【宮野真守】“今”だからこそ切り開
く ココが新たなる最前線――

声優、役者、アーティストとマルチな才能を発揮する宮野真守から、約2年振りのアルバムが到着。“FRONTIER”というタイトルが表す通り、集大成ではなく新天地を求めた彼の最新型は、数々の出会いと発見がもたらした逞しさと洗練さに満ちている。
取材:清水素子

まだ見ぬ答えを探していきたい まだま
だ挑戦者でありたい

“FRONTIER”というアルバムタイトルには、“新天地”や“最前線”という想いが込められているそうで、なんとも頼もしいコンセプトですね。

でも、そこに行き着くまでは意外と紆余曲折あったんです。前作『PASSAGE』から2年の間にシングルのリリースや大きなライヴもあって、その都度アイデアを振り絞り、自分の全力を注いできました。このアルバムの制作に着手したのも前回のツアーが終わった直後だったので、正直、その時点では空っぽだったんです。本当にアイデアも全て出し切った状態で、どういった想いをテーマにしよう?と悩んでしまいました。その末に辿り着いたのが、改めて新しいことにチャレンジしていこう!という強い気持ちだったんです。

これまでも毎回チャレンジを積み重ねてきたはずなのに、なぜ改めて今?

“2年振り5枚目”と言うと区切りっぽく見えてしまうかもしれませんが、今までの集大成にはしたくなかったんです。これまでいろんな経験をしてスキルアップを図り、引き出しも増えた今だからこそできるチャレンジというものがあるはずだから、それを踏まえた上で新しいことを模索していきたいなって。何より自分もまだ見ぬ答えを探していきたいし、まだまだ挑戦者でありたいんですよね。そこに眠る新たな自分の表現を切り開いていきたい。そんな想いから“FRONTIER”と名付けたんです。

なるほど。チャレンジを続け、キャリアを積んだ今だからこそ切り開ける新天地があるはずだと。

そうですね。その延長線上で音楽面だけじゃなく、ビジュアルでも新しい見せ方ができるんじゃないかと。それで、今回はジャケット写真をアートっぽく作り込みました。中のブックレットでもオブジェやプロジェクターを使ったり、グラフィックでも結構こだわっているんです。しかも、それが答えというわけじゃなくて、あくまでも今、自分が探していく表現のひとつなんですよね。楽曲制作においても、そういった想いをしっかりとかたちにしてから動き出したいと思ったので、まずはリード曲の「FRONTIER」を完成させることから始めました。アルバムコンセプトをもとに作曲のSTYさんと話し合いを重ねて、作詞も共作しながら、それこそゼロから一緒に作り上げていった感じですね。

と聞くと、さぞやアッパーで押せ押せなナンバーがくるかと思いきや、まったくそうではないのが面白いところで。

そこは自分の中でもポイントなんですよ! テンポもアンダンテという歩く速さで、“静かなる闘志”というか。走るのではなく、大地を踏みしめながら前を見据えて歩いていくイメージで、こういう曲調で想いを伝えるというのも、まさに新しいチャレンジなんじゃないかと思います。ただ、最終的にサビ後の部分がゴスペルを感じられるものになったのは想定外でした。ハードルの高いフェイクの動きをSTYさんと一緒に作っていけて、予想以上にエモーショナルな高まりを表現できたんじゃないかと思います。

そのサビでは“最前線”という、一種シリアスで重いワードが何度も繰り返されていて、ちょっと驚きました。

強い言葉で赤裸々に、自分の想いを歌に込めたかったんです。伝えたいことはポジティブだけど、だからと言って底抜けに明るいんじゃなく、しっかりと何かを背負っている姿を出したかったので、あえて《たとえば 朝が来なくても》とか《どんな険しい旅路だったとしても》等のネガティブな言葉を組み込むことで、より強い想いを出せたと思います。何もない広大な荒野を自分の力で歩いている…というイメージを持って作り、歌っているので、MVを本物の荒野で撮れたのは、すごく嬉しかったですね。見渡す限り何もないアメリカの干上がった大地で、ひたすら自分の想いを歌い、ひとり歩いていく様をワンカットで撮って…まさに“FRONTIER”な絵が作れました

ええ。飾りの一切ない風景とスタイルが歌詞と完全にリンクして、曲に込められたメッセージが直球で伝わってきました。さらに、“新天地”と掲げた作品だけあって、その他の新曲も実に多彩だし。

自分から望んだもの、予想外な展開で引き寄せられたものなど、最終的に全曲で何かしらの新しいチャレンジができたのは、自分でも嬉しいことでした。一番予想外だったのが「TRUST ME」の作詞をWISEさんが書いてくださったこと! いつも一緒に曲を作ってきたTSUGEさんと、また新たなアプローチでヒップホップを作ろうと楽曲をお願いしていて、歌詞をどうしようか?と話していたら、TSUGEさんがWISEさんに頼みたいという話になって。まさか日本を代表するヒップホップアーティストの方に歌詞を書いてもらう…しかもラップのディレクションもしていただけることになるなんて、すごく幸せでした。やっぱりバイリンガルの方ならではの言葉の運び方は慣れるまで難しかったんですけど、そのWISE節にプレイヤーとしてチャレンジできたのが、すごく楽しかったです。逆に、自分から求めた“新天地”がロックチューンの「Evolve」。デビューの頃から一緒にダンスミュージックやバラード、ポップスをやってきたJin Nakamuraさんと、初めてイチからロックを作ることで未知の領域へ行けるんじゃないか?と挑んだ結果、めちゃめちゃソリッドでカッコ良い重厚なロックナンバーになりました。なおかつメロディーが美しくて、その美しさとクールさの融合に心が震えました。歌詞も、声優であり、アーティストでもある自分にしかできないハイブリッドな進化を今後も重ねていくんだ!という強い想いを込めつつも、この楽曲の主人公が自分の想いを人に示していく…というかたちで綴ってもらっています。アルバムのコンセプトを、表題曲とは別の角度から掘ってみたかたちですね。

OKMusic編集部

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