【藤原マリア】潜在意識に働きかける
癒しの音楽を届けたい

人の心に寄り添う詞と自然を感じる豊かなメロディーで独自の世界を構築し、セルフプロデュースで活動するシンガーソングライター藤原マリア。9月16日にリリースした初の全国流通盤アルバム『Innocence』について話を訊いた。
取材:桂泉晴名

藤原さんは作詞作曲からマスタリングまで完全宅録だそうですが、どのような環境で音楽を身に付けたのですか?

私は母が家でピアノを教えていたので、朝から晩まで誰かがピアノを弾いている環境で育ちました。とにかく練習しない子供だったんですけど、ピアノの前に座ったら、流行の曲やCMの曲を弾いて遊んでいましたね(笑)。それで中学生の時に“作曲を勉強したい”と思ったんです。自分でアレンジしたり、作ったりすることが楽しくて。

作曲を始めたのは中学生の時だったのですね。

中学3年生の時には何曲か作っていましたね。でも、当時は歌をやっていなかったので、全部ピアノの曲なんです。今回のアルバムにも収録されている「FREEDOM」という曲も、実は高3の時に作ったピアノ曲で、その後に歌を入れました。

では、歌を始めようと思ったきっかけは?

芸術系の大学に通って芸術音楽をやっていたのですが、すごく狭い世界だったので、“やっぱり王道ポップスをやるべきだな”と思い、卒業してから歌も始めたんです。最初は本当に下手で…ただ、作曲の技術など確固たる音楽の芯があったので、それに喉の筋肉がちゃんと付いていけば、という思いはありました。今回のアルバムには新曲に加えて、ライヴ会場とオンラインストアのみで販売していた1st、2ndアルバムの中からも何曲かピックアップして収録しているのですが、何度もレコーディングしている曲もあるので、それを聴くと歌い方がこの2〜3年で変わっているのが分かりますね。

作詞も大学を卒業してから始められたのでしょうか?

ええ。昔は音が先でしたが、最近は伝えたいことのほうが大きくなっているから詞先が多いです。

藤原さんの詞はすごく言葉を選んで書かれたのが分かります。小さなお子さんでも理解できるように配慮されているというか。

小さな子が聴いてもスッと理解できるものにしたいですね。だから、複雑な言い回しやカッコ良い言葉遣いはあまりしないようにしていますし、その思いを込めて“Innocence”というタイトルを付けました。また、大人の方でも子供の部分は絶対持っているので、そこにも響くものを、という思いもあります。

冒頭の「ROAD」は大切な人との別れが描かれていますね。

「ROAD」は東日本大震災から半年経った時に作った曲なんです。当時、大震災の被害を受けた東北の方々が遺体をひたすら体育館に並べていく様子を記録した『遺体』という本が出版されていて、その本を読んだ時に浮かび上がってきた感情を書いたんです。当時、テレビなどでは“絆”とか、“前を向いて頑張ろう”という言葉が言われていたんですけど、もっと寄り添う言葉って何だろう?と思った時に、サビの《それでも道は続いていく どんなむなしさも 置き去りにして》というのが出てきたんです。ただ、これは受け取った人によっていろいろ感じていただきたいですね。そして今回、南相馬に行って“道”をテーマにPVを撮りました。

実際に行ってみていかがでしたか?

最初に“ここは本当に豊かな土地と海だったんだ”と感じました。今は全部流されてしまっていて…でも、その土地にも、海にも、本当に豊かな力があった場所だと。だから、現状を見た時は胸が痛かったんですけど、豊かな土地だからこそ、食べ物も美味しいんだなと思いました。

藤原さんは、食べることがお好きですか?

料理が好きですね。作曲と料理は似ていると思うんです。人の思いやりをかたちで示せるものって少ないと思うんですけど、音楽や料理は相手の栄養になりますから。

なるほど。そして、アルバム中盤の「Identity」は内面に迫る曲ですね。

まさに、“自分のIdentityとはなんだろう?”と考えた時期の作品ですね。いろいろな情報がある中で、“常識とは何か? その中で自分のIdentityをどうやって見つけていけばいいのか?”ということが分からなくなった時にいきなり吹き出てきて、気付いたら弾いていた曲です。さらにアレンジの時には、人がいろいろなものをシャットダウンした時に見えるような音のイメージを考えました。

続く「I feel close to you」は孤独から抜け出し、愛を知った人を描いているという。

これは私の数少ないラブソングです(笑)。過去に結婚式場でピアノを弾くアルバイトをしたことがあり、そこから“珠玉のラブソングを作りたい”という思いがあったので。また、この詞は実体験でもあります。

ラストの「Innocence」は魂が浄化されるような楽曲でした。

「Innocence」は戦後70周年というのを意識して、今年作った最新曲になります。作っている段階からこれがトリかなという感じだったので、自然とアルバムタイトルも同じものにしました。私は「Innocence」の詞にある《Free From Fear.》…“恐怖からの脱却”という言葉を一番伝えたかったんです。「Innocence」には“純真”“無垢”という意味があるんですけど、もうひとつ、“罪のない状態”という意味があるんです。“罪って何だろう?”と考えた時に、罪を犯す根本にあるのは、恐怖なのではないかと。人間は生きていく上で、何かしらを抱えて生きていく。それをどのように克服していくか…それは私の一生のテーマになると思います。

藤原さんの楽曲には、普遍的なメッセージを感じます。

私自身は“音楽というものは、ただの文化と流行で終わらない”と思っていて…音楽の一番素晴らしくて一番まずい部分は、人の潜在意識に働いてしまうところでしょ? だから、アルバムに“Innocence”と名付けたのも、大人にも子供にも、すごく純粋な部分に働きかけるのが音楽だと思っているからなんです。そういうふうに誰かの潜在意識に働きかけた時に癒される音楽を届けられたら、と思っています。
『Innocence』
    • 『Innocence』
    • REIM-003
    • 2015.09.16
    • 2500円
藤原マリア プロフィール

フジワラマリア:大阪府出身。京都市立芸術大学作曲専攻卒。卒業後ポップスに転向し、DTMによる楽曲制作と、ヴォイストレーニングを始める。2011年3月より、“シンガーソングライター 藤原マリア”として、東京を中心にセルフプロデュースで活動開始。同年12月より、『藤原マリアの@Home Live』をUSTREAMで放送開始。これまでに『Myself』『Humanity』を発表し、15年9月16日には待望の初の全国流通盤アルバム『Innocence』をリリース。藤原マリア オフィシャルHP

OKMusic編集部

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