【Superfly】深みを求めて進化を見せ
た20枚目のシングル

Superflyにとって記念すべき20枚目のシングル表題曲は、ドラマ『無痛~診える眼~』の世界観ともリンクしたサスペンスフルな「黒い雫」。前アルバム『WHITE』の次に越智志帆が求めたのはなんだったのか。歌詞の話を中心に訊いた。
取材:内本順一

ニューシングル「黒い雫 & Coupling Songs:‘Side B’」は新曲とライヴテイクとこれまでのカップリング曲を合わせた内容で、非常に豪華なパッケージですね。

まぁ、(シングル)20枚目記念ということで。

20枚も出したんだ!という感慨とかってありますか?

うーん、いつの間にかって感じですけど。でも、この前スタッフと“世に出たSuperflyのオリジナル曲って全部で何曲くらいあるんだろね?”って話をしてて、確か80何曲かあったんですよ。それで“結構出したよね”って。“100曲目はどんな曲になるんだろね?”とか、そんな話をしたところでした。

楽しみですね。さて、新曲「黒い雫」ですが。この曲が主題歌として流れているドラマ『無痛~診える眼~』、観てますよ。面白いですね。

面白いですよね。新感覚の医療ミステリーって感じで。

このドラマの主題歌という話があってから、曲を作っていったのですか?

そうです。あ、サビだけは昔に作ってあったんですよ。で、まず原作の本をいただいて、“ああ、医療ミステリーなんだな”って思いながら何ページか読んでたら、Bメロが浮かんできたんです。それで新感覚のミステリーだというところを意識して作ってみようとしたら、頭の中に音が鳴り始めて。

志帆さんが自分で作詞作曲されてますけど(作詞はjamと共同)、今までにはなかったタッチの曲ですよね。

それもミステリーだということがいいヒントになったので。結果、どこか怪しげな雰囲気の曲になりましたね。

歌詞もドラマとリンクしているところがある?

そうですね。ドラマの主題ってどういうところかなってスタッフと話した時に、痛みのない世界を求めてはいるけど、結局は痛みがあるからこそ人は強くなれたり、やさしくなれたりするってことなんじゃないかって。それは私も時々思ったりすることだったんですよ。あと、「White Light」(2015年発売の配信シングル)を作っていた頃にスタッフから聞いた話がずっと頭の中に残ってて、そこからのインスピレーションもあって。

どんな話だったのですか?

80年代に日本で白い自動車が流行していた頃、某自動車メーカーも目が覚めるような白い車を作ろうということで、塗料の担当チームが一生懸命に色を作っていたんですけど、なかなか思うような白にならなかったらしくて。そこである時、白い塗料がいっぱい入ったタンクに黒の塗料を一滴落として混ぜたそうなんです。そしたら黒が白を引き締めて、求めていた白が出来上がったっていう。そのエピソードがずっと頭の片隅にあって。前アルバムの『WHITE』を作っていた時は、とにかく真っ白な画用紙のようになりたいというイメージで突き進んでいたんですけど、『WHITE』を出してからそのエピソードについて考えることがまた多くなってきたんですよ。

どうしてですかね?

なんか、その話って人間関係にも当てはまるなって思って。例えば何か答えを探している時に、正解の上に正解を重ねて浴びせられると、それが本当に自分にとっての正解なのかどうか分からなくなる。間違いとか矛盾とかがあることで自分の中の正解が見い出せることもあるし、そのほうが深いところに辿り着ける。あと、人間って不純物がない状態よりも、影とか毒とかがあったほうが深くなれたりもするというか。

それは『WHITE』を作ったあとに訪れた心境?

そうですね。あのアルバムを作ったことでいろんなことを受け入れられるようになったのが大きくて。数年前なら排除してたようなことも、今は飲み込めるようになったというか。特に「Beautiful」(アルバム『WHITE』に収録)を作ったあとは“なんでもおいで~”っていう気持ちになれたので(笑)。ネガティブな要素ですらも、むしろあったほうが深くなっていける気がしているんですよ。

黒に象徴される価値観も、排除するのではなくて混ぜていったほうが深みが得られるんじゃないかと。

そうそう。例えば“類友”(類は友を呼ぶ)って、私はちょっと怖いなって思うんですよ。チームで何かひとつのことを進めていく際、同じ価値観を持った人が集まったほうが気は楽だけど、でもそれだと大きく前には進まない。バラバラな価値観がいろいろあるからこそ摩擦が起きるし、摩擦が起きることによって磨かれていくこともたくさんある。反対意見や少数意見を最初から排除してしまったらそれ以上のところにはいけないし、1回それを飲み込んで混ぜることで自分にとっての正解を探せばいいんじゃないか、そうすることでもっと高みに登れるんじゃないかって、そう思うんです。

《不純物のない無い世界へと逃げ込むのは そろそろお開きにしよう》という歌詞の一節は、そういう気持ちから出てきたわけですね。

はい。それは最近、大事にしてる部分ですね。

ギターで始まって、すぐに生のロックバンド的な音にいくのかと思いきや打ち込みの音にいき、途中から生ドラムが入ってくるという構成がカッコ良い。最近は打ち込みにもSuperflyらしさが出るようになりましたね。

はい。今回は隙間のある音楽を作りたかったんですよ。音でいろんなものを埋め尽くすんじゃなくて、行間部分を味わえるようなものにしたいっていうのがあって。

なるほど。あと、ため息のようなコーラスを含め、ヴォーカルの表現がセクシーですよね。

曲に引っ張られてそうなった感じですね。「色を剥がして」(アルバム『WHITE』に収録)みたいな曲を歌うようになってから、そういう表現の仕方が自分の中でずいぶん変わりました。どう歌えば悪女っぽくなれるか?とか、そういうことも考えたりして。ようやく少しずつそういう表現もできるようになってきたかな。まぁ、大人になったってことで(笑)。
「黒い雫 & Coupling Songs:‘Side B’」2015年12月02日発売WARNER MUSIC JAPAN
    • 【初回生産限定盤(DVD付)】
    • WPZL-31130〜2 3456円
    • 【通常盤】
    • WPCL-12280〜1 2916円
Superfly プロフィール

スーパーフライ:越智志帆によるソロプロジェクト。2007年にシングル「ハロー・ハロー」でデビュー。08年に1stアルバム『Superfly』をリリースすると、2週連続1位を記録! 以降、オリジナルアルバム及びベストアルバム計6作品でオリコンアルバムランキング1位を獲得。09年にはニューヨーク郊外で行なわれた『ウッドストック』の40周年ライヴに日本人として唯一出演し、ジャニス・ジョップリンがかつて在籍したBig Brother & The Holding Companyと共演を果たす。シンガーソングライターとしてのオリジナリティーあふれる音楽性、圧倒的なヴォーカルとライヴパフォーマンスには定評があり、デビュー17年目を迎えてもなお進化を止めずに表現の幅を拡げ続けている。Superfly オフィシャルHP

OKMusic編集部

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