【amazarashi】百年後の未来のために
僕らは何を選択するのか?

1年4カ月振りの3rdアルバム『世界収束二一一六』は、amazarashiの新たな方向を示す重厚なコンセプトアルバム。百年後の未来のために、今の僕らに何ができるのか? 全ての心あるリスナーに問いかける、骨太なメッセージに胸が震える。
取材:宮本英夫

 amazarashiのニューアルバムが届いた。アルバムとしては1年4カ月振り、『夕日信仰ヒガシズム』以来の3rdフルアルバムだ。タイトルは“世界収束二一一六”。誤植ではない。時は今から百年後、2116年の世界を見据えた壮大なスケールを持つ、amazarashiの黙示録とでも言うべき大作。2枚のシングル「季節は次々死んでいく」(TVアニメ『東京喰種√A』エンディング曲)、「スピードと摩擦」(ノイタミナ『乱歩奇譚Game of Laplace』オープニング曲)で広く世に名を知らしめた後、これほど重々しい手応えを感じさせるコンセプチュアルな作品が届くとは、正直予想外だった。その2曲のシングルも、アルバムにしっかり溶け込んで違和感がない。全12曲がやがてひとつのうねりとなり、大河のように流れていく。そこに引き込まれていく引力は過去のどのアルバムよりも強く、激しい。
 秋田ひろむ(Vo&Gu)に向けてメールで質問を発したのは、1月下旬。アルバムのリリースに先駆け、すでにスタートしている全国ツアー『世界分岐二〇一六』の初日が終わったところだ。1週間後、ツアーの合間を縫って返信が届いた。アルバムのコンセプトや曲のテーマについて、丁寧に答える秋田の言葉使いは以前と同様に真摯なものだ。これまで以上に終末観や死にまつわる言葉にリアリティーが増し、時代を見つめるどうにもならない苛立ちの向こうに微かな希望を探すような、陰影のくっきりしたアルバム。サウンドはキーボードの比重が増して、むしろ耳にやさしいものが多いのだが、かえってそれが事の重大さを物語っているように聴こえる。
 バンドのメインビジュアル“てるてる坊主”が新しくなったことをはじめ、サウンドや活動する場所にも徐々に変化が見られる今、amazarashiは何度目かの変革期を迎えているのではないか。『世界収束二一一六』は、何年か後に聴き返して、“後になれば分かる今が分岐点”と思うようなアルバムだ。このメールインタビューをひとつのガイドラインとして、その世界の広さを隅々まで深く堪能してほしい。

始めた頃に描いていたものが表現できる
ようになってきた

フルアルバムは『夕日信仰ヒガシズム』以来1年4カ月振り。前作を受けて、次のフルアルバムの構想を考え始めたのはいつ頃ですか? そして、最初のきっかけになったイメージやキーワードは?

『夕日信仰ヒガシズム』の制作が終わってからすぐに曲作りはやってました。曲が溜まったのでそろそろアルバムを、と意識したのが去年の夏くらいだったと思います。最初のイメージは“自分の幸福は相対的なものなんじゃないか”とか、“命は命の上に成り立っている”とか、そういうキーワードが幾つかあったんですけど、最終的に今作のかたちになりました。

アルバムの話に入る前に、去年のことを少し。初のアコースティックアルバムや、海外でのフェス出演、ラジオ出演などいくつかの新しい動きがありました。2015年の活動はバンドにとって、自身にとってどんなものでしたか? 今回のアルバム制作につながる何かがあれば、それも聞きたいです。

活動の場所が増えたのはとても嬉しいです。特にアンプラグドでのライヴや、台湾のフェスなど、いつもと違う環境でライヴができたのはすごく力になったと思います。僕自身だけじゃなくバンドとしての演奏力やメンタリティー含め、強くなったと思います。amazarashiを始めた頃は頭に描いても技術がなくて実現できなかったことが、最近は表現できるようになったと実感してます。

では、新作『世界収束二一一六』についてうかがいます。これまでのamazarashiらしさは中心にありつつ、新しいメロディー感、新しい歌い方、よりキーボードや電子音などが前面に出たアレンジなど、新しい要素がたくさんあって素晴らしいと思います。どんなアルバムになっているか、完成して聴き直した、今の心境を教えてください。

僕らのアルバムはいつも聴いてて疲れるんですけど、それは単純に言葉数が多いからっていうのもあるんですが、今回はいつもと違うしんどさがあると思います。報われないところを着地点にしてしまったので、徒労感を感じるアルバムになりました。最近の僕の気持ちをうまく表現できたと思います。

シングルを除いて、最初の頃にできたのはどのへんの曲ですか? そして、全曲を仕上げるまでの行程は、以前と比べてスムーズでしたか?

「ライフイズビューティフル」や「吐きそうだ」が、アルバムでは最初のほうにできた曲です。「しらふ」は前回のツアーでやったポエトリーリーディングなので、これも始めのほうですね。曲を仕上げる作業はスムーズにできたんですが、どの曲を入れるかとか、曲順とか、最後の段階ですごい悩んでしまって、結果的に難産だったなぁという印象です。

OKMusic編集部

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