【吉澤嘉代子】迷い込んだら抜け出せ
ない秘密の恋の物語

前作『箒星図鑑』で少女時代に別れを告げた吉澤嘉代子が、次に向かったのはちょっぴり大人になった秘密の恋のパラレルワールド。極上のロマンチックと切なさ、激しい純情と妄想が交錯する『秘密公園』へようこそ。
取材:宮本英夫

『秘密公園』、とっても良かったです。ラブソングを集めようというコンセプトは最初から?

最初は寒い季節にキュンとくるようなもので、“ロマンチック”をテーマに曲を書いたつもりだったんですけど、自然にラブソングが集まった感じですね。前作の『箒星図鑑』でずっと書きたかった“少女時代”をテーマに書いた後に、次はちょっとイケイケで攻めてみようかな?と思ったのもあります。ラブソング自体が私にとってはイケイケなので。

とはいえ、後味が思いきり切なくてグッときました。報われない恋の歌が多いせいかもしれないですけど。

そうなんですよね(笑)。禁断の恋だったり、報われない感が高いですね。

リード曲の「綺麗」なんて、切なさの極みじゃないですか。一見ピュアな恋の歌ですけど、実はもう二度と戻らない幸せな瞬間を冷酷に切り取っているという。

この曲は“綺麗”という漢字自体がとってもきれいだなと思って、そこから書いた曲ですね。書いているうちに“永遠と瞬間”みたいな、時間軸のない世界というテーマにだんだん寄っていったんですけど。恋をすることによって迷い込んでしまうパラレルワールドを舞台にしていて、“秘密公園”というタイトルもそこからきています。

2曲目の「ユキカ」は友人の名前でしたっけ?

そうです。小学生の頃からの幼馴染みの名前で、初恋の曲を書いてみようと思った曲です。その子はあまり口に出さずに、でも熱い思いをずっと秘めてるような子なので、そういうイメージもきっと入っているんでしょうね。

でも、これがアルバムの中で一番前向きな恋の歌かも。

人の名前を使ってる以上、あんまり暗い曲にしちゃいけないかなって(笑)。この曲は誰にでも分かるやさしい言葉と、自分の譲れない限界に挑戦しようと思った曲で、サウンドも歌詞の面でも、いいバランスで作れた曲だなと思ってます。

「運命の人」は失うくらいなら最初から幸せを手に入れたくないと思っちゃう女の子の歌で。いますよね、こういうタイプ。

これは自分に近いかもしれない。“人はいくら環境を変えたいと思っても、現状を維持したい気持ちが深層心理にある”という話を聞いて、そうかもなと思って書いた曲です。それと、夢の中で出会った人がモチーフになってるんですよ。夢の中にとても素敵な人が出てきて、“お名前だけでも教えてください”って言ったら、“会うのは4度目ですよ”と言われて…もしかしたら夢に出てくる人は、みんな同じ人物だったのかな?と。姿やかたちを変えて私の前に現れる、夢の中でしか会えない人。決して結ばれない運命の人。そう考えたら、ものすごく切なくなってしまって。

聞いてるだけで切ないです。そして、「キスはあせらず」は明るいモータウンポップス調で。こういうのは得意ですね。

得意です(笑)。曲を書いてる時期にダイアナ・ロス&シュプリームスを聴いていて、「恋はあせらず」の続編を書いてみようと思って自由に書きました。佐藤公彦さんのものすごく暑苦しいサックスが、笑っちゃうくらい素晴らしいです。

「必殺サイボーグ」は星新一のショートショートにインスパイアされたとか?

父が星新一さんが好きで、私も子供の頃から読んでいて、特に『ボッコちゃん』が好きでした。サイボーグの曲を書きたいなとは前から思っていて、『ボッコちゃん』もサイボーグというかロボットなので、ちょっと意識して物語を作ってみました。自分とはかけ離れた主人公になることがすごく好きなので、楽しんで書きましたね。サイボーグだからライヴでロボットダンスとかしたほうがいいのかな?と思ってるんですけど。

可愛い(笑)。やってください!

周りからは止められてるんですけど(笑)。考え中です。

そして、ラスト曲が「真珠」。これは本当に美しい曲ですね。

これは『真珠の耳飾りの少女』という映画を観てから書いた曲です。孤独がテーマになっているんですけど、“みんな一緒だよ”という曲が多い中で、独りが悪いことのように思われつつあることに少し疑問があって。独りの時間は自分にとってはとても大切で、時間じゃなくても独りの領域とか、自分だけしか入れない領域を誰もが持っていて、だからこそ人と関わることができると思うんです。独りということを否定も肯定もしない曲にしたいと思ってました。

という、珠玉の全6曲。今回、歌の主人公はいくつぐらいですかね? 十代後半とか?

今回は少し大人になって、二十代のつもりです。「ユキカ」以外は。前作から一歩踏み出したものをやってみたくて、大人っぽい主人公像で作ってみたいと思ったので。

初のラブソング集ということで、手応えはありましたか?

そうですね。ラブソングという形式をとると、他の部分ではわりと自由に言葉が暴れることが許されるという気がします。“ラブソング”というものが抜けちゃうと、ただの尖った曲になっちゃうものも、恋心を利用すれば、何を言ってもユーモアに聴こえたりとか。

確かに。“ラブソングです”と言った瞬間にそれは…

ポップスになりますよね。

では、最後の質問を。嘉代子さんにとって恋とは?

私にとっては、最終的に曲を書くための資料になってしまうんですよね。それが悩みでもあるんですけど。曲を書くために恋をしようとしてしまったり。

それはまずいですね。

まずいですよね(笑)。もうだいぶ前からそうなっちゃいましたけど。“今のこの感情、おいしい!”みたいな(笑)。職業病なんですかね。でも、そのおかげで恋以外のことでも、どんなに悲しいことでも消化できるので、すごく必要なものなんでしょうね。私にとって、曲を書くということは。
『秘密公園』
    • 『秘密公園』
    • CRCP-40432
    • 2015.10.07
    • 1800円
吉澤嘉代子 プロフィール

ヨシザワカヨコ:1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場育ち。14年メジャーデビュー。バカリズム作ドラマ『架空OL日記』の主題歌として「月曜日戦争」を書き下ろす。17年10月に発表した2ndシングル「残ってる」がロングヒットする中、18年11月7日に4thアルバム『女優姉妹』をリリースする。吉澤嘉代子 オフィシャル HP

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