIAN6、WANIMA、DRADNATS、GARLICBOYS、MEANING、SLANG、SNUFFら国内外のバンドを輩出している。2015年9月、6thアルバム『SENTIMENTAL TRASH』を発表。Ken Yokoyama オフィシャルHP

Hi-STANDARD プロフィール

現在のパンク/メロコア・シーンを牽引したのは、間違いなくハイ・スタンダードだ。今では取り立てて珍しくないが、英語詞にいち早くアプローチしたことや、当初から海外に目を向けグローバルに活動したことなど、その功績は大きい。
91年、難波章浩“ナンバ”(vo&b)、横山健“ケン”(g)、恒岡章“ツネ”(dr)を中心に結成。94年にミニ・アルバム『ラスト・オブ・サニーデイ』でデビューして以来、オフスプリング/ラグワゴン/ランシド/NOFX/グリーンデイなどと共演を果たし、海外のバンドとのパイプラインを強化した。そうやってライヴ・バンドとしての実力を磨き、その成果を『グローイング・アップ』や『アングリー・フィスト』といった作品にすかさず反映。そして、99年リリースの『メイキング・ザ・ロード』に至っては、約70万枚のビッグ・セールスを記録——今までシーンに縁遠かった層にまで「メロコア」「ハイスタ」の2大キーワードを浸透させたのだ。
彼らが多くの人々に支持される理由は、結成当初から貫き通している熱いパンク・スピリットや、「みんなで歌える」をモットーとした音楽スタイルにあるだろう。それはイコール、社会的な一面をもち合わせた等身大の歌詞、一聴しただけで強烈な印象を残すフックの効いたメロディと言える。また、ナンバのパワフルなヴォーカル、ケンのアグレッシヴなギター・ワーク、ツネのタイトなドラミングといった、3人の絶妙なバランスも忘れてはいけないところだ。
00年8月、『AIR JAM 2000』を最後に活動停止。その後、横山健はBBQ CHICKENSのメンバーとして活動し、04年にはソロ・デビューを果たす。Hi-STANDARD オフィシャルHP(アーティスト)
Hi-STANDARD オフィシャルHP(レーベル)
Hi-STANDARD オフィシャルFacebook
Hi-STANDARD オフィシャルYouTube
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OKMusic編集部

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