【Shout it Out】10代の最後を締め括
る渾身の一曲
平均年齢19歳の4人組、Shout it Outがシングル「青春のすべて」でいよいよメジャーデビュー。表題曲はバンドの魅力をこれまで以上に鮮やかに印象付ける力強いロックナンバーだ。
取材:山口智男
武者修行になるとおっしゃっていた前作のEP『僕たちが歌う明日のこと』のリリースツアーはいかがでしたか?
山内
初めての土地が多かったのがデカかったですね。まだ数十人の規模なんですけど、初めてにもかかわらずShout it Outのツアーだからって観に来てくれる人がいたのは、続けてきて良かったなって。これからもこの人たちを裏切らないようにというか、僕たちを信じてくれた人たちが僕たちをちゃんと信じ続けられるように、このまま一歩ずつ進んでいこうというこれからのモチベーションにもなりました。
山内
ラライヴが11連チャンの時もあったからもっとギスギスするかと思ったら、最後までちゃんと楽しかった(笑)。ワイワイできたので良かったです。
「青春のすべて」は『僕たちが歌う明日のこと』のリリースツアーが終わってから作り始めたのですか?
山内
しっかり作ったのはツアーが落ち着いてからなんですけど、“青春のすべて”というタイトルと曲のアイデアは、昨年12月にミニアルバム『Teenage』をリリースした頃にはあったんです。『Teenage』は一枚を通して自分の10代を象徴できる作品になったと思ったんですけど、その時点で20歳になるまであと半年残っていることを考えたら、まだやれることがあるんじゃないかという気がして。それで、10代でいるうちに10代の青春を締め括れるような一曲を作りたいと思ったんです。その後、メジャーデビューが決まって、いい意味でプレッシャーも感じながら…僕は小さい頃からずっと音楽を仕事にしたいと考えていたので、いつかはメジャーデビューしなきゃいけないと漠然と思ってたんですよ。だから、今回は目指していたところに一歩近付けるという、いい緊張感の中で作ることができたと思います。
細川
それにメジャーデビュー曲って、これからもずっと歌っていくことになる僕らの代名詞と言える曲になるわけじゃないですか。それに相応しい曲にしなきゃというプレッシャーもありましたね。
何が変わったというわけではないのですが、Shout it Outの魅力がより鮮明に伝わるものになりましたね。
山内
メジャーに行ったことでキャッチーになったり、分かりやすくなったりするバンドもいるけど、このタイミングでそうなりたくはなかった。だから、自分らが積んできた自分らしさは意地でも変えたくないという気持ちがあったんですけど、その一方では変化を見せつけられないのもダサいと思ったんです。だから、今までのShout it Outと思わせつつ、圧倒的な進化を見せつけてやろうと思って…まぁ、そこで一番悩んだんですけど(苦笑)。
進化するために具体的にはどんなことを?
山内
サウンド面ももちろんなんですけど、僕個人としては「青春のすべて」の歌詞にはかなり力を入れました。レコーディング前日まで悩んだ分、情景描写にしても、そこに込めたメッセージにしても、これまでよりも一歩深いところまで表現できたと思います。
細川
今回、プロデューサーとしてSUPER BEAVERのギタリストでソングライターの柳沢亮太さんに入っていただいて、彰馬と一緒に歌詞と向き合ってくださったんですよ。それも大きかったよね?
山内
僕がレコーディングの前日にも“悩んでます”って言ったら、柳沢さんがすぐに時間を作ってくださって、それから2~3時間いろいろ相談に乗っていただきました。メジャーデビューだからプロデューサーに付いていただいて、しっかりした作品を作ろうという話が出た時、メジャーデビューに憧れる一方で、“売れる曲を書いてください”って言われたらどうしようっていう不安もあったんです。でも、SUPER BEAVERってメジャーを経験して、今でも自分たちの力でカッコ良いことをやっているじゃないですか。僕が不安に思ってたことを一度経験している柳沢さんなら、僕たちが本当に行きたい方向に導いてくれるに違いないと思ってお願いしたら、快諾していただけたんです。そういう方と一緒にできたお陰で、今までで一番自分たちらしい作品になりました。自分たちだけで作るよりもパワーあるものになったと思うんですけど、これから僕らがバンド活動していく上で、本当は何年かかけて自分たちで見付けていくようなことも教えてもらえました。
今回、演奏の音数が減っていませんか?
山内
今回は4人の音だけで表現してみたんです。原点回帰じゃないですけど、等身大の自分たちで勝負してみたかったんです。だから、アコースティックギターは入れてますけどギター、ベース、ドラムしか入ってないです。
細川
例えば、前作収録の「逆光」はストリングスを入れましたけど、今回はそういうアイデアはなかった。バンドサウンドだろう!という共通認識が暗黙のうちにあったんです。
確かにギミックに頼らず、メンバーそれぞれにフレーズやプレイそのもので個性を主張していますね。
細川
2曲目の「列車」は、特にバンドアンサンブルを意識しました。お互いのプレイがお互いの良さを際立たせるようなものになっているんです。その中でもベースとドラムのアレンジはかなりやり取りしながら、練って練って練り上げました。階段を1段上がった感覚があったので、そんなふうに言っていただけて良かったです。
歌はいかがでしたか?
細川
山内彰馬というヴォーカリストが確立されてきましたね。歌い方や言葉の力は前々作、前作からずっと変わらないんですけど、より洗練されてきたと思います。
山内
やっとひとりのヴォーカリストになれたのかなという実感があります。
リリース前日の7月5日には、地元大阪でShout it Outにとって記念すべき初ワンマンライヴをやるんですよね。
細川
堺のTick-Tuckというライヴハウスでやります。
山内
高校生の頃からずっとライヴをやってきたところなんです。超狭いライヴハウスなんですけど、僕らにとっては実家みたいな場所で。お客さんがひとりもいないのにライヴをしたこともありました。その頃、“いつかここでワンマンをやります”ってTick-Tuckのスタッフさんに宣言したんです。だから、そこで初ワンマンができて嬉しいし、歌以外でも何か貫き通せたような気がします。ありがたいことにチケットが売り切れたそうなんです。それも本当に嬉しいですね。
そして、その5日後の7月10日は渋谷CHELSEA HOTELで東京初ワンマンですね。
ワンマンライヴはどんなライヴにしたいですか?
細川
お客さんは僕らだけを観にくるわけじゃないですか。その人たちを楽しませなきゃ!という責任を感じながらステージに立つわけだから、半端なことはできないし、不安も多少あるんですけど…来てくれたお客さんとそれを乗り越えられたらいいですね。
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「青春のすべて」2016年07月06日発売PONY CANYON
シャウト・イット・アウト:2012年4月、高校の軽音楽部のメンバーで結成。地元である大阪府堺市を拠点に活動中。15年の『未確認フェスティバル2015』では3,254組の中からグランプリを獲得。16年7月にシングル「青春のすべて」でメジャーデビュー。同年9月にメンバーの脱退があり、山内と細川のふたり体制に。18年7月から8月にかけて行なう初のワンマンツアーをもって解散することを発表している。Shout it Out オフィシャルHP