【天野月】今、天野月(子)の入門編
を出すならこの10曲

“天野月子”としてのデビューから15周年を迎える天野月が、ベスト盤『元服』と、新曲「BLACK BEAUTY」をリリース。『元服』には“YURiCa/花たん”とのデュエット新曲「CLOCKWORK」も収録されており、彼女の“これまで”と“今”を確認できるアイテムとなっている。
取材:帆苅智之

『元服』はベストアルバムではありますが、コンセプチュアルで、所謂“ベスト盤”とは少し異なった印象がありますね。

そうかもしれないです。ゲームの『零』シリーズが軸なんですが、タイアップソングでひと括りにしたことが、その要因のひとつではあると思います。

メロディーやサウンドも天野さんの特徴であろうダイナミズムあるロックにまとめられていますが、何よりも歌詞の世界観に一本筋が通っていて、“内向状態からの叫び”というコンセプトが感じられます。

ゲームの世界観が主軸になっているからだとは思いますけど、自分のパーソナリティーもどちらかと言えば外交的ではないですし(苦笑)、自分の経験や自分が持っているもともとの感情と、『零』シリーズは作品によっては、非常に近いところにあったんじゃないかと思います。もちろんゲームのことを考えて、その物語をなぞってはいるんですけど、自分自身のこともなぞってますよね。あと、『零』シリーズはゲームが終わった時、達成感と同時に心が折れそうな瞬間があるんです(笑)。最後にいいことばかりが訪れるわけではなくて、プレイヤーはみんなやるせなくはなると思うので、(“内向状態からの叫び”には)せめてゲーム中で流れる音楽はそこから開放してあげたいところがあったかもしれません。

「鳥籠 —in this cage—」での《誰カワタシノ声ヲ ドウカ届ケテ下サイ》や、「カメリア」での《ちゃんと見えてる?》には、いい意味でのアーティストらしいエゴが垣間見える気がしたのですが、そういった解釈でもいいでしょうか?

確かに歌詞にはそういう想いを乗せたかったのかもしれないです。ただ、それは、知らない人に対して…ではなく、今は全然会っていない大事な友達だったり、距離的にすごく離れてしまった人たちに対する気持ちなのかもしれない。不特定多数ではなくて…ね。特にその2曲にある私の気持ちはそうだったと思います。「カメリア」は1stアルバム『Sharon Stones』のラストに入っていた楽曲であって、1stアルバムを出せるまでの期間が結構長かったもので、それまでに応援してくれた人たちと側にいたスタッフの人たちにやっと1stアルバムが完成しました!という、“ありがとう”みたいな想いを込めて…という気持ちが強かったですかね。

やはり顔の見えない人たちに向けては作りづらいものですか?

これは自分の性格によるところなのかもしれないですけど、まったく面識のない、会ったことも喋ったこともない人だけど、“この人の映画は好きだな”と思っても、私はそれを作った人には興味を持たないんです。実際に会って、自分の感覚でその人を判断したい。…そんな自分がこういう仕事をしているのが不思議ですけど(笑)、自身の創作活動では“そこを飛び越えられるか?”ということをやっているような気がします。作品って表面であって、実際に手に取れるものではないし、それだけで作り手に会ったりできないけれども、それによって“この人ってこういう人なのかな?”って興味を持ってもらってから、実際に会ってみて“あ、この人が作ったのか!?”って合致する部分って絶対にあると思っていて。そこまで辿り着いてくれた人に向けている言葉はあったりしますし、その前段階で止まっている人に“こっちへおいで”みたいなことは仕掛けていきたいと思います。

この『元服』は、まさにその仕掛けでもあるでしょうね? “天野月(子)・入門編”という。

今、入門編を出すならこの10曲じゃないかなという感じはありますね。“(天野月子の楽曲は)この辺りがいいよ”と言っている人が多いようだけど、収録されているアルバムがバラバラだから全部揃えるのはちょっとなぁ、と思っている人たちに向けて、“こっちにおいでよ”と言っているような作品かもしれないです。

あと、同時発売のシングル「BLACK BEAUTY」も素晴らしいと思います。アルバム『元服』が“これまでの天野月(子)”だとすると、「BLACK BEAUTY」は“今の天野月はこうです”といった作品ではないでしょうか?

そういう状態でしょうね。シンプルで音数も少ないですし。ただ、歌詞はすごく悩みました。世の中にあふれているものにはきっと白のほうが多いし、自分も白が好きなんですけど、“では、何で白が好きか?”と言うと、自分が黒いからじゃないかなと思ったんですね。世の中が白くなっていく中で消し残しのような自分の黒さが浮き上がってくるような感覚がここ数年あったし、一般の社会に自分が混ざった時、“これがここのルールだから”みたいにみんなが仕方なく守っているものを壊したくなっちゃうんですよね(笑)。

そりゃあ随分とロックですね(笑)。

(笑)。みんな、“まぁ、それでいいよね”ってスルーするスキルが高くて、わざわざそこを突っ込まないだけで、スルーできない人はいるし、それは空気の読めないことで、秩序を乱すことなのかもしれないけど、同じことを感じている人って実はたくさんいるんじゃないかと思っていて。世の中的な流れとして、上も下もはみ出るものをカットしてコンプレッサーにかけるようなところがあるけれども、“もとからはみ出ている人はどうするんだよ?”というところは昔からずっと持っていて。

「BLACK BEAUTY」は改めての“アーティスト宣言”でもあるわけですか?

まぁ、普通に思ったことを書いてるんですけど、“あ、私は今もこんなことを考えてるんだ? 変わらないんだな”という発見はありましたね。“自分はやっぱりこっちなんなんだよな”って。
「BLACK BEAUTY」
    • 「BLACK BEAUTY」
    • KURA-0067
    • 2015.11.18
    • 1000円
    • 『元服』
    • PCCA-04303
    • 2015.11.18
    • 2700円
天野月 プロフィール

あまのつき:“天野月子”としてインディーズでの活動を経て、2001年11月にシングル「菩提樹」でメジャーデビュー。へヴィなロックからキャッチーなポップスまで振り切れる幅広い音楽性とイラストも手がける作家性の高さが支持されて人気を博す。09年に“天野月”に改名。他アーティストへの楽曲提供等も行なっている。オフィシャルサイト
天野月オフィシャルHP

OKMusic編集部

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