L→R YORKE.(Painter)、Ta_2(Vo)

L→R YORKE.(Painter)、Ta_2(Vo)

【OLDCODEX】弱さも強さも、全部出し
たいと思ってやっている

12thシングルとなる劇場版アニメ『ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』の主題歌「Aching Horns」。10代特有の不安、悩み、葛藤の中から生まれる希望や願いを曲に託した、壮大なスケールを持った楽曲に仕上がった。
取材:榑林史章

孤独を感じているヤツに、寄り添える曲
になったらいい

「Aching Horns」は、どういったイメージで作曲をしていったのですか?

Ta_2
劇場版アニメ『ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』の主題歌としてお話をいただいたものの、先方の意向と自分たちの曲として言いたいこととのすり合わせが、なかなか上手くいかなくて、作ってはボツにしてというのが、何度もあったんです。でも、結果的に悩んで良かったと思いました。最初はリリースすることばかりが先立ってしまって、しっかり自分たちと向き合えていなかったんですよね。そこで、改めて向き合って俺たちが今出したいもの、これから何を見たいのかを深く考えた末、出てきたテーマが“架け橋”とか、自分自身に対しての“素直さ”ということでした。その“素直さ”は“願い”ということにも通じていて、自分がこうなりたいと思っているところから、ひと皮剥いたその奥にあるものが、もっとも根本的な願いだと思うんですよ。そういう自分との葛藤、自分に降り注ぐジレンマみたいなものを、素直に曲として表現できたらいいなという感覚でした。ただ、自分に素直になることって、年齢を重ねれば重ねるほど難しくなるんだなって実感しましたけどね。

静かな始まりで、そこからジワジワとアガってくる感じですが、始まり方は最初からこういうイメージで?

Ta_2
メロディーを考えるのと同時に、始まりはこういう雰囲気で、サビはこういう展開でとか、大枠の構成は考えていました。でも、そんなにロジカルに考えたわけではなく、こういう始まりのほうが映画っぽいなとか、みんな盛り上がるよね!みたいな感覚だったんじゃなかったかな。
YORKE.
俺も最初に聴いた時、始まり方が印象的でした。冒頭部分が、実は本当のサビなんじゃないかと思ったくらいで。ここがすごく大事になる気がしたから、作詞もその始まりのところから順に書いていきましたね。

タイトルは“痛む角”みたいな意味でしょうか?

YORKE.
“痛む”とか“疼く”とか…『ハイ☆スピード!』が中学生の話で、よく成長期に急激に背が伸びると骨がきしんで痛いって言うじゃないですか。実際に俺もそういう経験があったし。もちろんメンタル面もそうで、大人と子どもとの間で悩みや葛藤なんかで胸を痛めることが多い。そういう感覚で考えて生まれたタイトルです。骨のことよりも、中学生くらいの世代が抱える不安とか悩みとかの部分が、この曲の中では大きいかな。

自分の中学生時代のことも想像しました?

YORKE.
多少ね。でも、何かを乗り越える時に伴う痛みみたいなものは、あの頃も今もそれほど変わってない気がする。実際に俺が中学時代で一番学んだのは、“痛み”だったんですよね。人をダイレクトに殴ってしまった時、殴った自分も痛かったし、それ以上に心が痛かったことをすごく覚えてる。
Ta_2
俺も、あの頃の自分をどこかで思い出していたかもしれない。あんまり学校に行かなかったから。でも、その代わり、本屋さんでずっと立ち読みしてた。6時間とか7時間とか。片っ端から何でも読んで、経済学とか深層心理学とか帝王学とか。とにかく自分を取り巻く環境を変えたかったんだろうなって思う。

映画は中学生くらいの人もたくさん観ると思うので、今のお話を含めて感じるものがたくさんあるでしょうね。

YORKE.
人によって状況は違うと思うけど、ひとりぼっちを感じやすい年頃だと思うよね。俺も変に孤独を感じていて…それは今も変わらないけど、孤独に対する向き合い方が変わっただけっていうか。中学生でなくても、孤独を感じているヤツに寄り添えるような曲になれたらいいなと思いますね。

1曲の中で、すごくスケールの大きな歌声からエモーショナルさが強まったりとか、さまざまなヴォーカルを聴かせてくれていますが、これは“素直”に歌った結果ですか?

Ta_2
今回はヴォーカルディレクションを無視して歌いました(笑)。ディレクターからはもうちょっとオケに寄り添ってほしいとか、いろいろディレクションを受けたんだけど、そのまま歌ってしまうのでは“素直”とか“願い”というテーマとは違うと思ったんですよね。例えば、思い切り何かを願う時って、周りとの調和なんか絶対に考えないと思うんですよ。俺自身としても歌いながら、こう歌ったほうが届きやすくなるとか、自動的に考えてしまうようになっていたから、今回はあえてそれをやめて歌ってみた結果がこれなんです。
YORKE.
Ta_2は本当に何度も歌って、歌うたびにイラついたり、悲しそうになったりして、多重人格みたいでしたよ。
Ta_2
ブースの向こうから“もうOKだよ”って言われても、自分で今のはダメだったと思ったら、何度もやり直して…。最後には“もう気が済んだ?”って言われちゃって(笑)。でも、こういうことがバンドにのめり込み始めた時の、“歌ってみたい”とか、“楽器をやってみたい”とか思った、初期衝動につながるんじゃないかと思ったし、何かを吐き出したい時って、何も考えてなかったはずだったって。俺らのやりたいことって、ファッションじゃないから。着飾ってきれいに魅せて、“ほら、きらびやかでしょ?”っていうことは、OLDCODEXでやりたいとは思わない。弱さも強さも、出せるなら全部出し切りたいってやってる。結構、切ないメロディーなのにオケが激しくなっているのも、最初から考えていました。今はまだ、自分は弱いのかもしれないということをメロディーで素直に示して、でもそこから変わりたいし、あらがいたいと思っているので、音は凶悪なものにした。アレンジャーも楽器隊のひとりとして考えているから、最初はアレンジャーの考えに任せて作ってもらって、それを受けて実はここはこういう考えで、こういうふうにしたいんだと話をして。そうやってひとりひとりが意味を理解しながら、徐々に肉付けして作り上げていくのが、OLDCODEXのやり方です。

OKMusic編集部

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