【PUSHIM】今までで一番あからさまな
私が出たアルバム

絶大な歌唱力とソングライティング力を誇るPUSHIMが、2年10カ月振りとなるオリジナルアルバム『F』を完成させた。レコード会社を移籍し、気持ちも新たに制作された新作は、PUSHIMの音楽センス、メッセージ、歌のパワーが存分に伝わる強力な作品だ。
取材:土屋恵介

まずはアルバムタイトル“F”について聞かせください。

すごく意味があるわけではないんですよ(笑)。“F”から始まる、“Friend”“Family”“Future”“Free”とかいろんな言葉があって、今まで頭文字のタイトルもなかったので“F”にしたんです。あと、子供が携帯をいじってて“FFF”って押してて、面白いなと思ったのもきっかけですね。

本作から、ご自身が設立したレーベル『groovillage』でのリリースとなったのは?

メジャーデビュー15周年も終わって、16年目という新たな節目にレコード会社を移籍して、新たな挑戦をするというのは、もっと音楽をやっていく上でとても刺激的でいいんじゃないかなって思ったんです。

アルバム自体は、肩の力を抜きつつ、いい気合の入った作品のように感じました。

実は、今までで一番短い時間で作ったんです。短い時間だけど、前作よりもクオリティーを落とさないものを作りたいってことだけを考えてやってましたね。今回は特に一曲一曲を集中的に作っていきました。ただ、書きたいことはたくさんあったので、今現在の私が出てるなって感じがします。

では、曲に触れながら話を進めましょう。「Feel It」はMUROさんがトラックを手がけた、今までのPUSHIMさんにはなかったディスコファンクのハウスチューンで新鮮でした。

MUROくんとは何度か歌わせてもらう機会があってお願いしたんです。今回、レゲエディスコみたいなのをやりたいってお伝えして、トラックが届いた瞬間にメロディーと歌詞が出てきたんです。いい化学反応が起きました。音楽的にトライした、この曲をリード曲にできたのも幸せですね。

「MATTAKU」は韻シストのShyoudogさんをフィーチャリングしてのアーバンメロウなデュエット曲ですね。

韻シストとは、去年「Don't stop」って曲を一緒に作ってから仲良くなったんです。彼らとの出会いは刺激になって、アルバムにも参加してもらったんです。この曲はシューくんとの歌で、男女の言い合いみたいなのが見えるものが面白いかなと思って。シューくんには、女の子が聴いてキュンとくる歌詞をお願いしました。歌詞の女の子はめちゃ怒ってるけど、最終的に全部許すところまで持っていってほしいと。結果的にすごくいい感じになりましたね。

男女のやりとりが浮かびますね。

そうですね。あと、今回はアルバム通して歌詞の内容が女臭いんじゃないでしょうかね(笑)。

「A Little Love」や「The Original Love Song」は、ストレートなラブソングですね。

ここ最近、ラブソングらしいラブソングを作ってなかったので、作ろうと意識して。「A Little Love」は若い人に向けた恋愛の歌で、「The Original Love Song」は結婚式で歌いに行くことも多くて、そこで幸せなふたりの姿を見て、そういう気持ちになって作ってみました。

「Keep Peace Alive」はピアノとベースというシンプルな演奏で、愛する人を思う、平和への願いを歌った曲ですね。

これは去年の頭に作って、1年歌ってきたんです。作ったきっかけは、中東の人質の事件があったりして、戦争のことが遠い話ではないって不安に感じた人もたくさんいると思ったんです。自分がその家族や当事者であったと想像した時に、その辛さは味わいたくないなって。この先、争いに巻き込まれていく可能性もなくはないし、世界では内戦や難民の問題もありますし、途方に暮れてる人たちがたくさんいる。その中で、自分がその人たちの立場だったらと考えて歌詞にしました。去年は戦後70年だったので、そういう節目にメッセージを伝えたいと思って歌いました。

PUSHIMさんの心からの思いが曲に込められてますね。「ねむれない夜」はブルース、ゴスペルまで振り切ったようなスローチューンで、これも愛の距離感を歌ってますが、今回は言葉にできないけど、気持ちを伝えたいって曲が多いですね。

なるほど、確かにそうですね。そんなことも考えずにがむしゃらに作ってましたから、今、セラピー受けてるような気持ちになりました(笑)。

(笑)。最後はオーセンティックなレゲエの「Family」でアルバムを締め括るという。

これは、あらゆる人への感謝の歌ですね。これからも歌っていくよって思いも込められてます。

では、アルバムを作り終えての今の感想は?

新しいレーベルを立ち上げての1枚目で、改めての名刺代わりのようなものになったんじゃないかなと。でも、先ほど言った通り、時間も短かい中で、どれだけのものを作るのかが挑戦でした。これをクリアーできた自分はひと皮剥けられると信じてやってましたし、幸先いいものができた気がします。あと、やっぱりいつ何時でも、人の心が動く楽曲を提示するのが、経験を積んだ歌い手の使命でもあるので、そこを養っていきたかったのはありますね。

人の心を動かす楽曲をどんな状況でも作る。そこが現在のPUSHIMさんのポイントですね。

ですね。自分がどうとかをアピールするよりも、ずっと歌を歌ってきた中で、確実に人の心に届くものを作れるかが、今回の課題でもあり挑戦でもありました。トリッキーなこともギミックも何もないので、今までで一番あからさまな私が出たアルバムだと思います。

そして、4月には全国ツアーが控えています。

Zeppツアーを含む全12公演なんですけど、新作からの曲も増えて、また新しく楽しいライヴになると思いますね。アルバムを聴いてくれた人がライヴに来て、間違いないなと思ってもらえるものを、しっかりとお観せしたいですね。
『F』2016年01月20日発売groovillage/TOKUMA JAPAN COMMUNICATIONS
    • 【初回生産限定盤(DVD付)】
    • TKCA-74319 3600円
    • 【通常盤】
    • TKCA-74323 3200円
PUSHIM プロフィール

プシン:2000年3月に1stアルバム『Say Greetings!』(Greetingsはジャマイカで“初めまして”の意味)をリリース。朝本浩文とのコラボレーションや雑多なジャンルを飲み込んだスケールの大きい世界を展開し、サウンドの隅々から主張をみなぎらせている。ダンスホールやヒップホップ、R&Bまで歌いこなす器のデカさは、いわゆるディーヴァ系の括りには収まりきらない。デビュー15周年を経た16年1月、自身が新たに設立したレーベル“groovillage”より、アルバム『F』をリリース。PUSHIM オフィシャルHP

OKMusic編集部

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